退魔師組織の協力 16
愛川視点
支部の騒動から何日かして愛川もまた大学での生活を送っていた。
今日は大学に来てから大越と何が起きたか話していて、誰と今まで話したかについても伝えることになる。
それを伝えて、大越からも問題がないとの言葉も送られた。
そして午後の時、今は大越と別れて大学の通路を歩いていた。
「あそこの教室空いてるって話だよね?」
愛川は歩きながら後ろの人に声をかけた。
「ああ、あそこで勉強できるからね。あの教室でやろう」
愛川の後ろに位置する柄池は同じく歩きながら話した。
愛川は今日もまた柄池との勉強をすることになっている。
「入ったら、さっきやった講義の復習を早速やろうか。それが終わったら昨日の講義で分からなかったところを教えるから」
「はーい」
柄池は勉強の方針について話し、愛川もそれに賛同する。
とここで別の通路から大空が視界に入ってくる。
「やあ、朱鷺子さん」
「え? ああ……柄池か」
手を軽くあげて柄池は大空に声をかけると、大空も言葉を返す。
「どうかしたのか?」
「愛川さんが勉強に不安があって、教えようと思ってたんだ」
大空は続けて何かあったかと聞くと柄池は愛川との勉強だと話した。
「え? 勉強ね……」
「テストの点数が悪くて、進級できないことは避けたいしね。それで勉強を」
大空は勉強かと言葉を出して柄池は勉強についての重要性を話した。
愛川にはこのやり取りにどこか引っかかるものがあった。
「二人でか。まあ、頑張んなよ」
「ありがと。俺たちはあっちの教室でやるから、それじゃあ」
大空は励ましの言葉を二人に送り、柄池は礼と別れの言葉で返した。
こちらに向かって歩いて来たということは、少なくとも勉強に使う教室には用がないだろう。
「それじゃあな」
「朱鷺子さん、じゃあね」
大空もまた手を振って別れの言葉を言い、愛川もまた大空に手を振って言葉を出した。
大空は柄池と愛川にすれ違いながら移動して、その場から離れた。
(うーん、朱鷺子さん……なんか違う気が……気のせいかな?)
愛川は視線で大空を追いかけつつ、大空のことを考えていた。
引っかかっていたのは大空の対応だ。
いつもの大空であれば気さくに言葉を返すのだが、今回の言葉は調子が悪いような感じを受けた。
(調子が悪いって事が一番自然だよね……考え過ぎかな?)
愛川は自分の思考に対して、考え過ぎだと打ち止めを図る。
愛川自身の考えとしてはあまり良くないとも自分で分かっていたので、
この事では一旦の区切りをつけることにする。
「俺たちも教室行こうか」
「あっ、はーい」
柄池は教室に行くと告げて、愛川も肯定の言葉を出す。
二人は教室に入って勉強の準備を進めた。
「先にさっきの講義の復習からだ。記憶に新しいうちの方が覚えやすいからね」
柄池はノートと教科書を机に置いてから言葉をかけた。
「そうだね。さっきの講義で聞いておきたいこともあるから、そこも聞いておきたいな」
愛川は押しに座りながら荷物を机に置いて、返答をした。
柄池のおかげで、講義の内容もついていけて教授たちの話も分かるようになっていた。
「……そういえば、他にも聞きたい事があるんだけど、良い?」
「ん? 講義のことで?」
愛川が教科書を出しながら柄池に疑問を投げて、柄池は講義のことかと聞き返す。
話の流れから講義のことかと思われるが、愛川の聞きたいことは違った。
「……朱鷺子さんと何かしたことあるの?」
「……朱鷺子さんと? えっと、あったっけ……?」
大空のことと愛川は話すと、柄池は戸惑う様子を言葉の中で見せつつ話した。
「ああ、たまに料理の事で教えて欲しいって事でね。朱鷺子さん料理に自信があって、小ネタとかレシピとか知識をお互いに共有していったくらいかな」
柄池は思考の後に大空と関わったことを話す。
料理のことで話しているなら気にしすぎる必要はないかもしれない。
柄池と大空は料理の事で話は会いそうであったので、納得は出来た。
「そういえば、愛川さんは料理どう?」
「む! 私はね……えっと……その……」
柄池は料理が出来るかと聞くと、愛川は言葉の途中で料理をやったことを思い浮かべる。
が、今まで作った料理なんて物は実際になく、料理は背伸びしてもできるとは言えなかった。
「……料理はできない」
「あーそっか。ま、気にしなくても良いから」
愛川は料理について話すと、柄池は気にするなとフォローを入れた。
大空の反応についても何となくは理解出来たが、愛川にはどこか心に出っ張りが出来たような気分でいた。
「よかったら、教えよっか? 料理を。全く出来なくても一から教えられるよ」
柄池は料理を教えることにも協力的になると話を持ち出す。
有難い話ではあるも、悪いことかとは思っていた。
「……えっと、そこまでは頼り過ぎになって悪いから、遠慮ということでいいかな」
「そう? 力が必要になったら遠慮なく言ってね」
愛川は申し出を断ると話し、柄池は機会があれば頼ってくれと話す。
愛川のこの出っ張り、柄池の心を探れば解消はできるかもしれない。
愛川には手段として選択もできた。
(でも、そうやって心を探るのも何だか悪いよね……)
この手段は相手の中にズケズケと入って行くこと、
柄池にやれば気を悪くする部分でもあるかもしれないと、愛川は心の中で思う。
そのため、愛川は柄池の心の中を探ることを辞めた。
なお前回の八雲の件で探ったことは確認の意味もあり、特例である。
「うん、ありがとう。その時は頼ると思うから」
柄池の申し出に対して愛川は礼を伝える。
「そういえばさ、柄池君って教えるのうまいけどさ、何かやっていたの?」
また、少しきになることが出来て、愛川はそこを言葉にする。
「何やってたかって? 教える技能に関しては特別なことはやっていないけど。高校でリュートの勉強を教えてたことはあるぞ」
「高校の時にやってたから、かな」
柄池は身に付けるのに特別な事はやっていないと話した。
特別なことをやっていない以上、高校の時に教えた経験が生きて教えているのかもしれない、
そう思って愛川は言葉にした。
「そうかもね。今では家庭教師もバイトで出来るくらいだ。リュートに感謝しなきゃ」
「家庭教師か。似合っているんじゃない?」
柄池はバイトでも家庭教師をやっていると話し、愛川は柄池の家庭教師ぶりに様になっていると話す。
こうして愛川は実際に分かりやすく教えてくれて、知識を身につけていったので家庭教師は向いているとも感じていた。
「ははっ、そうかな? ところで愛川さんだけど、よかったら何のバイトやっているか教えてくれる?」
「私? 私はね、喫茶店で来海ちゃんと一緒にバイトしているから。場所もそう遠くないよ」
柄池は笑いながら愛川のバイトについても聞いて、愛川はその疑問に答える。
愛川の評価に柄池も気分は悪くしていないようだ。
「そうか、来海ちゃんと。やっぱり仲良いから一緒にやったのかい?」
「ああ、そうね。でも、本当は」
柄池はそこから発展して大越の方へ話を伸ばして、愛川もそれに答える。
会話も弾んできて、愛川の口から大越と高校の時からの付き合いは
本当はないとの言葉が生まれようとしていた。
「……えっと、うん。ケンカもまれにしちゃうことあるんだけどね」
が、それを堪えて愛川は別の言葉を代わりに出す。
自らの蒔いた厄介な種はすぐに自分で刈り取れた。
(今のは危なかったけど……我ながらナイスフォロー!)
そのフォローに心の中で愛川は賞賛を送る。
自画なんとかという言葉が当てはまる予感もするが、即座の対処で出来も良かったので、
愛川の顔にも笑みが出来ているかもしれない。
「仲が良いとそういうこともあるよね。じゃあ、そろそろ勉強始めようか? 少し時間も押したようだから」
「はーい」
柄池の一声で勉強を開始し、愛川も賛同する。




