人魚捜索 22
ここから御堂視点
8人がそれぞれの時間を過ごし、宿を出る時間となった。
時刻は朝。
御堂達は準備を既に整えて、宿の前にいる状態であり、車に荷物を積んでいる段階である。
「ところで柄池は怪我って大丈夫か?」
「ああ、問題はないよ。一応リュートも病院には行ったほうがいいと言っているから、病院には行く予定」
御堂が怪我の具合を尋ねると、柄池は念の為と病院に行くと答えた。
「放置して確実に完治するなら良いけど、悪化して仕舞えば元も子もないからな」
柄池の傷に目をやり、龍富は言葉を付け足す。
御堂としても怪我の悪化もしてもらいたくないので、病院に行くことへの意義はなかった。
(今なら良いか……?)
御堂は心の中で提案の機会と考える。
「龍富に頼みたい事があるんだが、いいか?」
「ん? どうかしたのか?」
御堂は龍富に話を持ちかけ、龍富は尋ね返す。
「俺に稽古をつけて欲しいんだが、大丈夫か?」
「構わないけど……本当にいいのか?」
御堂は稽古をつけてくれと提案をすると、最初は驚くも龍富は了承を伝える。
驚いたのは柄池も同じで、柄池も御堂へと言葉を向ける。
「えっと、それってお兄さんから強制されてのこと?」
「違うと言えば違うけど、近いものはあるな。兄さんが定期的に俺の実力を図るからそれに対してなんとかしたいんだ」
柄池は兄絡みの事かと尋ねると、御堂は部分的には正しいと説明も加えて伝える。
兄である二郎は実技で御堂の実力を確認しようとするので、どう足掻いても誤魔化しは効かない。
その為、兄には少しでも強くなっていることを見せないといけない。
「戦ってなくても稽古しているって事が分かれば、兄さんは多めに見てくれそうだってのもあるな」
「ああ、そう言うことか。俺ならいいけど、定期的に俺から稽古をつけるってことでいいんだな?」
御堂は提案に至った考えを説明し、龍富は確認と納得を話す。
「ああ、ありがとう。よろしくお願いするよ」
「お兄さんのことはリュートと戦って勝てればいけるかと考えていたんだけど……なんかごめんね」
その上で御堂は改めてお願いの言葉を入れて、柄池は謝りの言葉も入れる。
柄池も兄への対処を考えていたようだ。
「ああ、いいよ。ここで動くのも悪くないと思ってたんだ。俺の技術も活用しがいがあるしね」
柄池に対して御堂は気にするなとの言葉を伝える。
実際に自分の作ったプログラムがここで役に立てるのも悪くない気分なので、ここにいること自体は悪い気分ではないというのも事実である。
龍富は皆の作業がある程度終えた段階で周りに声をかけた。
「それと……みんなが使った武器は一回俺が回収するから、今渡せる人は渡してくれ」
「そうだね、弾の補充もあるよね。そういえば、補充って龍富くんがするの?」
龍富は武器の回収を呼びかけると、大越は疑問を話すとともに使用した銃を渡す。
「ああ、そうだ。後父さんもやるね。こういうのって退魔力って特殊な力が扱えないと出来ないからな」
「俺はそれが出来なくてね。退魔力ってのが上手く出せなくて、自分で補充が出来ないんだよな」
疑問への答えとして龍富は解答すると、柄池は続いて警棒を小さく振り、補足として言葉を加えた。
御堂と愛川も使用した武器を龍富に渡すと、古賀松も自分の使用した警棒を渡す。
ここで古賀松からも言葉を話し始めた。
「俺からも話いいか?」
「いいけど、どうかした?」
古賀松から提案らしき言葉が伝わり、柄池は聞き返した。
古賀松はよく見ると、どういうわけか昨日着ていたシャツを着てもいた。
「聖華ちゃんだけど、俺たちの使っているスマホとは違うからさ、ここら辺で買い換えをしてもらっては……って話なんだけど、どうかい? そこは聖華ちゃん次第のことだけど」
古賀松は柄池に八雲の携帯についての提案をする。
話としては理解は出来るが、御堂にはやや違和感もあった。
話を受けて嫌な顔をする様子もない柄池は御堂に意見を伺いたいとの意味の視線を送る。
「俺としても八雲さん次第だけど、変更はして欲しいとは思うな」
「そう? なら、やっておこうかしら」
御堂は八雲の事情を前提として変更に肯定の意見を伝え、八雲は買い換えを受け入れたことを伝える。
その後に八雲は使用した銃を龍富に返した。
「そりゃ良かった、と言うことでここはサブローにスマホを選んでもらいたいってのが俺の提案なんだが、柄池はどう思う?」
「ああ、そういう……って何ぉ?!」
古賀松は柄池に提案しつつも、笑顔で御堂へと視線を送っていた。
御堂は驚きの言葉を出しつつ、御堂の違和感が古賀松の企みだと分かる。
皆のいるところで提案すれば、御堂は引き受けざるを得ないことになると踏んで、この場で提案したのだろう。
「サブロー次第だけど俺はいいと思うし、他の意見がある人はいるかい?」
「そりゃスマホの事もサブローが一番詳しいから、適役だよな。異論はないさ」
柄池は提案に肯定の意を出しつつ龍富を見て、龍富は異論はないと伝えた。
「特に意見はないよ」
「私も賛成よ。ここはサブローが行くべきでしょ?」
「行っといでサブロー」
愛川、大越、大空の順にそれぞれ意見を伝える。
大越からは気のせいか妙に強く推す意思を感じられた。
大越がやたらと手を挙げて肯定を強めているからだろうか。
「私は誰と一緒でも構わないわ」
「まあ、異論はないってことだし、あとはサブローだけど……」
八雲は一応は御堂の意思を尊重するような意思を言葉にして、古賀松は御堂に催促の言葉を促す。
古賀松の言葉そのものには押し付ける意思はないように見えるが、古賀松のにやけた口元は行くしかないだろとの意味しか感じさせなかった。
御堂は意思を表すのに思考の時間を割いた。
御堂は私用で女性と一緒に出かけることなんて今まで一度もなく、抵抗がないわけではなかったからだ。
「サブロー、事情があってってことなら無理強いはしないよ。俺が別の案も考えるから」
柄池は何処と無く無理強いの雰囲気を感じたのか、御堂に助け舟を出すような言葉を出した。
言葉は有難いが、御堂が行くしかないことは状況として分かっていた。
「いや、行けるから、大丈夫だ。万が一、機種によってプログラムが動かないって事もあるから、俺が行けばほぼ大丈夫だしな」
御堂は自分の考えを言葉にする。
他の誰かが行って、プログラムが動かないのは避けたいことであるため、一番回避しやすい御堂が行く他はなかったのだ。
御堂の他にもついて行ってもらう事も過剰な事で、八雲と二人で行く他はないだろう。
「では、よろしくお願いするわ」
「頑張ってこいよ! 終わった後で喫茶店に行ったって文句は言わないからな」
八雲からもお願いの言葉と古賀松からは過剰な激励が飛んできた。
さらには大空からは近づいてきて肩を叩かれるという激励も受ける。
「余程のことがなければ、選んで終わりだから……余計なことの心配はいらないぞ……」
それらの過剰な期待を鎮めるためにも余計な心配はいらないと御堂は言葉の釘を刺しておいた。
「なんか悪い気もするけど、引き受けてくれてありがとうね。俺からも頼むよ」
「取り敢えず、承知した」
両掌を顔の前に合わせて柄池は申し訳ない感情も交えて頼みの言葉をかけた。
御堂も承知の言葉で返すことにした。
それから御堂達は車に乗って帰路を辿る途中で御堂は古賀松と大空にいつ買い換えに行くか聞かれたが、御堂は決めてないという理由で話すことはなかった。




