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天狗と誘拐と女性と 20

龍富視点

「やったぜ、龍富!」


 響いた轟音が鎮まって御堂はガッツポーズと共に歓声が出る。

 氷の精はそのまま床に伏して倒れた衝撃で氷の破片を周りに散らす。

 その中で龍富は着地をしつつ、一つ考えた。


(いける、考えていたよりも早いペースで……)


 もっと苦戦するかと考えていた龍富は少ない手数でここまで行けたことに、いい意味で考えを裏切られていた。

 それでと、白河に提案しようと口を開く。


「白河さん! 倒してからと考えてましたが、先に胸に埋められた物を確保しましょう!」


「ああ、そうね! この手応えなら、その方が良さそうね!」


 声を大きくして龍富は胸に埋められたものの確保をと話し、白河も大きな声で受け入れる話をする。

 余裕があるこの状況なら先に胸の物を確保ということも出来ると思ってだ。

 倒れていた氷の精は上半身を起こすところまで来ていた。


「でも、あそこは流石に届くか? ……届いても上手く取り出せるか?」


「そこは私が上手く取り出してみるわ。この手応えなら私が行った方が良さそうだし」


 提案はしたものの龍富は届くかという問題があってそこを呟くも、駆けつけて来た白河がそこは引き受けると話す。

 実際に龍富よりも高く飛べる白河にその役はは適任であった。


「では、そっちは任せて、俺は引きつけ役を引き受けます」


「よろしくお願いするわ」


 ならばと龍富は引きつけ役を担うと刀を小さく掲げて言葉でも話し、白河も任せたと言葉で託す。

 一方、氷の精は立ち上がって動ける状態にまで立て直していて、再び対峙する。


(俺は下手に攻撃しないでもいいか……なら、こっちは……)


 白河の素早い動きを見ていて、攻撃を引きつけることもやるが、別の事もやれそうだと龍富は心の中で思っていた。

 事実として氷の精は白河の動きを追いきれてなく、龍富の動きを追う余裕さえもないという状況が物語っている。

 そこで白河は飛び上がると、氷の精はその姿を掴もうと手を伸ばす。

 このままでは捕まってしまい危ない。


「あら、攻めてくるの? それは甘いわ」


 それでもと白河は氷の精の選択にダメ出しの言葉を出した。

 よく見ると白河は焦りの表情もなく、その片足には風が纏わり付いているのか、氷の破片が風の流れと共に周囲を動いていた。


「こんなことも私は出来るから」


 白河は自身の言葉と共に風をまとった足で宙を踏みつける。

 すると、白河は空の足場を踏んで飛んだかのように跳躍をした。

 氷の精の攻撃は空気を掴むだけとなる。

 その姿に白河は飛び蹴りを放った。

 狙いは氷の精の胸だ。


「よし! 命中よ! 後は……」


 蹴りが胸に当たり、白河は命中を伝える。

 衝撃音と共に氷の精は後ろによろける。

 その言葉の後に白河はもう片方の蹴りを氷の精の胸に入れた。

 追加の蹴りが入ると破片が、と言うよりも小さな塊が胸から飛び出して来たのであった。


「その塊、もしや……」


「ええ、そうよ。お目当てのもの」


 氷の塊を視界に入れて龍富は期待の言葉を出すと、その期待したものと返事が白河から返ってくる。

 話の中で白河は蹴った反動で回転と距離を開けることを同時にやっていた。

 その氷の塊は龍富の周囲に落下地点を定めて落ちようとする。


「なっ! こっちにか?」


 刀を離さないようにと龍富は気をつけつつ、言葉でも受け止めないとと話して落下予定地点へと走って行く。

 今、刀は手放せないため片手で受け止める必要はあった。

 飛んで来た氷の塊は無事龍富の手中に収まる。


「氷の中に確かに鍵がある……すまないが、後は頼む」


「分かった。後は俺が割って取り出してみる」


 鍵の存在を言葉でも確認はした後、龍富は託す意思をも伝え、手を挙げた御堂は引き受けるとも言葉に出した。

 それから龍富は氷の塊を投げて、御堂は受け止める。


「ぱそこんで鍵の周りの氷を壊すの?」


「いや! そんなことできないから! パソコン壊れる!」


 横からの八雲の質問に御堂は否定をした。


「よし! 後は俺がやれそうです」


「え? これからまだてこずる事多そうよ」


 密かにやっていた準備が整った龍富は後は引き受けると話して、白河は驚きの声を出した。


「さっきの白河さんがほぼ一人で引き受けたので、これが使えそうです」


 白河の驚きに龍富は白河のおかげで行けると話した。

 龍富の刀は先から持ち手まで全てが白く光っていた。

 この仕込みは時間がかかる上、余計な衝撃を刀に与えてはいけない制約もある。


「これで行けます」


 そう言って龍富は刀を構えて氷の精を見据える。

 氷の精も何か察知をしたのかすぐ様龍富に拳を向けて来た。

 しかし、それでも龍富はかわすのは容易で、向かって来た拳の上にかわすと共に乗っかる。

 そして、氷の精の腕を駆け上がってから、氷の精の上半身に向けて飛びかかる。

 狙いは上半身に刀を刺すこと。


「な、何をするの?」


 白河の疑問にはまだ龍富は答えない。

 見てもらう方が早いからだ。

 龍富は両手で持った刀を氷の精の上半身に刺して、更に足も上半身に乗せて龍富の全体重を氷の精に押し付ける。

 結果、氷の精は上半身を後ろにのけ反ることとなった。

 押し込めるように刀に力を込める龍富は、更にと刀の持ち手を支点にして足と氷の精の距離を蹴飛ばして開ける。


「これを見れば全部わかります」


 言葉と共に龍富は足に力を貯める。

 そして刀の持ち手に狙いを定めて足の力を爆発させた。

 足が持ち手にぶつかる。


 瞬間、刀が輝き

 氷の破砕音が響いた。


「え!? まさか、でしょ?」


 白河の驚きの声。

 そのはずか、氷の精の胴体は砕け、ただの塊として分裂していたのであった。

 氷の精の頭部や手足も接続していたものが壊れて分離していた。


「そのまさかです。準備に手間取る技でしたが」


 着地と共に龍富は白河の驚きに解説を加える。


「こいつは……」


「やったー!」


 古賀松は笑みを浮かべた声を出して、愛川に至っては一飛びして勝利の確信をした声まで出していた。

 そして分離した部分は床に落ちて破砕した。


「これで終わりました」


 龍富は刀を一薙した後、終わりを告げた。

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