人魚捜索 21
夜の話。前半八雲視点、後半柄池視点。ちなみに現段階で八雲視点はレアケースです
もう一方の部屋では古賀松と八雲が入ることになる。
食事後、八雲は部屋で古賀松と話をしていた。
内容は今回食べた店でのあの一品についてと、八雲が強かに食べる選択をしたことについてだ。
あの選択について古賀松としてもいい判断だと言っていたのだ。
ただ、話をしている時に八雲は本で顔を隠すよりその顔を見せたほうがいいと古賀松は言ってもいた。
それについて八雲は拒絶することになる。
古賀松は残念だと言葉にしたが、すんなりと受け入れることとなる。
それらが寝る前に起きた出来事であった。
今現在は深夜。
寝ていた八雲は寝具の上で眼を覚ます。
今回八雲は少しだけ眠ろうと考えていたため、窓を見て悪い時間帯ではないとも考える。
八雲は携帯をとって時間も確認する。
(時間は深夜の一時……やるなら今ね)
八雲は心の中で機会の時刻と判断し、古賀松を見る。
古賀松は就寝していた。
八雲は笑みを浮かべて、寝具から降りる。
そして、身につけていた寝間着を八雲は脱いでいった。
準備を整えた八雲は古賀松が寝ている寝具の上に上がり始める。
古賀松は少し動きを見せるが、構わず八雲は這うように古賀松の方へと移動した。
「……あー……なんてこった。起きてしまったよ」
古賀松はゆっくりと動きつつ、言葉を話す。
起きたようだ。
しかし八雲には好都合。
「しかも、まだ暗いから……って、うおぁ!?」
「あら、お目覚め?」
古賀松は言葉の最中に気づいて驚きを見せ、八雲は挨拶がわりの言葉を返す。
今の八雲は下着だけの状態、
ではなく下着だけの体に明日の朝着るであろう古賀松の上の服を着ている状態だ。
八雲が高校生の時、同じ教室の男子が男子の着た上の服を下着か裸の女性が羽織るのは最高だと言っていた記憶からこの姿で今は動こうと思ったのだ。
ちなみに古賀松の服は古賀松の手荷物から拝借したものだ。
「ちょっと、君……何やってんだよ?」
「あなたでしょ? 本で隠さずに話したいといったのは」
古賀松の驚きと疑問が混じった言葉に八雲は古賀松の望んだことと返答した。
今の状態は仰向けの古賀松の上に向かい合う形でこの格好で四つん這いでいる。
八雲がいると言う状態だ。
驚くなと言うのが無理である。
「え? そんなことは……言ってな……くもないけど、なんてカッコしてんだよ?」
寝起きである古賀松は頭がおぼつかない様子であり、言葉から記憶が曖昧である事が分かる。
更には表情からも混乱と戸惑いが溢れているほどなのも理解出来る。
(いい反応……こんな格好をした甲斐があるわね)
八雲は笑みを浮かべて、古賀松の表情の感想を心の中で述べた。
「ともかく、さっさと降りな。そんでパジャマになって寝ておいてくれよ」
「あら? ……つれないこと」
古賀松は降りるように勧めてきて、八雲は首を傾げて返答をする。
八雲はここで降りるつもりは無い、程度として毛頭も、蟻一匹も無いほどに。
「せっかく、話を……今の私と今日食べた特別な一品と言う、でざーとを比べる話をしようと思ったのに」
八雲は話を続けた。
話の内容からいまいち意図が取れないと、古賀松は表情から語った。
「ともかく離れなって。話も遠慮だってば」
「あら、よく分からないから遠慮ってこと?」
古賀松は先ほどより強い口調で八雲に勧めると、八雲はその言葉の解釈を自らの言葉で話した。
「じゃあ、比較しやすいようにしてあげる。実際に食べれば分かるわよね?」
八雲は更に語る。
古賀松は言葉の意味が分からないと無言で語ったようだ。
「私を食べさせてあげる」
八雲は語りかけるように呟く。
「ほら、遠慮しないで……」
「……」
八雲は言葉に甘さを塗して招くように囁き、顔と顔の距離を縮めようとする。
古賀松は無言であった。
(まあ、本気で食べようとすれば、私は拒絶するけども)
八雲はもしも古賀松が無理な手段に出た場合のことも考えていた。
八雲としてはどう言う反応をするかは興味があるので、食べられる自身の姿は御免被る話だ。
八雲は少しづつ距離を縮める。
そこで古賀松は動いたのであった。
古賀松は八雲の顔の前に掌をかざす。
「辞めな」
「どうして?」
古賀松の低い声、間も無く八雲の疑問。
古賀松は険しい表情で、対して八雲は心から興味と言う快楽が溢れる表情であった。
「俺が女を愛せば、必ず不幸になる。だからだ」
古賀松は掌を更に八雲の顔に近づけ、拒絶の意思も言葉とともに伝える。
「あら、そう……」
それに八雲は理解の言葉を返した。
八雲はそれ以上の踏み込みは危険とも判断する。
「じゃあ、これで引くわ。気分を害したなら御免なさい」
「……気をつけてくれよ」
八雲は退去と謝罪を話し、古賀松は低い声で気をつけるようにとだけ話した。
警戒が抜けてない古賀松の表情の中、八雲は状態を起こして古賀松から離れる。
古賀松から背を向けて移動していたところ、八雲は一度寝具の上で止まる。
「今ならまだ食べれるのよ、私はきっと味も良いはずなのに……」
「デザートが食べてなんて、普通は言うか? そんなの危なすぎて食べる気にならねーよ」
八雲は最後の推しとして可能性を匂わせる言葉を話すと、古賀松は食いつく事なく言葉を話した。
古賀松の表情は見えないが、言葉はまだ警戒の色が抜けてないようだった。
「そう……なら、もう話はやめね」
八雲は今度こそと話の区切りを言葉で伝えた。
寝具から降りて、八雲は自分は寝ているところへと移動する。
(まあ、中々にいい反応だったからここで下がっても十分ね)
八雲は寝具に上がってから心の中で感想を呟く。
いつもの古賀松から得られない貴重な反応を得られたので、八雲にとって収穫はあった。
古賀松から拝借した服は此処を出る前ならいつでも返せそうなので、八雲はそのまま寝ることにした。
「……ホント、やってくれるな……」
古賀松は小さく呟いたことを八雲は耳にする。
それから二人は朝まで会話をすることなく、寝ることとなる。
そしてもう一つの部屋では柄池と大空が入っていた。
時間としては夜で食事を終えて、二人で会話を始めたところだ。
「しかし、柄池も料理経験が長いんだな」
「まあね。中学生の頃から自分の食事は作ってたよ」
大空が料理経験について語ると、柄池もそのことについて語る。
きっかけは大空が今夜の料理について語っていた時、柄池もその話に乗ったことからだ。
そこから発展して部屋でも会話することになっている。
柄池の傷も痛みは落ち着いていて、治りかける段階を感じてもいた。
「実はアタシも料理はやっていてね、高校生の頃からだけど」
「おお、ホント? 腕前も中々そうだね」
大空の話に柄池も驚きを言葉に交える。
高校生の頃からやっていたと言うことで経験からくる腕前も中々と柄池は判断した。
「なに、腕前はちょっとばかし自信があってね。機会があれば奢ってやるよ」
「ははは、そりゃ期待しようかな。こっちも機会があったら奢るから」
拳を上にあげて二の腕を見せることで、腕前をアピールしつつ大空は話した。
柄池も期待とこちらも奢ることを話す。
「こっちも期待だな。ついでにレシピもお互い増やしたいとこだな」
「そうだね、料理についての知識も深めたいよね」
大空も柄池の言葉に期待の言葉を話し、柄池も言葉を返した。
(そろそろ、出来る料理も増やしたいと思っていたしな、都合が良いよ)
柄池は心の中で好都合を呟く。
料理についての話は高校生の時にも退魔師の任務ついでに泊まった宿の料理人と話す機会はあった。
柄池としても比較的に身近に料理のことで話せる事が出来る人は貴重である。
好都合はその為だ。
「ところで、柄池。聞きたい事があって良いか?」
大空は顔の前で両掌を合わせて、姿勢の低い声で柄池に頼み言葉を言う。
「何か?」
「龍富だけどさ、あいつ松のことどう思っているか分かるか?」
柄池が尋ね返すと、大空は龍富のことを聞いてきた。
「リュートがどう思っているか?」
「そうだ。分からないところがあるなら憶測でも良いから、教えてくれるとありがたいんだ」
柄池は確認の意味も込めた聞き返しをして、大空は聞き返しを肯定する。
確かにあの二人は変に合わないところがあると思っていたところもあるので、大空が気にする理由も理解出来ていた。
柄池は少し思考に時間を割いてから答えを出す。
「俺から見るには気に入らないところもあるけど、一緒に行動はできなくはないってところかな」
「そっか……なら大丈夫か」
柄池は自分なりの答えを言葉にして、大空は一先ずの安心を言葉にした。
大空は安心の一息をした後口を開く。
「あの二人相性悪そうだったからな、不安でね。松のやつあんな接し方しか出来ないのかあれだから、あんなんでも根っこは悪くないんだけど……」
柄池と同じく反りが合わないとも付け加えて、大空はあの二人の気がかりを呟く。
「うん。マッツも悪いやつじゃないってなんとなく分かるから、心配しなくても良いんじゃない?」
古賀松がそんなに悪くはないとも話し、柄池は同意見と伝えた。
古賀松は割とやってはいけない事は分かって行動もしているようにも見える。
龍富も必要以上の突っかかりもしないので今のところは大丈夫と見ていた。
「それになんか悪い事が起きそうだったら、その時は俺が対処するから」
「そりゃ、助かるよ。アタシも松のことは気をつけておくから」
柄池は何かあった時の行動も伝えて、大空も何かあった時に動くとも伝えた。
今のところ必要以上の行動も良くないと考えているので、やっておくこととしてはこれで十分との判断である。
ここで柄池は一つ疑問が浮かび上がり、言葉として話して見ることにした。
「そういえば、朱鷺子さんって戦闘で強いって聞いていたけど、何かやってたの?」
柄池は疑問を呟く。
「……」
すると、大空は表情が少しの間固まり、何も言えなくなっていた。
柄池はどうかしたかと口を開こうとすると、大空が先に話す。
「……まあ、色々とな、色々とやってたんだ……色々と」
「そうなんだ……色々と……」
大空は曖昧な返答をして、柄池は理解の言葉を話した。
大空の反応は苦い色の笑いと、明らかに視線を外しての返答であった。
(下手に追求しちゃダメな話題なんだな……)
柄池は心の中で反応に対する理解をして、別な会話にしようと試みる。
それから寝るまでは、料理や柄池の高校についての話をして時間を過ごしていた。




