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ゴッドレス・ワールズ・ファンタジア  作者: 眞三
第5章 バルバロンの闇と英雄の卵たち
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106.ローズ覚醒

いらっしゃいませ!


では、ごゆっくりどうぞ

 ローズの頭の中では案の定、走馬灯が再生されていた。が、彼女はそれには意識を向けず、動かなくなった肉体から離れない様に必死になってしがみつく。手足の先にまだ感覚を覚え、無目的にカリカリと動かし、やっとの事で頭をゴロンと動かす。顔面全てが生温かな鉄の味に覆われ、もはや呼吸は不可能だった。視界も光と闇が交互に移されるだけで、気を抜くと走馬灯に意識が引き戻される。


「ふざけるな!!」ローズは頭の中で叫び、どうにか立ち上がろうと足掻く。どんな戦いの中でも拷問の最中でも彼女は諦めず、自我を保った。そんな彼女の気付けになったのはアリシアの存在であった。


 最初に会った時、彼女は名も知らぬ小娘をただひたすらに拷問した。直ぐに吐くだろうと高を括り、見下しながらいたぶった。が、彼女は一向に口を割らなかった。自分が初めて拷問された時に口を割った『棘蛇の腹踊り』を施したが、それでも割らず、ローズの心中で何かが音を立てた。


 初めて彼女と戦った時、すでにアリシアは虫の息に等しく、瞬殺する事も出来た。が、ローズは戦いの中で彼女と語り合いたいと欲を出し、手加減をして戦った。が、まんまと彼女の術中にはまり片目を抉られ、戦闘不能に追い込まれるだけでなく情けを掛けられ、更にアリシアの芯の強さを目の当たりにしたのであった。それによりローズは今迄の自分の生き方を否定され、弱さを叩きつけられ絶望した。


 その日から彼女はアリシアを超える事を目標にここまで戦い続けて来たのだった。どんなに辛い目に遭っても拷問されても、彼女は折れず、ここまで来たのであった。


「こんな所では終れない!!」ローズは何とか魔力を練り、心臓に雷魔法を注入し、無理やり動かそうと試みる。が、この心臓は拷問の際、幾度も止まっては無理やり動かすしを繰り返し、その負担は凄まじく、少しの電気刺激では動く気配を見せなかった。


「諦めて堪るか!!」出血多量のため脳が死ぬまであと数分。彼女に残されたチャンスは殆ど残ってはいなかった。


そこで指先に何かがコツンと当たる。それは新型のエレメンタルブースターであった。その僅かな手応えだけで自分が頭に入れた小筒の情報を思い出し、最後のチャンスはこれしかないと考える。


が、そこでアリシアの声が耳に響く。


「そんな道具を使ってまで生き延びたいの? 力が欲しいの?」ローズを煽る様に耳に響き、心と指先が戸惑う。


「これを使ったら最後……永遠にあたしを超える事は出来ないよ? それでもいいの?」


「……」ローズの指が動きを止め、足掻くのを諦めた様に心臓へ電流を送り込むのを止める。


 すると彼女の方へ何者かがツカツカと歩み寄る。その者はアルバス博士であった。彼はにんまりと笑みを浮かべながら彼女を見下ろし、転がったエレメンタルブースターを拾い上げる。


「君は元黒勇隊のローズ・シェーバーだね。城の地下で拷問され、生命力も体力も底を付いていると聞いたが、大したモノだ。そういえば量産型ウィリアムを2体同時に撃破したとも聞いた。クラス4でも手を焼く相手を……クラス3とは思えない芸当だ。ここで死ぬには惜しい、そう思うだろ?」彼はローズがまだ足掻いている事を見透かしていた。「君ならクラス4になり、命を拾えるだけの素養があるだろう。手を貸してあげよう。その代りに、君の戦闘データを諸々頂こうと思う。魔力循環と闘志の関係性について論文を書き、次の開発の糧にしたいのだ。いいだろう? よし、決まりだ!」と、アルバスはエレメンタルブースターのスイッチに指を置き、彼女の胸目掛けて突き出す。


「…………」その時、雷光がチラリと瞬き、ローズの口がもぞもぞと動く。


「何かな?」ブースターを突き刺す手を止め、耳を傾ける。



「ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」



 次の瞬間、ローズの身体が蒼電に包まれ、心臓が力強く鼓動を再開し、その音は周囲を震わせる。折れた骨、千切れた筋肉、潰れた内臓は電磁力によって接ぎ、活性化して再生する。大量に失われた血液の代わりに電流が全身に生きる為の栄養を送る。目の有無関係なく目が白く光り輝く。


「これが……雷使いの覚醒……か……ブースターを使わずに?」アルバスは狼狽しながら後退し、壁を背に震える。


 ローズはアルバスに近づき、ブースターを奪い取ると握る潰す。


「勝手に話を進めるんじゃないよ……」ローズには相手が何者か分かっておらず、この研究所の主とは露とも思っていなかった。それよりも彼女は標的へ向かって身体を向け、落雷の音と同時にその場から消え失せる。


 その標的であるカーラがローズの雷を認識する前に顔面に稲妻拳を喰らう。背後へ吹き飛びながらもローズは掴んだ胸倉を離さずに彼女の顔面、胸、腹を雷槍で撃ち抜く。あまりの衝撃に掴んだ胸倉が破け、カーラは向こう側の壁へ吹き飛ばされ、突き破り、向こう側の壁に叩き付けられた。その間、彼女の催眠が解かれ、気絶し、心停止し、纏わりついた雷によって心肺蘇生され、激痛によって目を覚ます。


「っがはっ!!」砕けた胸を押さえながら未だ噛みつき追い縋る稲妻を忌々しそうに掃う。あまりの衝撃に何が起こったのかわからず、自分が今迄何をしていたのかも理解できなかった。催眠状態中の記憶は無かったが、記憶が飛んだのは眼前の雷魔人のせいだと思い込み、力強く立ち上がる。


「なんだ? 研究所にはこんな化け物まで飼っているのか? 実験体だろうが何だろうが上等じゃないか!!」カーラは一瞬で闘志と共に戦闘準備を完了させ、眼前の雷魔人へと飛びかかった。


 ローズは最早思考を制御できず、闘志と今迄の鬱憤を爆発させ、落雷の様な咆哮と共に飛びかかる。これはクラス4へ覚醒したての雷使いの特徴であった。脳内で電気信号が暴走し、思考が回らなくなるのであった。


 凄まじい風と雷が研究所最深部の廊下で激突し、壁と天井が粉々に吹き飛び、二匹の魔人が外へと解き放たれる。研究所上空は一気に暗雲が立ち込め、雷雨が2人の決闘のステージと化す。


 カーラとローズはただただ吼え合い、互いの拳と蹴りが交差した。




 ローズが覚醒する数分前。キャメロンは炎の翼を広げ、兵器格納庫内で舞い踊っていた。彼女に集中したエレメンタルソルジャーらは追い込み漁をするように追い掛け回していた。


 このエレメンタルソルジャーは実験体を中心に特殊装甲を貼り付け、内臓や脳に改造を施され、クラス4のインファイターの戦闘力にまで引き上げられていた。特殊装甲はあらゆる属性を跳ね返し、まさに無敵の兵士団と言う触れ込みでウィルガルムの機甲団へ引き渡される予定であった。何より量産型ウィリアムを作り出すよりもコストが10分の1で抑える事が出来た。クラス2程度の実験体さえ用意できれば、簡単に作り出す事が可能であった。


が、感情を切り取られていた。命令を聞くのみの操り人形と化している為、動きはデクノボウであった。


「堅いだけじゃお話にならないぞ?」キャメロンは余裕の笑みで身を翻し、手足から火を噴き高速でソルジャーへ向かって飛ぶ。直撃と同時に拳を振り抜き、特殊装甲を貫通させて身体を上下に引き裂く。返り血は全て炎で蒸発させ、更に勢いに乗ってもう1体を殴り潰し、床を黒く焦がしながら着地する。


「どうよ、そんな堅い装甲もこの通りよ。だからさ、もう諦めない?」今の一撃で魔力を半分ほど使ってしまい、冷や汗を流す。まだエレメンタルソルジャーは20体近く残っており、これらを全て潰すには魔力だけでなく命も賭けなければならなかった。


 エレメンタルソルジャー達は勿論、あきらめも怯みもせずに彼女を追い掛け、拳を振るう。


「じゃあ、あたしは諦めようかな? せめてエルとローズと合流するまでは!」と、彼女は回れ右をして逃げ出し、扉を蹴り破る。すると眼前には今迄見て来たエレメンタル兵器の数々がずらりと並んでいた。それを見て笑みを零し、両手に新型エレメンタルバルカンを構えて回れ右をする。


「よぉし、ここで試し撃ちさせて貰おうかな!! 気に入った武器だけ、持って帰ってやるよ!!」と、キャメロンは遠慮なしに引き金を引き、火炎バルカンを連射させた。彼女が選んだこのバルカンは貫通力が高く、特殊装甲も同じ個所に直撃すればタダでは済まず、あっという間にソルジャーの半数が穴だらけになり、地面へ声も無く転がった。


「か・い・か・ん!!!」キャメロンは上機嫌な笑みを漏らしながら両脇に抱えたブラスターを乱射させ、残ったソルジャーらを掃討した。

如何でしたか?


次回もお楽しみに

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