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11 【8話】町を飛び出して救世主と使者が汚染と腐敗の進む世界を救うのを協力しながらも見届ける話【全8話】

9月から連載予定の和風ファンタジーものの前身となった全8話構成の短編です。

架空の西洋、汚染と腐敗が進む世界で、窮屈に生きていた町から離反して、救世主と使者と関わりながら、世界が救われるのを見届ける話。上記控えてる連載の全身ということで、大幅に中身端折りぎみ。主人公とヒーローの恋愛のターンとか最後に至るまでの旅の途中とか旅人のこととか救世主側の世界のこととか。全編にわたってシリアス、暗い話の中で自分を立たせ奮起し着地するまでを描いてます。

光の洪水となって消えた救世主は私達と会った頃と同じ成人の姿で現れた。

その力強さと見てもわかる力の大きさ。


「ま、まって、ナスタチウム!」

「イリス、離れて」


セチアに抱かれて男から遠ざかる。

まだわからない、あの男がわからない。

わかることはなくても、納得するとこまでは話したいのに。

あの男はあの場所から動けない。

対抗手段がなければ救世主に打ち破られて終わってしまう。


「セチア、離して」

「駄目だ。巻き込まれる」


ナスタチウムと男の戦いは激しいもののそこまで長くはなかった。

男はストックしていた錬金術と少ない魔術しか使えなかった。

対して万全な状態のナスタチウムには響かない。

怪物が生まれようが植物が発現しようが瞬時に奪われる。

程なくして喧騒は消え、対峙する二人。


「……………」

「……………」


なにかを話してるようにも見えたけど、それはわからないまま…ナスタチウムは魔法をかけた。

眠り魔法から目覚めるための魔法だ。

その光が男に降り注ぎ、男の体に沈んでいく。

腐敗していた体が光を吸って人の体に戻っていく。

これが人の浄化。

大地や動植物の浄化とは異なる、もしかしたらこの男だけにある浄化魔法。

光が浸透しきると、少しずつ光の粒子になって消えていく。

かつて見た救世主のようだった。

ただ違うのはあの男はもう生まれない。

消えるだけだ。


「あぁ…」


結局、私達人は救世主と使者によって救われる。

世界は歓喜するだろう。

汚染と腐敗の根源について結局分かり得たのは僅かだったけど、それでもこれが求めていた結果の1つであるなら受け入れよう。



「イリス、迷惑をかけた」

「いいえ、そんなこと」


完全に男が消え去り、ナスタチウムが困った顔をして私に言ってきたけど、彼は彼のやると決めたことを成し遂げただけだ。

そこに何も非はない。


「ナスタチウム」

「なんだい?」

「貴方はまだ不死なの?」

「……そうだよ。コルカチムを浄化したからといって変わるものじゃない」

「…そう」


マリーゴールドを見やると彼女は変わらず嬉しそうにナスタチウムの傍にいた。

ナスタチウムもまた彼女に微笑みかける。

彼彼女たちは程なくして別の世界へ帰るだろう。

世界は救世主と使者が救ってくれたことが伝わり、人々の怯える生活が消える。


「サルビア」

「え?」


戦闘では見かけなかった、あの旅人が来た。

ナスタチウムに呼ばれてたらしい。

ずっと旅を続けながらやり取りはしてたけど、まさかこんなところで会えるなんて。


「後のことは任せていいか?」

「あぁ。ここまでありがとう、ナスタチウム」

「私達の世界の責任でもある。気にすることはないさ」

「サルビアさん?」

「イリス、君にも協力願いたい」

「は、はい…?」


サルビアは世界の状態を把握するためにあちこちまわっていたらしい。

あの男がいなくなったとろで汚染と腐敗がとまるわけでなく、初期段階から中期段階までの汚染が進む地域はまだたくさんあるとのことだった。

その浄化の手伝いをしてほしいと。

そして種の回収と、かつての村で出会った研究者の薬の開発普及についても、実現を目指すということだった。


「そうだ。ナスタチウム、マリーゴールド…」


わかることでいいからときこうと彼らのほうを向いてもすでにいなかった。

最後までいつもと同じいなくなり方。

大した話も出来なかったけど、逆に潔い。


「そっか…」

「イリス」

「大丈夫、セチア」


やるだけのことを今からやりましょう。

そして多くの浄化と、汚染の食い止めを伝え、薬を広く進めていく。

当面はやることは多いんだ、考える暇もないだろう。


「私やります」

「……ありがとう」

「セチア、行こう」

「あぁ」


馬を走らせる。

たぶん私は次のやることが終わっても馬を走らせるだろう。

セチアと一緒に。

あの男のことはもう推測でしか考えることはできない。

でもそれは話しつづけてても同じことだろう。

私がどこに着地点を置くかだ。

それなら私は進む。

根源の浄化は済んだのだから。


「セチアも自由にしていいよ?」

「愚問だね」


ここまで来てまだ言うのかと窘められる。

とっくに彼は選んでいた。


「わかった、もうきかない」

「いいね、助かる」


助かってるのはこちらの方だけど、それはまた別の機会に伝えることにしよう。

私達はたくさんの場所を巡ったけど、世界はまだ続いている。

全て巡ってから伝えるのでも遅くはない。

短編 町を飛び出して救世主と使者が汚染と腐敗の進む世界を救うのを協力しながらも見届ける話は終了です。

こちらはこれから連載の合間に短編(1話完結や前後編等)をUPするかもしれません。

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