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ゴッドレス・ワールズ・ファンタジア  作者: 眞三
第4章 光の討魔団と破壊の巨人
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84.ラスティーの企み

いらっしゃいませ!


では、ごゆっくりどうぞ

 ウォルターが目を覚ましたのは気絶してから3時間後の真夜中。彼は機甲団本部の地下牢に監禁されていた。両手を後ろ手に縛られ、椅子に座らされていた。


「ここは……ぐぅ!!」胃から思い出したかの様な激痛が立上り、身体を丸める。そこへ、彼の目覚めに気が付いた監視が現れ、すぐさまリクトを呼ぶ。


「よぉ、起きたか! 胃の調子はどうだ? ひでぇ破け方をしていたが、ヒールウォーターでなんとか治癒できたはずだ。だが、固形物が食えるようになるのは3日後。酒は1週間後だ」と、にやけた顔を近づける。


「足が上手く動かないな……」彼は足の親指を回し、異変に気が付く。その原因が胃の裏側の背骨のダメージにあると気が付く。


「背骨は折れていないし、魔法医はそこに弱めの回復魔法を施した心配するな。さて!」リクトはウォルターの目の前に椅子を置き、ワザとらしく座る。



「今から拷問が始まる」



 ウォルターは表情を変えずに真っ直ぐ彼の顔を睨む。


 彼は現在の討魔団で司令官であるラスティー、情報部責任者レイ、副指令のエディの隣で働く男である事は調べがついていた。更に、短い間ではあるがラスティーの父親であるジェイソン・ランペリアス2世の下で戦っていた事もあった。


 故に、彼の頭には貴重な情報が詰まっていると、機甲団リーダーのゼオは睨んでいた。


「わかるよ、お前は死んでも吐かない。が、だからと言って何もしない訳にはいかないんだ。俺はお前の味方じゃないしな」と、酒を一口煽る。


 そんな彼をウォルターは黙って睨み付ける。


「怖いねぇ……因みに、拷問官は対眼術用ゴーグルを付けている」


「なんだと? そんな物どうやって?」


「俺じゃない。サブロウのヤツが協力して作らせた。あぁそうだ、あの野郎がスパイだ」


「なぜ、先生が……」自分が気絶する前後の記憶を今になって鮮明に思い出し、初めて動揺する。


「お前が情報を吐く前に、俺が色々と教えてやろうか? あの男は俺が裏切る前からスパイ活動をしていた。あの男、あぁ見えて権力欲が強くてな。本性は腹の黒いクソ野郎だ」リクトは更にウォルターに近づき、表情を覗き込む。


「俺はなぁ……あのコソコソした野郎が許せなかった。魔王軍が来るなり真っ先に国を裏切り、尻尾を振ったあの野郎が……だから俺は堂々と反乱軍を裏切り、あの野郎から国を守る為にこの機甲団に入った」


「だったら何でサブロウ先生の弟子を?」


「あいつが刺客として送り込んできやがったんだよ。その仕返しに集落を燃やしてやったんだ。女子供を襲う様な真似はしていないが……ま、言い訳はしないさ」


「国を守る為に裏切ると言ったが?」


「サブロウは反乱軍鎮圧後に、この国の頂点数パーセントの座に就く約束をしている。もしそんな事になったら、俺が刺し違えてでも殺す。さ、十分話した。俺は失礼するぞ」


「何故、俺に話した?」ウォルターも彼に顔を近づけ、前のめりになる。


「お前は拷問される程度で吐いたり折れる奴じゃないだろ? 敵ながら応援してるぜ。なぁに、ウチの拷問官は、程度は弁えている。間違っても死ぬ様なことにはならないさ」と、リクトは椅子から腰を上げ、地下牢から出ようとする。


 すると、入れ替えで拷問官の代りにマスクから蒸気を上げるエンジャが入ってくる。両腕は赤々と燃え盛り、疼くように震えていた。


「ヨフカシシテイテ、イイコトモアルモンダナ」


「うわぁ……加減知らずな奴が来やがった……」リクトは心底ウォルターを心配しながらも地下牢の扉を閉じる。すると同時に骨が砕け、肉が焼ける音が響いた。




 地下牢の真上に位置する診療室。


真夜中になっても、エレンはカルテから目を離さず、ペンを走らせ続け、持参した特製ヒールウォーターの水筒に薬草を混ぜ合わせ、魔力を注ぎ込む。


 そこへ部下から明日以降のスケジュールを聞いて命令を出し終えたケンジが戻ってくる。


「まだ起きていたのですか。もう休まれては?」彼はエレンのセラピーを受けたためか、体力満タンでリフレッシュしていた。


「いえ、肝心のアスカさんを助ける準備をしなくてはいけませんので」


「彼女はどんな容態なんだ?」心配そうにアスカの方を見ながら眉を下げる。


「私の施した特製の回復魔法で落ち着いてはいますが……」と、話しにくそうに口を歪める。


 彼女は言い辛そうに、もう以前のアスカには戻れないと告げた。


 アスカは今迄、壊れてしまった自分自身の記憶を消し、ロザリアと言う自分の理想とする人間として第二の人生を歩んだ。これはただ単に現実から逃避するだけでなく、自分の命を守る為の自己防衛本能であるとエレンは語った。


 しかし、アスカはヤオガミに戻り、ケンジと再会した事により記憶が戻り、彼女の心をズタズタにした出来事まで思い出してしまい、再び心が引き裂かれてしまったのであった。


「俺の、せいなのか?」ケンジは再び表情を青くさせ、力なく椅子に座り込む。


「いえ、セラピーの時に話したでしょう? まず、自分を責めるのはやめてください」


 アスカを救う為、彼女自身が封じ込めたロザリアを再び目覚めさせる必要があった。


「それでどうする気だ? アスカはまた眠ってしまうのか?!」


「いえ……以前、私はアスカさんの心を癒すためにロザリアさんの心に回復魔法を宿し、ふたつの心をひとつに融合させる事を試みました。最初は成功したと思いましたが、後のセラピーでアスカさんはロザリアさんの影に隠れただけだとわかりました。それから、たまに顔を出すアスカさんのセラピーを行いましたが……彼女の記憶は一部消えている為、それは殆ど敵いませんでした。ですが、これはいい機会です」


「何がいい機会だ! アスカはもう以前の彼女には戻れないんだろう?!」


「はい。ですが、アスカさんを『自分が成りたい理想の自分』に生まれ変わらせる事ができるかもしれません! その為にも、ロザリアさんの力が必要なんです」


「一体、どうやって助ける気なんだ?」ケンジは声を震わせながら問う。


「以前失敗した治療法を試みます。今度こそ成功させます! 決して失敗はしません! その為にも!」と、調合を終えたヒールウォーターの色を見て頷く。


「その為にも?」


 それに返答する前にエレンはヒールウォーターを一気に飲み干し、自分用に用意して貰ったベッドに横になる。


「今夜は寝ます! 戦いは明日です! おやすみなさい!」エレンは数瞬で寝息を立てはじめた。それに反応する様に、アスカもやっと安心した様に寝息を立てはじめる。


「今頼れるのは貴女だけだ……お願いします」ケンジは心の底から頭を下げた。




 ところ変わってヤオガミ国から遠く離れたイモホップ国海岸沿い。そこには一晩中奔り通していたジェットボートが煙を上げて停まっていた。


「あ~あ、エンジンが焼けちまったか? こりゃあ……」修理に甲板に出たニックがこの世の終わりの様な声とため息を漏らす。


「って事は、しばらく航海は中止って事? 嬉しいやら悲しいやらだね……」甲板を光で照らすアリシアが複雑そうに顔を歪める。彼女はこの長い航海で完全に船酔い地獄を味わい、参っていた。


「エンジンを動かさなくても、俺が後部から炎を出してジェット代わりに……」ヴレイズが余裕そうに腕から炎を滲ませ、首を傾げる。


「俺の船に無茶させるな! お前にそれが出来ても、船を無理に動かす事になるんだから、ヤオガミに着く頃にはバラバラになっちまう! 1日だけ時間をくれよ!」


 すると、船内でヤオガミ首都の地図を眺めていたラスティーが顔を出す。


「ダメだ。明後日には作戦決行の日だ。それまでに到着し、目標とコンタクトを取らなくては、全ての作戦が台無しになる」


「なんだよ、その作戦って?! なんでそんなギリギリなんだ?」嘆くようにニックがしゃがみ込む。


「ギリギリな理由はスパイを欺く為。そしてその作戦が上手くいけば、このオンボロ船とオサラバできる」ラスティーは煙草の煙を燻らせながらニヤリと笑った。


「……オンボロ船……? おい、俺の相棒がオンボロだと? もう一度行ってみろコラぁ!!」と、ニックは彼に掴みかかる勢いで近づき、ヴレイズに止められる。ニックはこの数日間ずっと船の操縦で疲労が溜まっており、イラついていた。


「悪い悪い。俺たちの作戦、目的を話す時が来たな」


「そうそう、結局何をしに行くの? エレン達の援護ぐらいしか聞いてないけど?」アリシアは眉を顰めながら問うた。



「魔王軍の頭脳を頂きに行く」



 ラスティーは自分の頭を指さしながら得意げに笑った。


「ずのう? それと俺の船と何の関係があるんだ?」ニックは未だ怒りを隠せない顔でラスティーに近づく。


 ラスティーは笑いながら彼に耳打ちをし、煙草の煙を吐いた。


すると、ニックは勢いよく後退りし、海に落ちそうになる。


「やだ……やだやだやだ、絶対やぁぁぁだ!!!」

如何でしたか?


次回もお楽しみに!

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