75.カーラの物語 Year Two 子供の悪戯
いらっしゃいませ!
では、ごゆっくりどうぞ
次の日の朝、2人は早くにダダック港へと向かった。スワート達はいつもの時間に2人を訪ねたが当然そこにはおらず、書置きを読んでため息を吐いた。
「今日はダメらしいっすよ」メモを読んだトレイは踵を返し、隠れ家を出る。
「じゃあ今日はどうする?」スワートはつまらなさそうに口を尖らせながら問う。
「さぁな~、ロングとスーと一緒に魔法のお勉強とかいいんじゃないっすか? 闇魔法は知らないが、魔力の体内循環とかなら色々と教えられるっすよ?」
「えぇ……それこそつまらないなぁ……なぁ、2人を探さないか? きっと昨日の反乱軍と魔王軍の戦いの手伝いに行ったんだよ! 見物に行こうよ!」
「お前……ま、勉強ばかりは退屈っすね。俺っちもついているし、いくっすか」トレイは考えを巡らせ、止めようとした。が、魔王軍の殆どはスワートの顔を知らず、自ら名乗らなければ問題ないと考えた。更に、自分が付いていれば更に大丈夫だと思い、首を縦に振った。
「そうこなきゃ!!」と、2人はカーラの隠れ家を出て西のチョスコ港方面へと向かった。
昼前に2人はダダック港へ着き、早速普段から国外逃亡の時に協力している貨物船の船長や港の責任者に話を通す。2人は50万ゼルで今回の仕事を頼み、日程を確認する。ビリアルドは1週間後と願っていたが、船長は首を横に振り、早くても2週間後だと口にした。
「そうよね、急に1週間後は無理よね……わかった、余裕のある日お願い。あとはこっちで考えるわ」カーラは淡々と仕事内容を確認し、更に契約書にサインをし、前金で20万ゼルを支払う。
「この大金、ボディヴァ家が用意したのか?」船長が訝し気に問う。
「もちろん」カーラは眉ひとつ動かさずに嘘を吐く。この金は2人のポケットマネーであった。
「そうか、わかった。成功報酬も出来れば当日頂きたい。新しい土地では何かと入用だもんな」と、船長と責任者は顔を見合わせて頷く。
「……ありがとう。絶対に成功させるわよ、この仕事」と、2人は急いで港を後にし、次なる場所へ向かった。
そこはリーアムが仕切っているキャラバンのキャンプ地であった。殆どのメンバーはチョスコやダダックに散って生活をしていたが、未だにここで生活を続ける者らも一定数いた。未だに土地に馴染めないと根を張らず、いつ国を出るか考えていた。そこにはリーアムも2人に呼び出されて来ていた。
「2人がここへ顔を出すのは久々だな」
「そうね、今日は仕事の為にお願いをしに来たの」カーラは彼に今回の仕事内容と逃走プランを話した。トニーは彼女の話を誰かが盗み聞きしていないかだけ警戒し、周囲を見張っていた。
「成る程……あいつらも覚悟を決めたか。だが、ボディヴァの親父はまだ逃げる気がないみたいだが……? 逃走するも心中するも、その親父の言葉ひとつだろ?」リーアムは葉巻を咥えながら静かに問う。
「あの男爵が何とか説得する。あたし達の仕事は、無事彼らの家族を国の向こう側へ逃がす事……西大陸のパレリアが良いと思うんだけど、どうかな?」
「西大陸は戦争がひと段落したんだったな。向こうには知り合いが多くいる。で、1か月後まで持つのか?」
「で、お願いをしに来たのよ。その反乱軍の家族たちをここに匿ってくれないかな?」
「人数は?」
「24家族。かなり多いけど、うちらも大所帯でキャンプをした事は……」
「2週間も24家族を匿うのは無理だな。養えないって訳ではなく、魔王軍に見つかる」リーアムは渋そうな表情のまま紫煙を燻らせる。
「だよね……そこを何とか、父さんの知恵で……」カーラは猫なで声で甘える様にねだった。
「お前が甘えてくるのは久々だな。そこまで助けたいのか、ボディヴァ家を」
「あの坊ちゃんには死んで欲しくないんだ。それに、わかるでしょ?」
「魔王軍のいいようにさせたくない、か。わかった、何とかしよう。24家族を6分割して俺の信頼できる筋に預けよう。で、それらしい偽情報を撒いて攪乱する。そうすれば、反乱軍本隊の逃走の手助けにもなるはずだ」リーアムは全て予想していたのか滑らかに口にする。
「流石、父さん。で、あの仕事はこれの後で……」その仕事とはスワート達の事である。
「あぁ、その時にはこちらの用意したツテが来る筈だ」
「ツテ?」
「お前が生まれる前から関わりのあるツテだ」リーアムは楽しそうに微笑んだ。
昼過ぎ、スワートら4人はチョスコ港へ顔を出し、酒場や埠頭などを歩き回っていた。移動中、流石に今日中に戦闘を目撃できる気がしなかったのか、目的を変更して港を散策していた。
「ここら辺はあまり歩き回らない方がいいって言っていたけど……」スワートは少々心配そうにおどおどしていた。
「大丈夫っすよ。それに、夜になれば酒場で面白いもんが見れるっすよ? 船乗りたちの喧嘩は闘技場とはまた違った面白さがあるっすよ」トレイは酒場を指さしながら口にする。
「それまでまだ時間があるよな」ロングは腕時計を見ながらため息を吐く。
「どうやって時間を潰そうか?」スーは周囲を見回し、目を細める。その先には魔王軍の船が泊まっていた。それはダダックからやってきた兵器を運搬してきた船であった。
「あれ、沈めてみる?」
スーが口にすると、ロングが笑みを零し、トレイがため息を吐く。
「いいね、あの2人は反乱軍の為に仕事をしているんだろ? じゃあ、ここで連中を叩ければ、手助けになるな!」ロングは張り切って腕に炎を滲ませる。
「私も水魔法で海底に引き摺り込めるけど、トレイはどうする?」スーも張り切って腕に魔力を込める。
「らしいっすけど……どうするっすか、スワート?」トレイは目を怪しく輝かせながら問うた。
「えっと……じゃあ、やっちゃおうか?」と、口にした瞬間、船上で火の手が上がり、船員が慌てた様に下船する。貨物が丸焦げになる頃、トレイとスーの魔力で船が垂直で沈み、あっという間に海底へ引き摺り込まれる。
「よし、ここを離れようか」4人は遊びでも楽しむ様にニヤニヤしながらその場を離れた。それを目撃している者の気配も知らずに。
カーラとトニーが隠れ家へ戻る頃、4人も戻っていた。4人は自信満々で腕を組んで2人を待っていた為、カーラ達は不気味に思った。
「何か悪戯した?」
「こう言う時って、ロクな事がないんだよな」トニーは4人の得意げな表情を訝し気に睨む。
「実は、2人の仕事の手伝いをして来たんだよねぇ~」ついロングが口にし、堪え切れずに皆が笑う。
「どういう意味?」カーラが問うと、トレイが自慢げに何をやってきたのかを話した。その内容を聞き、彼女は頭を押さえて深くため息を吐いた。
「あんた達……それが手伝いだと本気で思っているの?」彼女は参った様に苦さを堪える様な口元を見せ、スワートの肩に手を置く。
「なんて事をしたんだよ……余計な事をしやがって……」トニーも事の面倒さを察知する。
「どういう事?」スワートは一気に笑みを消して怯え顔になる。
カーラが言うには、この軽率な行動が反乱軍の寿命を縮め、更にはスワート達の居場所を魔王軍へ知らせる切っ掛けになるかもしれないと語った。彼らの言う通りであり、魔王軍はこの事件の犯人を捜す意味で明日にでも反乱軍への締め付け、攻撃を強める事となった。更に、4人の怪しい子供の目撃情報も広まっており、それがファーストシティから消えた魔王の息子らと特徴を一致させられる可能性があった。
「あんたらは大人を甘く見過ぎているわ……」カーラは頭を掻きながら口にし、重そうに唸った。
「ご、ごめんなさい……」スワートは泣きそうになりながら謝り、頭を下げた。
「ったく……」トニーも呆れながらもビリアルドへの手紙を書き始めた。
如何でしたか?
次回もお楽しみに




