人魚捜索 9
愛川視点
「悪いね。普通の一般人も来る中で化者の話は出来ないだろ?」
店長は大越と愛川に謝りつつ、先ほどの話での訳を話す。
この場所は店の裏側で人の通りもない場所であり、店長の提案からこの場所への指定があったためにここにいるのだ。
「少しでも化者話をして波風立てると不味いんだよね。うちの子はほぼ人魚で」
「え? そうなんですか? もしかして、全員が人魚って……」
店長の話した内容に愛川は驚きの言葉を出す。
「ああ、俺は人魚じゃないからね。店員にも二人普通の人がいるけど、それ以外は人魚ってこと。ついでにその二人も人魚が働いているって事は了承済み」
「そういう事なんだ」
店長の説明に愛川は納得をする。
ちょっとした疑問が頭を回っていた愛川にはこの説明は助かるものであった。
(店長さんも人魚かと思っちゃった)
頷きながらも心の中で愛川は納得の言葉を呟く。
「あと気になったけど、二人は退魔師絡みの仕事なの?」
「はい。知っているのですか? 退魔師を」
店長は気になった質問を向けると、大越は驚く様子もなく答えて聞き返す。
愛川には退魔師の言葉が出た事が驚きではあった。
「前に一回来たことがあるんだよ。同じように人魚を探しに」
その言葉とともに店長は店の方に視線を向けて、愛川たちの方へと視線を戻す。
「この店って人魚のバイト場所って事で人魚達の裏常識となっているみたいなのか、知らない人魚は知らないみたいなんだ。それで以前、知らない人魚からの依頼で退魔師さんが……という事」
店長は退魔師が来た経緯と店のことにも話で触れる。
思い返すと今回の人魚も行方を知らない人魚を探すと言っていた上に、行く場所の検討も人魚にはつかない事があって、今回の依頼とも似ているところがあった。
「ああ、そうなんですか」
「今回もそれっぽいね」
大越は理解の言葉を話し、愛川は今回の依頼が起きた理由についても語る。
「うちにはいろんな人魚がいてね。単純に買いたいものがあるって子、歌を歌いたいって子、日本一周したいって子までいる感じ」
店長は笑いながら、店にいる人魚についての話をする。
愛川は人魚の考えへの個性に関心を感じていた。
話の後、店長は店の入り口に目を向けて口を開く。
「ちなみにあの歌ね、店員が歌って俺が作詞作曲したもの。まぁ、趣味の一環っとでも言えるか」
店長はちょっとした自慢話として店の音楽について話し始める。
何処と無く店長の気分が上がりつつあるようだ。
「おお、来たようだ。それじゃ後は、その子と3人で話せばいいんじゃない?」
店から出て来た人を見かけた店長は話し相手の交代だと伝えてその場を後にした。
途中入れ替わりざまに店員は一礼をし 、店長は軽く手を振ってすれ違う。
こちらに駆けつけた店員は短めの水色の髪をしていて、御堂が描いた絵と一致していた。
この人が探している人で間違いない。
「えっと……あなた達がまつりんといつみーから探してくれって頼まれた人で?」
「はい、そうです」
もっちは先にこちらの事での確認をして来て、大越が答える。
距離も二、三歩分離れたところで会話をしている状況である。
警戒心は少なからずあるようだ。
「じゃあ、いつみーとまつりんの髪の色は分かる?」
「いつみーが黄緑で、まつりんが桃でしょ? あと、いつみーはスマホの話を良くしてた!」
更にもっちは二人の人魚について質問をして、愛川はそれに答えた。
「ああ、ちゃんと二人と話したんだ。じゃあ、安心。私がもっちだよ」
もっちは改めて名乗る。
愛川の答えに安堵して声にも警戒の色が薄れていたようだ。
「私は大越来海って名前。もう一人は愛川愛理栖ちゃん」
大越は自分の名前についても紹介し、愛川についても紹介をしてくれた。
一応という事で、愛川は小さく頭を下げる。
「ところでなんで私のことを探しに来たか、二人はなんか言ってた?」
「そうね……確か行く前に言っていた事が……」
もっちは探す理由についてと別の話題に繋ぎ、大越はそれに答える。
愛川の頭に先ほど人魚と別れた時の会話がよぎる。
「何処にいるか探してもらいたいっても言ってましたし、それとこの時期は人魚の誘拐に気をつけてと伝えてとも」
大越は愛川の頭にあった人魚の会話内容を代言し、愛川も二度頷く。
二人の人魚の話ではこの時期は人魚が誘拐される。
危険がある事で人魚達は気をつけるようにとよく話しているとのことだ。
「誘拐ね、噂にも聞いているけど、今のところ人魚の被害はないって話だし、大丈夫ね」
「ええ……そんなこと言って」
大越の話に対して、もっちは真剣に話を受けている様子はないともっちの言葉から見て取れた。
「大丈夫よ。この姿を見て他の人が人魚だと思う? 完全に普通の人間でしょ?」
「それはそうだけど……一応気をつけたほうが……」
もっちは言葉から溢れる自信とスカートを少し摘んで、脚を少し動かす事で人魚に見えないアピールをして来た。
大越は否定はしたいが、納得もできると見える言葉で返答をした。
愛川としてももっちの受け取り方に不安はあるも、この姿で誘拐されるかと言えば、大丈夫そうな気もしていた。
その理由があって愛川も反論はできなかった。
「まぁ、ともかく……わざわざ探しに来てくれたわけだしそこはありがとね。あの二人にはここで働いている事は伝えていいけど、他の人魚にはバラさないように伝えてくれる?」
「……そこは伝えておくわ」
もっちは礼を大越達に伝えると大越は苦い顔で返答をする。
大越も止むを得ず、下がった感じである。
「うん、ありがと。私からも二人には心配ないっても伝えておくから。あと、せっかく店に来たわけだしちょっと食べてくれない?」
「そうだね、早くに見つかったし、みんなに知らせてからだったら、食べてもいいんじゃ?」
もっちは礼と提案をして、愛川はその提案に乗ることを大越に目線とともに伝える
愛川は店の食べ物も気になっていたので、食べたい思いはあった。
「どうしよ……? ともかく皆に連絡が先ね。連絡が遅れてこれ以上皆に無駄足させたくは無いし」
大越は即座に却下はしないが、連絡を入れることを優先したいと言葉で表現する。
すると、ここで聞き覚えのある声色が店に続く歩道から聞こえて来た。
「ここだぜ、ゼッテー俺たちが一番乗りだし、情報くれたあいつには礼をしなきゃな。一番じゃなかったら、そん時は」
古賀松の気分の良さそうな声であった。
「あ! マッツー! こっちー!」
愛川は古賀松に手を振って声をかける。
御堂もいたのか古賀松の横から顔を出してくる。
「あれ? 愛川さん? もしかして……」
「あ、そうだよ。探している人、私たちが見つけたのよ」
「お先にー」
御堂は疑問を言葉にして浮かべると、大越が答えて愛川も言葉を付け加える。
それを聞いた古賀松は流石に驚きを隠せなかったようだ。
「えー……マジかよ……今日は二つショックがあってこんな日はなかなか無いぜ……」
古賀松の言葉は気分の落差が見て取れていた。
「取り敢えず、私は知らない人に連絡をするから。先に柄池くんからがいいよね」
スマホを出した大越は連絡を引き受けると伝え、連絡を始めた。
愛川は古賀松達に伝えたほうがいいと古賀松達の方へ向かう。
「思ったより早かったねー」
「それはこっちが言いたいよ」
愛川が二人の着いた早さについて話すと、御堂から指摘が入る。
「あーサブロー君……俺はさっき一番がどうのこうの言ったが、必ずしも何かやるって言ってないからな、分かった?」
「あー、分かっている。分かっているから」
古賀松の先ほどの話について理解を求め、御堂は理解をしていると伝える。
と、ここで愛川の後ろからもっちは寄って来て、話を始める。
「もしかしてこっちの二人は愛理栖ちゃんの知り合い?」
「そうだよ、同じくあなたを探しに来た人」
「ありがとね、せっかくだし、そこのお二人もお店で食べない?」
もっちが愛川に尋ねて愛川が答えると、もっちは古賀松と御堂も店に入れようと言葉で試みる。
「あ、愛理栖ちゃん? 柄池君に連絡して、お店で食べていいって話になったから、四人で食べてよー」
「そりゃいいや。じゃあ、お言葉に甘えて」
「はーい」
大越は柄池に連絡した結果を伝えると、古賀松は店に入ることを伝えて、早速、歩を店へと進めようとする。
愛川も店のことが気になっていたので、古賀松の後をついて行った。
こうして四人は店で時間を過ごすこととなった。




