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人魚捜索 24

今回のみ大越視点

 任務を終えてから何日かしての平日の午後。

 大越は喫茶店でのバイトで働いていたのであった。


「来海ちゃん、お疲れ様ー」


「はい、お世話様です」


 緑色の髪色の女性である喫茶店の店長から労いの言葉が送られ、大越はそれに返答をする。

 大越はバイトを終えて、店から出るところであったのだ。


「あ……今日はもう出るんだっけ?」


 店の制服を着て食器を持ってきた愛川は大越に対して呟く。

 愛川もまたここでバイトとして働き始めていて、大越は愛川よりも早く切り上げる形となる。

 働いてからそれほど経験を積んでいないことから、愛川より先に出る大越に不安の眼差しを向けていた。


「大丈夫よ。真部さんも飼牛さんもいるし、今日はあの人に頼りなさい」


 大越は不安は無用と愛川に諭す。

 愛川もこの店の人達と溶け込んでいるため、大越としても安心できて任せられるのだ。

 同じくバイトとして働いている同年代の真部と飼牛も仲良くやっているので、愛川自身で彼女達を頼った経験もあるほどだ。


「うーん……分かった」


 愛川もそこは理解しているようで、心情のことを妥協したことを話す。


(そんなに心細いってことかしら……ちょっと悪いけど、こういう時でもちゃんとやってもらわなきゃ)


 すると、料理を運んでいる真部から言葉が出る。


「愛川さん、注文待っている方がいるから、行った方いい」


「あ、はーい」


 真部の催促の声に愛川は声を出して移動し始めた。


「それじゃあ、私は行くから」


「……それじゃあね、来海ちゃん」


 大越は出ることを告げて、従業員用の出入口へ向かい、飼牛は洗い物をしつつ、小さな声で大越を見送る声を話す。


「じゃーねー」


 愛川は手を振って大越を見送る言葉を言った。

 対して大越も店に従業員に手を振って出て行った。



 そして大越は店を出て行き、ある場所へと向かう。


(あそこに行かないと……といっても、場所は近くなのよね)


 心の中で向かう大越自身に突っ込みながら足早に歩く。

 今回、早めに店を出たのはこの場所にこの時間にいる必要があるからだ。

 歩いていた大越はゆっくりと移動速度を落として、道の脇で止まる。


「ここで待てば、大丈夫かしらね」


 大越は人通りがそこそこの道で呟く。

 大越の目的地である、ここは以前キーホルダーを拾った場所なのだ。

 そして、今の曜日は拾った時と同じで、時刻は拾った時間とほぼ同じで早い時間にいた。

 大越はバッグに手を入れて、あの時拾ったキーホルダーを掴む。


「こうすれば、あの子に会えるはず……」


 キーホルダーを見ながら大越は呟く。

 このキーホルダーは店で預かってもらったが、結局持ち主は来なかった。

 そのため、大越は預かって同じ曜日でほぼ同じ時間にいれば会えるのではと行動に移ったわけである。

 この行動で確実に会える訳ではないが、無策で探すよりはマシな確率になるだけでも方法として選ぶ価値はあった。


 大越は周りを見て、持ち主が通るか見ていた。

 それ以外にも声と匂いでも持ち主を探っていた。

 大越が見て行きつつ時間は流れて行く。

 途中で似た制服や髪型が似ている人などもいて大越も反応はした事もある。

 ただ、似ているに過ぎなく、似ているだけと分かった人にまで追いかけることはなかった。

 大越は待っていてあれから持ち主には会えてない。


(どうしよう? まだ待っていた方がいいのかな)


 待ち続け、大越は一つ考えていた。

 大越はこうなる事も想定していたが、そろそろ待つべきか否かと判断する必要性が出ている。


「後十分待って来なかったら……ね」


 もう待つのはやめよう、その条件でと考えつつ、大越は自分に言うかのように話す。

 拾った時間は十分前後は誤差があったもの、それを含めてもだいぶ拾った時間から過ぎていた。

 大越は引く条件を決め


「!」


 た、というその時に大越は確認したのだ。

 あの、持ち主の姿を。


 言葉と思考よりもいち早く足が動いていた。

 人の流れを掻い潜り、大越は向かう。

 再度持ち主の姿を目に入れると、間違いなく以前見た制服姿と全く同じ女の子であった。


「あの! ちょっと待って!」


 大越は走って声をかける。

 女の子は歩き、大越は走る。

 追いつくのは時間の問題だ。

 大越は距離をさらに縮めて、女の子に反応がないことに気づく。


「そこの制服の女子ー! 待って!」


 周りの何人かが大越に注目する中で大越はさらに大きい声で呼びかけて走る。

 走って行き手が伸ばせて触れる所まで来ると、大越は減速をしていく。


「落し物が」


 大越は用件を伝える言葉を出すとともに女の子の肩へ手を伸ばした。

 と同時に大越は匂いを感じ取った。


「……!?」


 だが、大越の感じた匂いは言葉を裁断する様に区切らせてしまう。


 この匂いは異質であった。


 匂いは人間や化者からは区別こそ難しいが、だいたい同じ匂いは感じ取れる。

 相手が化けてもいないと基本は化者か否か分からないくらい、人間の時の化者と人間は区別は付きづらい程に。

 だが、この大越の感じた匂いははっきり分かったことがあった。


(この子、同じなのに違う……!)


 大越は理解を心の言葉で表す。

 以前見つけた時はまだ人間か化者かだと分かる匂いだったが、今回の感じた匂いは無機物に近いものであったのだ。

 この驚愕は伸ばしていた大越の手を無意識に引っ込ませる理由として十分であった。

 嫌な予感もまた大越の歩を後ろに下げてもいた。


「嬢ちゃん、どうした? 落し物がなんだか、みたいだけど?」


 近くの見るからに中年の女性は大越に声をかけた。

 その存在に気付き大越は周りを見ると、何人かの男女は大越の事を止まって見ている。

 特異なことをやった人を見る視線だ。

 女の子も見える範囲だが、触れる瞬間の時から距離を更に開けている。


「……すいません、人違いでした」


「ん? そうかい。まあ、そういう人違いは私にもあるから、気に病んじゃダメよ」


 大越は場を収める言葉を用いて、中年の女性は軽く手を振って気に病むなとの言葉を送る。


「ほら、ヤジホースは帰った、帰った。よくあることの一つなんだから」


「……あ、その、すいません。有難うございます」


 手で埃を散らすかの様に振って、中年の女性は解散を伝えると、大越は謝罪と感謝を伝える。

 すると、周りの人達は散っていく様に場を離れた。

 特異なことをしている大越に気遣いの言葉をかけてくれて大越は申し訳なさと感謝の気持ちが溢れていた。

 その後、大越はその場を離れていく。

 当然ながら、女の子とは違う方向を通ってだ。


(あんな事で渡せる訳なんか……渡したらろくなことがない!)


 移動しながら大越は本能的な危機を心の中で振り返る。

 あそこで渡せば確実にろくな目にあっていなかったからだ。

 落し物どころではない、そう思いながら大越は離れて行き、そのまま帰路へと向かった。

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