退魔師組織の協力 9
ここまで雷剣視点
支部から離れ、雷剣と水越の生み出した水は草木が生えた脇に生えた道を進んでいた。
「僕は探索とかからっきしだからねーありがたいありがたい」
「これだけの力をお持ちで、探索がからっきしとは……私にとっては意外です」
雷剣は先導する水を通じて水越姉と会話をして、水越姉は探索について意外を話す。
今、雷剣は駆けてはいるが、地に足をつけて走っているわけではなく、地面から一定の距離を保って浮きながら移動していた。
雷剣は進む道に電磁のレールを敷いて、足に磁力を纏って移動していることになる。
「小さい頃の王駕が迷子になった時なんて、見つけられない時があって困ったことがあってね」
「あら……そんなことがあったとは、あれから何か力を磨こうとしたのですか?」
雷剣は探す能力が一般人並みだと話し、水越姉は意外の言葉に加えて質問の言葉を出した。
王駕が迷子になったあの時、動揺までして妻にたしなめられたことまであった。
会話もしつつ、雷剣は高さ5mほど上にある足場に向けて磁力の反発を生かして飛ぶ。
跳躍の予備動作もなく、瞬発のある浮遊と言うのが正しいか。
「僕の力を調査技術に活かそうとは考えたよ。結局は断念した」
「ああ、そうなったのですか……あ、そろそろご対面ですよ」
雷剣は足場に乗りつつ、断念した事を話し水越姉は芦崎の元に着くと声を出す。
雷剣は再度芦崎の元へと移動を始めた。
「私が追跡しても対して何もしなかったですね。分からなかったのか、諦めたのか……」
水越姉は追跡中の状況を声に出す。
追跡時に何かしらの抵抗をやって来ると雷剣は考えてもいたが、予想以上にことが運んでいた。
(難なく来てしまって、逆に不安でもある感じだね)
一言好都合と言えない状況に雷剣は罠の可能性などを心の中で考えてしまう。
そう移動しているうちに雷剣は芦崎の元へとたどり着いた。
「な? 退魔士か。もうこんなところに……」
芦崎は驚きも交えて言葉を出した。
その芦崎は雷剣から2m程下の地面から雷剣を見上げていた。
予想外という芦崎の反応、これに罠という可能性が雷剣の中から若干消えていた。
「芦崎さんで間違いないですね。退魔士支部で土の精の襲撃がありました。あなたの犯行の可能性が高いので、ご同行お願いできますか?」
「あなたが装置を作動させたところも確認済みです。言い逃れは困難よ」
雷剣は芦崎に連行の提案を持ちかけて、水越は犯行の瞬間も見たとも付け加えた。
さらに水越姉は作動させた瞬間の映像を水に写して言い逃れの道を絶っていた。
ほぼ犯人と見て間違いはないが、間違いの可能性も若干あり得るとして雷剣はこの言葉を用いた。
「ここまでばれてしまったか……ならばやむを得ない。この芦崎こそが支部の襲撃犯だ」
芦崎はすんなりと犯行を認める声明を出す。
芦崎がすんなりと認めたため、ごねて連行まで踏み込めないことや誤認の連行もないと分かって安心した部分も雷剣にはあった。
「やはり、そうでしたか……」
「……弟も落ち込むかしらね」
雷剣は予想は出来ていたがいい感情はないと口に出し、水越姉は弟についても言葉にする。
「おや、水越の……雪絵かい? 弟の雪馬が落ち込むとはいったが、この芦崎、あの人と親しくなるほど世話をした覚えはないぞ」
「そっちはお気になさらず、気にするほど大きいことでもないので、雷剣さんも気になさらずに」
水越姉の言葉に芦崎はそれほど親しくなってはいないとの言葉を返す。
水越姉は気にしなくていいとの言葉が来たが、雷剣は少し湧いた気になる気持ちも抑えた。
「おや……そうかい? そこまで言うならいいけど。それと芦崎さん、何故こんな事を? 退魔師の方で何か不満なことでもあったのですか?」
「おや、こちらの心配を? ですが、その心配はご無用で、不満は全くない」
雷剣は話を芦崎の犯行理由に切り替えると、理由に不満はないと返す言葉を芦崎は使う。
何故犯行に及んだか聞いておく必要はあったため、先に雷剣は聞くことにした。
「では、どう言う理由で? 人質を取られたとか……」
「複雑な理由ではない。単純に実験場所として近く、試験運用に最適であったからだ」
水越姉の質問に芦崎は答えた。
この犯行理由に雷剣は驚く、いやそれ以上に唖然という表現があっているか。
「な?! そんな、そんな理由で……?」
「くだらない理由ではない、この発生装置は今回、発生場所をより遠くに出来るようになった。その実験に対してさらなる研究を考えた上で非常に効率的なのだからだ」
雷剣の驚きの言葉に芦崎は否定の言葉も加えて、犯行理由を詳しく話す。
雷剣は出す言葉が中々に見つからなかった。
「発生した土の精は戦闘でどれくらいの強さか測るのに適していて、そして研究室から一番近いこれほどない場所。発生による実験を何度も行うのにあそこは素晴らしい場所だったからな」
芦崎はさらに理由を話していた。
水越姉も言葉がないことから雷剣と同じ気持ちかもしれない。
(こんな予想の斜め下の理由だなんてな……変わり者との話も驚かせてくれる)
雷剣は驚きを心の中で留めていた。
そんな事であれば、襲撃の予行演習ということにして事前に話してくれれば、連行なんて事をしないでも済んだであろうに。
「で、抵抗なんかすると言うことかな? 僕としては抵抗しないほうが楽なんだよね」
「そう簡単にはいかない。この芦崎、ただ捕まるだけでは終わらないぞ」
雷剣は抵抗のことで聞くと、芦崎は言葉と共に発生装置を取り出して、スイッチ部分に指をかけていた。
この予想外のことに雷剣は面食らう。
予想外であった、好都合の方に。
「この芦崎、この研究成果はここで潰えるわけには……ながっ!?」
芦崎の言葉と共に電気が発生して、発生装置が炸裂音と電気の発生音とともに弾かれる。
電気は雷剣が発生させたもので、場所が掴めれば雷剣から離れていても発生できるのだ。
これで芦崎は怪我を負ってはいないが、装置は使えない上に飛ばされて、狼狽えが表情に出ていた。
「おやおや、芦崎さんも退魔師と関わっているならば知っているでしょう? この僕、龍富雷剣の力を」
「くぅ……! しかしこれで終わったわけでは」
人差し指に電気を纏わせて雷剣は忠告をした。
忠告に芦崎の対応はまだ諦めないと話す。
が、言葉の途中で、稲妻の轟音。
稲妻は芦崎の周囲に6つ発生して微妙な動きも許さじとの意思で落ちて来た。
これもまた雷剣が発生させたものである。
稲妻が去り、芦崎は唖然として微動もできなかった。
「もう抵抗はいいでしょう? 芦崎さん。抵抗するのであれば、痛い目を見ます」
雷剣は警告の言葉とともに人差し指の電気の炸裂音を強める。
情をかけるのはここまでだとの意味も込めて、だ。
力の差は一言でわかるほどに歴然。
芦崎は視線を雷剣から下の地面に落とす。
「……この芦崎、もう抵抗はあがきにさえもならないか……」
芦崎は精神的な敗北臭も自らの言葉から漂わせる。
そして地面に座り、口を開く。
「分かった……もう、降伏をする」
芦崎の降伏宣言。
「それでは、雷剣さん錠を貸してくれませんか? 私がかければ安全ではあると」
「あ、任せられるの? それなら、頼むかな」
水越姉は錠の提案をすると、雷剣はその提案に乗る形と話す。
雷剣は鍵と錠の一組を手の上に出す。
「変な抵抗がなければ、この水でもいけますから」
水越姉の言葉と共に錠と鍵を持った水は芦崎の元へ向かう。
水は芦崎の手に纏わりつき、芦崎の背後で両手を縛る枷になる。
芦崎も抵抗の様子はなく、その水で出来た枷は水の中にある錠を両手にかけさせた。
「あとは……連行後に詳しく話をしてください」
水越姉は錠に鍵もかけて、言葉で締めた。
これにて、この騒動は落着を迎えたこととなる。




