天狗と誘拐と女性と 31
柄池視点
帰り道を移動して、途中で8人はそれぞれ別れることとなる。
次々別れ、最終的に柄池は龍富と共に帰り道を歩む。
「……これで、任務も終わったわけだ。途中、トラブルもあったが」
歩きつつ龍富は任務が終わった事を話す。
「次はいよいよ退魔師試験だ」
「そうだな、失敗せず無事上手く行くようにしないと」
次に退魔師の試験の事で龍富は話の種として呟く。
この試験が重要な事は柄池も理解しているので、上手く行くようにと気持ちを引き締める意味も込めて柄池も移動しながら言葉に出した。
そこから柄池は言葉を続ける。
「遅刻はダメだぞ、リュート。何なら俺が起こしに行くから」
「だっ、そこまでいるかよ! ちゃんと起きれるっつの!」
遅刻はダメとも柄池から注意の言葉を出すと、そう言われると思わなかったのか慌て気味で龍富は起きれると話す。
試験は遅刻すると大幅な減点対象となる。
「これがうまくいけば、もっと受けられる任務も増えるからな。落とせないのはくどくなるほど分かってる」
「じゃあ、大丈夫そうだね」
慌てから気持ちを立て直して龍富は試験の重要性は分かっていると話す。
対して柄池は安心を言葉に出した。
そのような会話をしていると、分かれ道の角から人の影を目にする。
「……ん? あれって……」
ただの知らない人の陰ではない
待機をしているようで、こちらが近づいた時に少し反応もした。
その上、影からも知っている人だと判断も出来た。
「マッツか……こんなところで何を?」
別れたはずの古賀松が角から出て来て、柄池から疑問の言葉が出た。
そこにいる意味と、言葉には含まれてないが何時間待っていたかと言う疑問を含めて。
「おう、柄池もいたか。はっきりさせたいこともあってここにいたんだよ」
「はっきりさせたいこと……」
柄池はその古賀松の言葉に古賀松の次に来る話題が予想出来ていた。
「おっと、柄池に対してじゃあないぞ。王駕くんの事でだぞ」
話の前提として古賀松は柄池に対しての話ではないと前もって話す。
古賀松の気配りではあるが、予想している話の内容への不安に比べると話への不安が大きくて、気配りのありがたさは小さく見えてしまった。
「なあ、龍富。どう俺が足掻こうと女将さんは連行したのか?」
「ああ、どう足掻こうが連れて行った。これが俺の意見だ、新」
古賀松の重要な話に、迷いなく龍富は切り返す。
柄池も予想出来た話題であって、横槍は入れられなかった。
「迷いもなく答えるか。なら言わせて貰うが、俺は今でも連れて行くのは反対だ」
古賀松は龍富の意見に躊躇いなく反対の意見をぶつける。
これも予想出来てはいたが、柄池としても避けたいことではあった。
柄池はこの問題も何とかしたい意思はあったが、分かる範囲でも両者の意思が交わることもなく大きすぎるもので、現状どうしようもなかった。
「それでも俺はあの時正しい判断だったと思ってる。あれを見過ごせば、女将はまた同じ事を起こすはずだ。ああ言う状況でなら、問題を起こしても問題ないと思って」
「お前はそう思っているのかよ……」
意思は揺らぐ事ないと龍富は理由も含めて断言もした。
その断言に古賀松は失望の言葉を口から出す。
その様子を何も出来ず見ていて、柄池には無力感と歯痒さがあった。
「ああ、分かったよ。もうこの件での話は終わりにする。邪魔して悪かった」
続けての古賀松の言葉は口輪を終わらせると話す。
古賀松の声は半ば投げやりのような声でもあった。
「お互い相性悪いなりに仲良くはやろうぜ」
「ああ、そうだな」
最後にと仲良くはやろうとの言葉で古賀松は締めて、龍富は同意の言葉で返した。
この言葉はそのままの意味か、それとも裏に真意があるかは柄池に分からなかった。
二人はそのまま視線を向け合いつつ、平行線のままに距離を詰めて行く。
二人の目にはそれぞれの相手は映っているのか、ただ分かる事は二人に笑顔なんて物がなかった事である。
二人はそれぞれ触れる事なくすれ違い、背を向けてそのまま歩いて行った。
「ガット、いこう」
龍富の言葉は柄池に向けてのもの。
そうではあったが、柄池は古賀松の方へと視線を向けるしかなかった。
そして、龍富の言葉を返す事なく、柄池は古賀松の方へと向かって行った。
「え!? 何処へ?」
「先帰っていいから!」
龍富の言葉に先に行ってくれと柄池は伝える。
龍富のことは後でいつでも話せるが、古賀松の方はおそらく今の機会しかない、そう判断しての行動だ。
「お? なんだこっちに来て?」
「その、済まない……こんな結末で」
古賀松は柄池が来たのが予想外だったとの言葉を出すと、柄池は謝罪の言葉を出す。
それに対して古賀松は立ち止まって柄池の方へと顔を向ける。
「リュートの債務は厳しくて、これでも良くなった方なんだけど、こう言うことばかりは避けられないんだ」
「何を言ってるんだよ。柄池は良くやってくれたと思ってるんだぜ、俺は。だから謝る必要はないさ」
柄池なりの言葉でのフォロー、古賀松は柄池は良くやってくれたと責める言葉は出さなかった。
その古賀松の言葉に龍富へ触れることはなかったが。
「まあ、さっきも言った通り、俺は王駕くんと相性悪いなりに仲良くして行くつもりだから」
続けてと古賀松は笑顔で仲良くはやって行くと再度話す。
その顔は心からの笑顔かそれは分からなかった。
それを見て柄池はどうしようもない感情が湧いて来る。
「その、本当に済まない……」
頭を下げて柄池は再度謝罪の言葉を出す。
古賀松は帰る道へと顔を向けて進み始め、同時に柄池へと手を振った。
その姿をただ柄池は見るしか出来なかった。




