人魚捜索 14
ここまで龍富視点
龍富は撃たれた狼男の爪による突きを交わし、さらに熊の狼男の蹴りを交わす。
龍富は隙を見て、撃たれた方の狼男に横の斬撃を入れた。
しかし、それは読まれていたのか軽々と交わされてしまう。
「ははは、お前と戦っていると、未来予知の力が宿ったと勘違いしてしまうよ」
「く……」
撃たれた狼男は自慢げに交わしたことを誇らしげに話し、龍富は口の中で苦味に染まったような言葉を話す。
その撃たれた狼男は肩のダメージをもう克服したのか、肩を抑える行動もしなくなった。
(早く片付けないと……せめて一人だけでも倒さないと……)
龍富の焦りは心の中の言葉にまで影響していた。
「それともお前……その気にさせる系男子ってやつ? ふざけるなよー? そういうのは女子でも簡便なのによ!」
撃たれた狼男は嘲笑いながら話し、熊の狼男も同様に笑い始めた。
「お前! よくふざけられるな!」
龍富は撃たれた狼男に向けて走り出し、刀に気を込める。
「リュート! ダメだ、言葉を間に受け」
柄池の注意の言葉を龍富は聞くも、聞き終わる前に気で延長した横の斬撃を放つ。
「はーい焦ったーもっらいー」
撃たれた狼男は笑いながら言葉を放ち、気で延長した攻撃範囲を悠々と逃れる。
そして、熊の狼男は飛び上がって足をこちらに向けてもいた。
「あっ……」
龍富は失態に気づいた言葉を漏らす。
まんまと龍富は誘われてしまった脇腹に熊の狼男の飛び蹴りを龍富は貰う。
「ぐ……がっ……」
声というより肺から空気が漏れる音が龍富の口から出て、地面を転がる。
「よし! 今だ、行ってこい!」
熊の狼男の命令で、撃たれた狼男はその場を走り抜けていく。
向かう先は柄池の方。
と思われたが、柄池ではなく狙いは御堂の方だった。
「三人とも走って逃げて! 俺は大丈夫だから!」
柄池は大きな声で指示を出す。
同時に視線を横にずらして、二度ほど頷くような行動に出た。
柄池の声の後、御堂、大越、八雲は走ってこの場から離れて行った。
「待て! お前達を捕まえておけば!」
撃たれた狼男もその三人を追うように走って行った。
「さて、新たな人質が有ればこの場も切り抜けられそうだしな……攫った人質は予想以上に使いにくくてな」
未だ意識を失っているもっちを見ている。
熊の狼男の言葉を聞きながら、龍富は立ち上がる。
「俺は時間を稼いでもいいかもな」
「くそっ……なんて失態をやってしまったんだ……」
熊の狼男が話している中で龍富は自責の言葉を吐く。
焦ったばかりに振りな状況になってしまう、そんな自身を責めたくなっていた。
「心配するな、リュート! あの三人だって、逃げ切れる可能性はある! 今は目の前に集中しよう!」
そんな龍富を見て、柄池は離れたところから言葉をかけた。
そして、柄池はネックレスの狼男の拳を避ける。
「……ああ、そうだな。確かにまだ捕まったわけではないよな」
柄池の言葉を聞いて、龍富は自身の責める思いを言葉と首を横に降ることでも振り払う。
(それに、一人だけと戦うことになったとも言える。あいつを倒しやすくなった利点もあるんだ)
また、龍富は今の戦況の変化について利点ができたことも心の中で理解した。
逆に他のところへ駆けつけやすくなったとも言えるのだ。
龍富は刀を握り力を強める。
「なんだよ。しけたツラのままでよかったのによ」
呆れたと言いたげな顔で熊の狼男は手をかざしながら話す。
「まあいい、俺の本気を見せて、またしけたツラにしてやるからよ」
熊の狼男は両手の平も地面につけて本気を出すと宣言する。
龍富は今までとの雰囲気の違いを察し、身構える。
「サイレントアタック!!」
その言葉と共に狼男は一瞬で消えて行った龍富は周りを見渡す。
しかし、それで相手である熊の狼男は見つけられなかった。
何処から攻撃が来るか、龍富は予想がつかない状況である。
「こっちだよ! こっちー!」
背後から熊の狼男の声。
振り向くと、共に爪での突きが飛んで来て、龍富は刀で防ぐ。
「よく防げたが……次は上手くいくかな?」
熊の狼男は防いだ事を評価して再び先ほどの体制へと移る。
それを見て龍富は接近して、斬撃を放とうと試みる。
距離は攻撃が届くか否かの微妙な境に位置している。
「サイレントアタック!!」
熊の狼男は声と共に一瞬で消え去り、龍富の攻撃は空振りに終わってしまう。
再び龍富は狼男を見失ってしまった。
龍富は沈黙する。
(そっちがまたそれをやるってなら、やりようはあるんだ)
心の中で別の手段を探った龍富は刀を片手で構えて、刃の根っこに片手を近づける。
更に刀を持った手を通じて、刀に気を送った。
焦らずに心を落ち着ければ行ける。
その心持ちを維持する事を念に置く。
離れたところから柄池が警棒での攻撃をする音が龍富の耳に入った。
姿を消している時間は先ほどの攻撃よりも長いようだ。
「どうしたー!」
熊の狼男の声が横から響く。
しかし、龍富は狼男へ視線を向けず、動きを止めていた。
龍富に攻撃が迫るところまで来ている。
当たる気配を感じた。
龍富は爪で刀の根っこを弾いた。
広がるは爪と金属がかちあう音のみ。
熊の狼男は一直線に向かう足音を出す攻撃が当たる。
「あだっ!!」
様に見えたが、悲鳴を出した方は熊の狼男であった。
受ける衝撃も大きく、熊の狼男は弾かれたような勢いで転がってしまう。
「こっちの武器は刀だけじゃないんだよ」
龍富は鞘も片手の中に収めて話しながら、寝ている熊の狼男の元へといく。
「退魔力と言ってな。化者に効果がある気の一種なんだ。刀につけて範囲の水増しのためやさっき周りに弾いたのもこの退魔力のおかげなんだ」
「はごぁっ!」
龍富は先ほどの攻撃の解説を入れつつ、刀のない鞘を熊の狼男の胸の上から突くように落とす。
悲鳴と空気が漏れる音が混ざった言葉が熊の狼男から発せられる。
先ほどの原理は刀に退魔力を集めて、それを爪で弾く事で空気中に拡散させるのだ。
空気中と言っても龍富の周囲だけで思ったより届く範囲も短く、効果の持続も短い。
それで龍富は攻めて来るタイミングを見計らって、一時的な防御手段として使用しているのだ。
「さて、これでお前も……」
龍富は刀を地面に立たせるように刺し、話しながら寝ている熊の狼男の片手を掴む。
狼男は当たりどころが効いていたのか、咳き込んでいた。
そして龍富は腰から錠を取り出す。
「お縄って事だ」
離した鞘も傾き、龍富はそう告げると熊の狼男の手に錠をかけた。
(攻撃前に喋ってくれて助かったよ……攻撃のタイミングが分かるから)
龍富は相手の初歩的なミスに心の中で感謝もしていた。




