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抜け忍、普通の高校生を目指す  作者: ろん
第一章 抜け忍、高校に入学する
28/32

第二十八話 日常に迫る危機(後編)⇒そして決着へ

後編だけでも長くなりすぎたので、後日談を次の話に回します。

前回に次で終わりっていったのにすみませんm(_ _)m

20時過ぎ、浩信は大きなリュックサックを背負って竜心が住むマンション「ルネサス滝本」に入っていった。


浩信を出迎えた竜心は荷物の大きさに少し驚きながらも部屋に招き入れる。


「お邪魔しますよ」


リビングで立ち上がっていた静に声をかける。


「すごい荷物ね」


静は聞きたいことは山ほどあるものの、とりあえず目につく浩信の背中を見ながら言った。


浩信は「どっこらしょ」とリュックサックをリビングの隅に置き、大きな地図を取り出してからちゃぶ台の所に座った。


静もちゃぶ台の所に座り、竜心は浩信がマンションに入ってきたことを察知して沸かしていたお湯で人数分のお茶を注いでから湯呑を浩信と静と空いている席のところにおき、竜心も座る。



緊張した顔の竜心と静を前にして、浩信は話し始める。


「さて、早速だが、今までの動きを説明しますよ。


まず、賢治と賢治の兄貴、それに俺の家族の協力を取りつけました。


今回の作戦に必要なものと人員はもう確保できています。


まず最初に、沼井組のターゲットである会長さんにはここで潜伏してもらうことで、ある程度の安全は確保できていますし、竜心が一緒にいる以上問題はないでしょう。


次に、可能性は小さいものの、会長さんにとって狙われると弱いところ、愛心保育園絡み、園児の家についてはこちらで警備体制を敷きました。


常時10人、1日2交代制でこの地図に書いてある各地域を警備会社の者にそうとわからない格好で巡回させてます。


沼井組の連中がこれらの地域で怪しい動きをすれば、発見した者がケンが作ったメーリングリストにその情報を送ることになっています。


その情報を管理するのは俺で、基本的な対応は各警備会社の者が行ってその結果を流してもらうだけですが、もしヤバイ状況になったとしたら竜心に連絡します。


こちらとしては長期戦を狙うつもりはないですし、いくつか情報を流して沼井組の連中を攪乱するのでそちらに手を出す余裕はないはずです。


なので実際に園児の方が狙われる可能性はほとんどないとみてますが、もしものための保険としてこれらの体制を取っています」



静は愛心保育園の関係者が狙われる可能性が薄いこと、もし狙われたとしても対策を取っていることにほっとして、


「ありがとう」


と心を込めて浩信に礼を言った。


浩信は少し照れながら、


「まあ、そちらの心配を消しておけば作戦に集中できますからね。


さて、肝心の作戦について、今決まっている内容ですが……」


と作戦の内容を語って言った。



……



「本気なの!?」


と静が叫ぶ。


浩信はニヤリと笑いながら、


「ええ、俺は大真面目ですよ。


その方向ですでに動いています。


これで全て丸く収めてみせますよ」


と言い切る。


「確かに、全部うまくいけば……」


と静は言葉を続ける途中で「ふーっ」と大きく息を吐き、


「どうやったらこんなことが思いつくのか、あなたの頭の中を見てみたいわね」


と呆れたように言った。


浩信は真剣な顔になり、


「俺なりに、今回の件にはこれまでにないくらいに腹を立ててるんでね。


徹底的に叩き潰して、後に何も残してやらないつもりなんですよ」


と凄みのある声で返した。


静は「ふふっ」を微笑みながら、


「あなただけは敵に回したくないわね」


と余裕を持って返し、それから竜心の方を向いて心配そうな表情で、


「古賀君? 危険なところはほとんど古賀君の担当になるみたいだけど、大丈夫なの?」


と聞いた。


竜心は聞いた話をずっと頭の中で検証していて、


「ええ、問題は見当たりません」


と深くなずきながら静に答えた。




賢治は兄の「清永きよなが 聡治そうじ」と2人で浩信の依頼を検討していた。


「兄さん、ヒロから頼まれた監視システムに必要な要件だけどね。


向こうの拠点の常時監視はWebカメラと無線のネット接続と電源の組み合わせで大丈夫かなと思うんだけど、これだと人数の把握は常にこちらでカウントしないといけなくなるよね。


ある程度の誤差は仕方ないんだけど、僕らのミスで見逃したりするのは怖いな。


何か良い手はないかな?」


「んー……そーだなぁ……常時監視以外は拠点の人数の把握だけで大丈夫だっけ?」


「うん」


「なら、この前みつけた侵入者検知のシステムが使えるかもねー。


警備会社で使ってるヤツよりかなりコンパクトだし、必要な部分だけ取り出して組み替えて、中のソフトをいじったらWebカメラとおんなじよーにデータをネットで送れると思うよー。


そんでもって、扉の所でINとOUTをカウントすれば大体のところは把握できるんじゃないかな?」


「うん! それならいけそうだね!


あとできれば個体識別もしたいんだけどな。


全員は無理でも向こうのトップと幹部くらいは。


顔写真があれば何とか照合できるかな?」


「んー……ある程度は誤差がでるかもしんないけど、顔のパターンが数パターンあれば9割くらいの認証率ではいけるんじゃないかなー。


Webカメラの解像度がかなり良くないといけないけどね」


「わかった! 写真とWebカメラは浩信に頼んでみるよ!


これで必要な要件は何とか満たせそうだね!」




山本家では状況の把握と判明した状況の作戦への反映が検討されていた。


浩信の父、孝信たかのぶが浩信に新たな情報を伝える。


「浩信! 沼井組の拠点が掴めたぞ!


本拠地以外に村上家の監視と襲撃用にこことここにも組員が詰めているそうだ」


テーブルに大きく広げられた地図上に目印のコマを置いていく。


「その2ヶ所と本拠地以外にまだ拠点がある可能性は残ってるかな?」


と浩信が孝信に聞く。


「少なくとも5人以上が詰める拠点はないだろうな、小粒の拠点なら作戦の大筋には影響しないだろう?」


「ああ。大丈夫だ。なら潰す拠点は3つだな。それぞれ5kmも離れてねーし、作戦を変える必要はなさそうだ」


と浩信は満足げにつぶやく。



浩信の兄、繁信しげのぶが次に報告する。


「沼井組は今回の件にかなり力を入れているという情報は前から入っていたが、思ったよりも本気のようだな。


村上家の分家に圧力をかけるためか、組長と幹部クラス5人は既にこっちで動いていたしな。


2日前から流している竹溝組が村上家を狙っているって情報もかなり効いてるみたいだ。


武器を運んできている形跡もみつかってるぞ。


……ヒロの友達のその……忍者の子は本当に大丈夫なのか?


沼井組は今確認できているだけで60人以上は滝本市に入ってきてるぞ?」


浩信はニヤリと笑いながら、


「そこだけは全く問題ねーよ。


拳銃やポン刀に囲まれても問題ないところを試しに見せてもらってるしな」


「試し? どうやって?」


「まあ、遊びでやるみたいに指鉄砲で照準を付けられたら終わりって形で部屋の中で試してみてな。


でかいリュックを背負わせた竜心を視認することもできなかった。


同じ忍者でもなければ100人いても対処できるそうだ」


繁信は少しぽかんとして、すぐに気を取り直し、


「まー、こんな時にお前は嘘は言わんだろうし、本当のことなんだろうがな。


そんな人間が実在するんだなー……世の中広いとは思ってたが、思っていた以上に広いんだな」


と呆れたように言う。


浩信も肩をすくめながら、


「俺だって人から聞いたら『何の冗談だ?』って言うと思うよ」


と苦笑する。




竜心は浩信や賢治たちが動いている間、DVDデッキを買ってテレビに接続し、ずっと浩信が持ってきた十枚以上のDVDを静と一緒に見ていた。


テレビに映る内容は、竜心にとっては初めてで、静にとっては久しぶりだったが、見ているうちにほんわかとしてくる。


浩信に「作戦のためだ」と言われてずっと見ているし、後でまた浩信が持ってきた荷物をみると本気なのはわかるが、


(俺たちだけこんなにのんびりしていていいのかな)


と思わないでもない。



そんな中、浩信から最初の作戦説明があってから3日後、浩信の連絡を受けて、竜心は賢治の家に向かった。


賢治の家の前で待っていた浩信とともに家の中に入る。


賢治が玄関で「やあ」と出迎える。



賢治の部屋に行くと聡治が待っていて「やー」と眠たげな声を上げて出迎える。


「ヒロ君、久しぶりー。


君が竜心君だねー。


話を聞いてたらどんなにゴツイ人がくるのかなーって思ってたけど、思ったより普通だねー」


のんびりとしたペースの聡治に竜心は戸惑いながらも、


「初めまして。俺は『古賀 竜心』です。


この度はお世話になっています」


と挨拶をする。


「あー。ご丁寧にどーもー。


僕は賢治の兄の聡治です。


よろしくねー」


と聡治も挨拶を返す。



賢治が竜心を呼んだ訳を説明する。


「ここに用意してある装置を沼井組の3つの拠点に設置してほしいんだ。


今から設置方法を説明するね」


賢治が自分のパソコンでアプリケーションを立ち上げる。


浩信から受け取った拠点の写真が出てきて、装置を設置する場所がピカピカと光り、各場所でどのように設置するかのデモが流れる。


浩信が呆れたように、


「相変わらず仕事が早いっつーか、手回しがいいなー」


と苦笑しながら賢治に話しかける。


賢治はハハハと笑いながら、


「僕と兄さんが揃えばこんなもんだよ」


と答える。



「竜心、わかったかな? 今見せたように、誰にもわからないように設置してきてほしい。


できる?」


と賢治が竜心に尋ねる。


「ああ」


と竜心はうなずく。



竜心が装置の山の横に置かれているカバンに装置を詰めて準備しようとすると、


「ああ! デリケートな機械だから丁寧に扱ってね!」


と賢治が注意する。


竜心は一瞬ビクッとして賢治の方に振り返り、


「わかった」


と神妙にうなずくと、装置の周りにおかれていたクッション材で丁寧にくるんでカバンに詰めていく。



竜心がカバンに詰め終わったところで浩信が地図を出して、


「よし! 今は人手を割いて各拠点を監視してるんだが、竜心が設置する前に引き上げさせるからな。


まずこっちの拠点、それからこの拠点、そしてこの本拠地の順で設置してもらう。


動いていいタイミングは俺がメールで合図するから、まずこっちの拠点の近くで待機していてくれ」


と竜心に指示する。


竜心は「わかった」とうなずき、カバンを持って賢治の部屋を出た。



竜心は人目に触れないように細心の注意を払って最初に設置する拠点の近くで待機し、カバンを置いてこの拠点に設置する装置の梱包を解いて備えた。



浩信から「今から設置してくれ。終わったら一報頼む」とメールが入る。


竜心は気配を消して、拠点にある8人が外に視線を向けていないことを確認しながら、まず拠点の玄関の向かいにある茂みにWebカメラをつけたミニパソコンを設置し、ネット接続の機器と一緒に起動した。


起動したことを確認して、ミニパソコンとネット接続機器に雨天用のカバーをかけた。


それから玄関の脇の建物からは死角になっている場所に素早く移動し、無線LANがついた侵入者検知装置を大幅に改造したものを設置、対面にも同様の装置を設置した。


設置完了後、すぐにカバンを隠していた場所に戻り、浩信に「設置完了」とメールを送る。


すぐに浩信から「動作確認OK! 次の場所へ向かえ」とメールが返ってきて、竜心は次の拠点に移動する。



もう一つの拠点も問題なく設置が完了し、竜心は本拠地に向かう。


他の拠点に比べて随分と寂れた場所で、他の建物にあまり人の気配がしない中、20人以上の気配がする5階建てのビルがあった。


竜心は沼井組が1棟全てを借り上げたビルを見て、少し緊張する。


ビルの中からいくつか外に視線が向けられていることを感じ取る。


ライバルとなる別の組が襲撃してくる可能性が知らされ、かなりピリピリとした雰囲気が出ている。



竜心は外に視線を向けている者の気配を深く探り、その4人の拍子を掴んでその裏で素早く動き、装置を無事に設置し、引き上げた。


念のために遠目に本拠地を見ても動きがないことを確認し、「設置完了」と浩信にメールを送った。


少し間をおいて、浩信から「全ての装置が無事に動いていることを確認! 帰還してよし!」とメールが届き、竜心はほっとして静が待つマンションに帰って行った。



賢治と聡治は賢治の部屋で次々と装置が作動していることを確認していた。


聡治が珍しく驚きながら賢治に話しかけた。


「竜心君、すごいねー。


こんなに近くに設置したのに本当に気付かれてないよ。


賢治が大丈夫だっていうから設置場所を近くにしたんだけど、実際これだけうまくいくとびっくりするねー」


「アハハ。僕はもう竜心のやることには耐性がついたからこれくらいじゃ驚かないよ。


あとは、クライマックスの大活劇がこの画面で見れそうだね。


ノンフィクションとは思えないようなすごいヤツが」


と賢治は笑いながら答えた。




監視システムを設置してから2日後の夜。


賢治の部屋で浩信・賢治・聡治の3人は全部で8つあるモニターを真剣に眺めていた。



本拠地には組長と幹部5名、後他38人の組員がいる。

本拠地に近い方の拠点には組員が11人。

本拠地から遠い方の拠点には組員が13人。


沼井組を構成しているメンバーのほとんどが滝本市に集結し、その全員が各拠点にいる。


そのことは、作戦決行のための条件を満たしていた。



浩信は竜心に電話をかける。


電話に出た竜心に、「作戦決行だ」と告げる。




竜心は自転車で浩信が持ってきた大きなリュックを背負って本拠地から遠い方の拠点に走っていく。


目的地から少し離れた隠れた場所に自転車を置き、リュックの中から取り出した「ある服装」に着替える。


それから素早く拠点の一番広い部屋の窓から襲撃する。


その部屋には9人の組員が詰めていたが、襲撃に気付く間もなく気絶させられた。


窓ガラスが割れる音を聞いて慌てて別の部屋から駆け付けた3人も竜心の姿を見る前に気絶させられた。


残った1人は駆けつける前に本拠地に詰めている連絡係に電話しようとしたが、竜心の姿をみて呆気にとられているうちに気絶させられた。


竜心は気絶した13人を全員武装解除し、脱がせた服で堅く縛った後で拠点を去り、自転車を置いた場所で元の服装に着替えて本拠地から近い方の拠点に向かった。



本拠地から近い方の拠点もあっさりと制圧し、本拠地のビルに向かう。



その頃、本拠地にいる組員から本拠地から遠い方の拠点へ電話しても誰も出ないことで、本拠地にいる者たちは「竹溝組の襲撃か!」と疑い、慌ただしく武器などを用意していた。



竜心は本拠地の近くが浩信とその家族の手配で人払いされていることを確かめ、また「ある服装」に着替え、跳びあがって5階の窓に突っ込んだ。


突然バリーンと窓ガラスが飛び散り、そこにいた組長や幹部、他の組員も一瞬何が起こったのか分からなかった。


飛び込んできた「モノ」を見ても、それが何かは分かっても、なぜそこにいるのかは全く理解の外にあった。



少しの間、誰もが何も言わないために生まれた静寂がそこにあった。


下の階から「何があったんですか!」と声が響いてきて、ようやく我に返った組員の一人が叫んだ。




「何で、○ンパンマンがここにいるんだよーーーー!!」




アニメに出てくる「○ンパンマン」と全く同じように見える、等身大の○ンパンマンがそこにいた。


アニメと違うのは大きなリュックサックを背負っていることだけだ。



凄まじい違和感に囚われていた他の者も気を取り直して動き出す。


「てめーら何ぼーっとしてんだ! とっととこの狂った野郎を捕まえろ!」


幹部の一人が発破をかける。



その場にいた8人の組員が○ンパンマンに向かっていく。


「○ーンパーンチ」


アニメと全く同じ声で右手を前に出して○ンパンマンが向かってきた8人の方に向かっていく。


○ンパンマンと8人が近づいた瞬間、そこで見ていた誰もが把握できないほどの速さで○ンパンマンが動いて8人にそれぞれ当身を打ち、すぐに○ンパンマンが右手を出した姿勢に戻った時には8人がすごい速度で吹っ飛んで壁に当たった。


周りからは○ンパンマンの「○ンパンチ」で8人が吹っ飛んだようにしか見えなかった。



あまりに現実離れした光景に、先ほど発破をかけたそれなりに場数を踏んできた幹部も唖然として思考を停止した。



村上家の内紛を嗅ぎつけ、うまく自分たちの利益に結び付けるような才覚を示した沼井組の組長は、現実主義者だけに目の前の訳が分からない状況にキレて、


「何なんだ一体! もうなんでもいい! こいつを殺せ!!」


と叫んだ。



竹溝組の襲撃に備えて拳銃や短刀を所持していた者はそれを取り出し、4階から駆けつけた者の中には日本刀を持っていた者もいて、それぞれ○ンパンマンに襲い掛かろうとする。


……が○ンパンマンは、襲い掛かろうとしていた者たちの目の前から消えた。



「○ーンパーンチ」


また○ンパンマンの声が、4階から上がってきた者たちの後ろから聞こえてきて、上がってきた10人が吹き飛ぶ。


恐慌にかられた組員が○ンパンマンの方に向けて発砲する。


が、その時には既に○ンパンマンが消えている。


「○ーンパーンチ」


今度は発砲した組員の後ろに○ンパンマンが現れ、その組員を吹き飛ばし、吹き飛ばされた軌道上にいた2人を巻き込んで壁まで飛んでいく。



目の前に突然現れた悪夢に組長は本格的にキレて、


「殺せ! 殺せ! とにかくこいつを殺さんかぁぁぁぁ!!!」


と血管が浮き出るほどに顔を赤くして叫んだ。



「○ーンパーンチ」


「○ーンパーンチ」


「○ーンパーンチ」


全く調子の変わらないその声が響くたびに、組員が数人まとめて吹き飛んでいく。



そして幹部5人と組長だけが残された時、○ンパンマンが突然5階のフロアから消える。


何が起きたのかわからずに6人がキョロキョロしていると、下の階からドーンと響く音が何度か聞こえてくる。


4回目にドーンとなった後、急に静かになり、その数秒後に5階のフロアの入り口から、


「悪い奴等は許さないぞー」


と○ンパンマンの声が聞こえてきた。



そこに立っていた○ンパンマンがゆっくりと幹部の一人の前まで歩いてくる。


その幹部はすっかりおびえて逃げようとするが、○ンパンマンに追いつかれ、


「○ーンパーンチ」


と、吹っ飛ばされ、地面に叩きつけられるようにバウンドしてピクピクと痙攣した。



残った幹部のうち2人が組長の前を守り、2人が5階から脱出を図ろうとするが、脱出を図ろうとした1人の目の前に○ンパンマンが現れ、


「○ーンパーンチ」


とまた地面に叩きつけられるようにバウンドして先ほどの幹部と同じように痙攣した。



脱出を図ろうとしたもう一人の幹部がヤケになって○ンパンマンに殴りかかろうとするが、


「○ーンパーンチ」


とまた地面に叩きつけられるようにバウンドしてもう一人の脱出を図ろうとした幹部の上に重なって痙攣した。



○ンパンマンは組長とその前にいる幹部2人の方にゆっくりと振り向き、そしてゆっくりと歩いて行った。


幹部の一人が懐にいれていた拳銃を取り出そうとする。


が、その幹部が懐に手を入れた瞬間、その前に○ンパンマンが現れ、


「○ーンパーンチ」


とその幹部は吹き飛ばされ、先ほど重なった幹部の上にまた乗っかって痙攣した。



最後に残った幹部、最初に発破をかけた幹部は組長の前に立ちはだかって○ンパンマンを睨みつけるが、その横に瞬時に移動した○ンパンマンに、


「○ーンパーンチ」


と吹き飛ばされ、また重なっている幹部の上に乗っかって痙攣した。



一人残った組長は目の前に悠然と立つ○ンパンマンに震えながら、


「お前、一体何なんだ! 何が目的だ!!」


と叫ぶ。



○ンパンマンは、


「僕は正義の味方、○ンパンマン! 悪い奴等は許さないぞー」


と今日一番の長台詞を吐いて、最後の○ンパンチを組長に決めた。




○ンパンマンは38人の組員を手早く武装解除して縛り上げた。


それから背中のリュックサックからロープと紙とガムテープを取り出し、組長と幹部5人をパンツ一丁にして背中にガムテープで一枚ずつ持ってきた紙を貼り付け、ロープで縛り上げた上で5階の窓から順番に吊り下げていった。




○ンパンマンに扮していた竜心は元の格好に着替えて自転車を置いているところに戻った。


それから沼井組の本拠地だったビルの方に振り返った。




そこには「ご」「め」「ん」「な」「さ」「い」と一枚ずつ貼り紙されたパンツ一丁のオッサン6人がぶら下がっていた。

今回ワザと書いていない部分は後日談として次話で書きます~


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