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天狗と誘拐と女性と 22

龍富視点

「あのね、柄池君。悪あがきは困るのよ。ズボンに手をかけさせない真似は面倒なのよ」


「大人しくは出来ないですよ。そっから先を許すと不味いですし」


 大人しくしてと女将は言いつけるも、柄池は抵抗すると話す。

 女将は柄池のズボンが邪魔なのか手をかけたい様だが、それを許さないと柄池は腰を上下左右に暴れさせていた。

 腕での固定を女将は試しても、柄池が暴れてそれも難しい様であった。


「それじゃあ、しょうがないわ。直ぐに済むと思ったけど、腹も拘束しないといけないわね、一時的にも」


 そう言うと女将は柄池の腹の下に触れて床と柄池を固定する氷を作った。


「あ、そんな……」


「これは私にも邪魔になるから付けたくはなかったけど、この状況は一時的にも付けないと」


 抵抗手段を奪われて残念の声を出した柄池に、女将は止むを得ずとの言葉を出した。

 一方、龍富は刀で助走をつけながら氷に突きを放っていた。


「くっ!」


 保護のために退魔力を纏った刀と氷の壁が触れるたび弾かれ、この突きで龍富は声を漏らす。

 透明な壁には白い筋の様なものがいくつか出来てきて、透明とは呼べなくなった。

 それでも一向に壊れる様子はないが。


(でもこれくらいなら今度は……)


 何度もやってきた突きの成果を見て龍富は方法に変化をと考えた。

 成果自身は悪いものではなかった。

 助走をつけて壁に飛び蹴りを出した白河は反動で龍富の近くに移動する。


「白河さん。今度は俺が付けた傷のところを蹴ってくれませんか? 交互にやって傷を深めて行きたいんです」


「ええ、分かったわ。その方が少しでも打開しやすそうだしね」


 龍富は提案として白河にも協力をと頼むと、白河も提案に乗ってくれた。

 白河はやや疎らに穴が出来ていたが、龍富は一点に集中させて深い穴を作っていた。

 ならば穴を深める方針で一点集中にした方がのちの為にも良かった。


「じゃあ、行くわよ」


 腰を落として言葉と共に白河は駆ける。

 目標は深く出来た穴。

 十分な助走をつけて白河は飛ぶ。


「はっ!」


 言葉と共に穴へ飛び蹴りを入れる。

 蹴った瞬間に足から風が巻き起こり、氷のかけらと共に壁そのものを削り取って行く。


「次は俺が行きます」


 白河の交代を確認後、龍富は言葉と共に刀を持って壁へ突っ込む。

 刀には退魔力をまとってだ。


「でりゃあ!」


 言葉と共に龍富は深い所へ突きを入れて壁を削る。

 この手応えに龍富は一つ心で思うことが出てきた。


(でも、この様子なら……もしかしたら)


 龍富の思うこと、白河の協力による成果を考えていた。

 穴そのものを全体的に深くして行く白河の攻撃は十分有効であった。

 白河の協力は成功と言えよう。

 と、ここで八雲から声が挙がる。


「ちょっと駄目元で試してみていいかしら? 邪魔はしない様にするから」


 銃を持ちながら八雲は龍富に尋ねる。

 試す内容を理解した龍富は意思を示そうと口を開く。


「ああ、邪魔にならない範囲でなら」


 その試してほしいと言う意思を龍富は言葉で伝える。

 方法は攻撃による手数で穴を開けること。

 銃は手数としてダメかと考えていたが、この試行で結果が良ければ手数の一つとしても加えたかった。


「次は私ね!」


 そう言って白河は壁へと向かって行く。


「ええ、やってみるわ」


 銃を構えて八雲は試すと話す。

 銃声と共に氷との衝突音。

 結果はほとんど変わりがないように見えた。


「残念な結果に終わったわ」


 龍富に目を向けてダメだったと八雲は知らせる。

 目を凝らせば見えなくもないかと言う成果が残っていた。

 やはり銃弾では手数に含むことは出来ない様だ。


「そうか……」


「はぁっ!」


 龍富の理解を伝える言葉の後に白河の攻撃と同時の言葉。

 蹴りと同時に風も巻き起こり、壁も削れていく。

 この一回で銃弾何発分として扱われるのか。


(これはお世辞でも……褒められないや……)


 心の中で龍富は試行成果を褒めることができないと諦めの言葉を呟いていた。

 この結果を凄いと言っても、馬鹿にしていると取られても反論されても文句は言えない。


「まあ、駄目元だったし、こんな結果でも驚きはしないわ」


「まあ、その……試してくれてありがとう」


 目を閉じて八雲は表情の変化も閉ざした上で、結果に落胆はないと話して、龍富は試してくれたことに礼を言う。

 白河も蹴った反動でこちらに跳ね返ってきて、龍富は次の攻撃の必要性を思い出していた。


「次は俺の番だし行かないと」


 龍富は言葉と共に退魔力で保護した刀を構えて、壁に出来た穴に突っ込んで行く。

 刀は壁とぶつかる。

 今回の手応えはいつも以上であった


(これはいつも以上に深い……)


 刀を引き抜こうとした龍富は刺さった深さを心の言葉で呟く。

 何回かやっていて刺さることは二回あったが、ここまでの深さは初めてで刀を抜くのに力もいるほどであった。

 龍富は刀を壁から引き抜いて、白河に語る。


「白河さん、俺は準備に入ります。あとは任せたいですが?」


「ん? ええ、いいわよ。あとは私がやるけど……」


 壁から距離を開けて龍富は白河に任せると話すと、疑問を浮かべながらも白河は提案を受け入れた。

 その場の位置で龍富は刀を後方に下げて改めて持ち手を握り締める。


「ああ、そう言うことね」


 それを見た白河は簡素な言葉で理解を話す。

 その後に白河は同じように助走をつけ始めた。

 龍富には攻撃しない時間が必要であったため、白河に託したのである。

 この様子に下がっている仲間からも疑問の行動が出てき始めた。

 古賀松は首をかしげる、大空は難しそうな表情をする、愛川は両手を握って心配すると言う行動に。


(もう少し、もう少し待っていてくれ)


 他の仲間たち、そして柄池にも向けるように龍富は心の中で呟く。

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