人魚捜索 5
「じゃあ、そろそろ俺が行くか」
「え、大丈夫?」
柄池は後ろから声をかけて、人魚との話に出ようとして大越は不安の声を出す。
「大丈夫だよ、ガットは。とりあえず見てみればいいよ」
不安の声に対して龍富は確信にも似た信頼の声で答える。
古賀松も下がり、柄池は先程まで古賀松がいた場所で口を開き始める。
「おーい! 話したいんだけどいいかーい!?」
柄池は大きな声で質問をした。
声を聞いた人魚達は顔を見合わせてその場で留まる。
「その場所でいいからー! 手を使って答えるだけでいいよー!」
再び柄池は大きな質問をする。
その質問に人魚達は一度柄池へ視線を送った後、二人で見合わせて小さく頷く。
後に桃色の人魚が頭の上で丸を作った。
意思疎通は出来そうだ。
もう一度柄池は質問のために声を開く。
「探す子がどこで陸に上がるかー! 見た所あるー?!」
柄池の大きな声での質問は人魚達の顔を見合わせた。
意見をすり合わせたのか、その後に桃色の人魚は頭の上でバツを作った。
続けて柄池は次の質問に移る。
「行ってみたいところとかはー! その子言ってたー?」
柄池は再び大きな声での質問をした。
その答えに人魚たちはもう一度顔を合わせた後、桃色の人魚は頭の上でバツを作り、黄緑の人魚も縦に頭を振っていた。
八雲は柄池が応対するその様子を本で顔の下半分を隠しながら見ていた。
「現状この方法しかないとは言ってもこの方法だけでは……」
その様子に御堂は状況に対しての意見を呟く。
柄池も軽く息をついてから、次の質問へと息を吸って準備をしていた。
この応対は少なからず負担はあるため、どれくらい続くかは分からないが、効率的とは言えない応対方法であることは間違いない。
その御堂の意見に龍富も一字一句同意でもあった。
しかし、ここで人魚たちは柄池の声が出ていないにも関わらず、人魚達は遠くで話し合う様子を見せ、ゆっくりと柄池との距離を縮めてきたのだ。
「あら……?」
八雲が驚きの声を出す。
龍富自身は柄池のことなので何かしらうまくことを運んでくれると確信はしていたが、あちらの方から近寄ってくることは予想外であった。
「声……える?」
「ありがとうね。出来れば、もう少し近づいてくれると、聞こえるんだけど……大丈夫かな?」
龍富の方からはいまいち聞こえないのだが、桃色の人魚が声について聞いているところで柄池が出来ればもう少し距離を縮めたいと話すことは理解できた。
それに対して桃色の人魚は少しだけ考えてから頷き、再びゆっくりと距離を縮めた。
黄緑色の人魚もそれに戸惑うが、そちらの方も桃色の人魚についていく形で距離を詰めることにした。
「おれでもダメだったのによ……柄池だとここまでか……」
古賀松は落胆と驚きが混じった声を出すと肩を少し下げる行動で、落ち込んだ様子を見せる。
その傍らで柄池は何かしらの会話を桃色の人魚としているようであった。
会話が終わったようで柄池は視線をこちらに向ける。
「あー、みんなには悪いけど俺以外の人と距離を置いてほしんだって。頼める?ここから7,8歩くらいだったら大丈夫みたいだって」
柄池は龍富を含む7人に提案をする。
そうでもしないと、ダメなことは今までのことで分かることから、龍富は提案を受けても問題はなかった。
「ということだ。このままではダメだから、みんな下がるしかないな」
「そういうことなら、そうするしか」
龍富の声がかかると、御堂は納得の言葉を出す。
それに伴い、柄池を除く7人は柄池から距離を置き始めた。
途中で愛川は柄池の方へ少しの間、視線を送っていたようであった。
(心配なのか……何かあってもすぐに行ける距離だから、大丈夫だと思うけど)
愛川の送った視線に龍富は心の中で呟きを留める。
人魚自体にさほど危険性もない上に、何かがあっても対処可能な場所なので、愛川の行動は気にしすぎと龍富は考えていた。
「今更だけど、女性が行くってのはダメだったのかい?あたし自身は話に行っても問題はなかったけど」
「女性でもきっとダメだったわ。男性よりかマシではあるけど、女性でも警戒するはずよ」
大空が皆に向けて疑問を投げると、八雲は本に視線を向けて疑問に答える。
「はー、そっか。と言うことは柄池は今すごいことやってるとも言えるんだな」
「そう。私も驚いたわ。男性が人魚の警戒心を緩めるなんて思わなかったわ」
大空が柄池の事を言葉で評価すると、共に柄池の方へ視線も向ける。
八雲は柄池の事で驚いたとも話した。
「それもそうさ。ガットは化者には好かれやすい性質なんだ。なので、交渉や化物相手の調査には本当に頼りにしている」
龍富は八雲への解答に捕捉する形で柄池のことについて話す。
「なかなか話の融通が効かない年を取った化者もな、ガットはしっかり話をつけてきたんだよ。だから、俺は話がうまくいかなくても何とか任務をこなせているわけでもある」
先程の話に更に龍富は補足を行う。
龍富自身しか説得力を持って、この言葉を言えないこともあってか少し気分がいいことも龍富には分かっていた。
「それは……柄池君が人よりも違う特異な体質だから?」
「いや、それは違うと、はっきり言える。長年一緒に行動してきたから分かるんだ」
八雲は深いところを探るように龍富へ質問をかけてくる。
それに対して龍富は自信をのせた言葉で返す。
八雲は顔の下半分を本で隠していたが、視線の色がいつもと違うことは龍富にも感じ取れた。
「ただ……なぜ違うかは俺もはっきりは言えないんだけど……ともかく、俺の中では否定できる証拠は確かにあるんだ。……その証拠が、形になってなくてうまく言葉では言えない状況で」
龍富は先程の自信が乗った言葉とは、対照的に今度の言葉は苦笑いと自信のなさが自らも分かるくらいに出ていた。
その言葉に八雲は顔半分を隠していたため、どうとったか龍富には分からないところであった。
「何だよ、その自信なさげな説明は。長年つるんだ感と理由付けしてもよかっただろ?」
「それもそうだけど……って、そんなこと言ったら、もっと説得力のある理由はないのかって言いそうだろ?」
古賀松は龍富の説明に対して文句をつけ、龍富はその説明に対しての反論をする。
「おー、よく分かってるじゃーん。そんな言葉で突っ込む予定でした」
「あー、だったらいちいち突っ込まないでくれよ。適当に受け流せばいいだろ」
古賀松はそんな言葉も来るだろうと話し、龍富はそれに対して、突っ込むことへの中止を言葉で勧める。
他愛もない会話をやっていたところで龍富は柄池の様子が気になり始めて、柄池の方へと視線を移す。
すると、柄池は人魚へ聞き込みの最中で人魚達は柄池の周りで気を張ることなく会話をしていた。
中でも黄緑色の人魚は船の泊まり場に全身を乗せて、警戒心なんて投げ出したと外見で説明することまでしている。




