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ゴッドレス・ワールズ・ファンタジア  作者: 眞三
第二章 炎の旅人と風の討魔団
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75.氷との戦い 前篇

いらっしゃいませ!


では、ごゆっくりどうぞ!

 2人はしばらく、城下町の建物を盾にしながらフィッシャーフライ城へと進んでいく。城へ近づく度に吹雪が勢いを増し、矢の様に降り注ぐ。


「てぇかさ! なんでヴレイズは寒そうじゃないの?! なんかズルくない?!」余りの寒さに腹を立て、八つ当たりを始めるフレイン。


「いや、寒いよ。でも、寒がっても事態は好転しないからな。砂漠を旅した時、嫌と言う程味わったからな……」と、一年前のティラミ砂漠の事を思い出す。彼はその時『熱い!』を連呼してボロボロになり、仲間に迷惑をかけるだけでなく、仕舞には力尽きたのであった。その時の反省を生かし、このような厳しい環境にきても準備を怠らず、弱音を吐かない様に心がけていた。


「でも、寒いものは寒いからなぁ……」フレインは二の腕を摩り、服の中で炎を炊いて何とか寒さに負けぬように身体を温める。


「俺は寒さに強いのかもな……砂漠を旅した時も、極寒の夜は快適に歩けたしな」


「暑さに弱い炎使いってどうなの?」


「寒さに弱い炎使いってのもどうなんだ?」ヴレイズは挑発を返す様に口にし、面白そうに笑った。


「確かに、笑えるね。しっかし、鬱陶しい雪だこと!! 頭来るわ!!」と、天に向かって炎を噴かせる。


 たとえ炎で雪を防いでも、溶かす事が出来ず、身体に纏わりつき体力を徐々に奪っていく。


「……この雪の謎を解かない限り、勝てない気がするなぁ……」手の上の雪を注意深く観察し、悩む様に唸る。


「大丈夫! あたしの予想では、魔力ばかりにかまかけて、接近戦は苦手な魔術師タイプと見た! 懐に潜り込んで一発入れれば勝てるよ!」どんな根拠があるのか、フレインは自信満々に身体を動かしながら、身体に纏わりつく雪を払い落とす。


「……だけど、六魔道団って賢者に匹敵する程の実力を持つんだろ? 俺、2人の賢者と戦ったけど、2人とも体術が得意だったような……」風の賢者ブリザルドと死闘を繰り広げ、炎の賢者ガイゼルと手合わせをしたヴレイズだからこそ、氷帝の実力は侮るべきではないと考えていた。


「でも、今のヴレイズなら余裕でしょ? 2人で行けば、怖いものなしだよ!」彼の顔を見て、不敵に笑いながらズイズイと進んでいくフレイン。


「……どうかなぁ……」自分の強さにイマイチ自信の持てないヴレイズは、不安な顔でフレインの後ろをついていった。


 



 そして夕日が傾く頃、ついにフィッシャーフライ城前まで辿り着く。激しい吹雪はここに来て弱まり、雪が綿毛の様に舞っていた。


「綺麗な橋がかかってるね~」と、クリスタルの様に輝く氷の橋を軽く叩く。


「この国を見て驚く必要はないけど……城を丸ごと氷漬けか……」眼前の城を目の当たりにして口笛を吹く。フィッシャーフライ城は分厚い氷に覆われ、元の城とは全く違う造形になっていた。


「この氷も溶けないね……面白いじゃん」


「俺は怖いな……」


 そんな2人を前にして城門がゆっくりと開き、不気味な音を立てる。


「あたし達が来ることを知ってたみたいね……」


「ここら辺は氷帝のテリトリーだから、気配を感じるんだろ?」と、2人は招かれるままに門を潜る。


すると、帰り路を塞ぐ様に門が勢いよく締まる。


「……面白いじゃん」フレインは瞳に炎を揺らめかせ、指の骨を鳴らした。


「ま、風が入ってこなくていいな」


 彼が言う通り、城内は無風で、壁かけ松明に冷気を放つ青い炎がゆっくりと燃えていた。


 しばらく2人は城内を歩き、罠がないか注意深く探索しながら慎重に進んだ。そのついでにヴレイズは回復剤を準備し、いつ重傷を負っても素早く対応できるように懐に忍ばせた。


「目立つトラップは無いみたいね。アレなんか露骨な罠に見えるけど?」と、天井の鋭いシャンデリアを指さす。インテリアとしてみるならクリスタルで煌びやかに飾られた豪華な一品であったが、罠と見るならこれ以上に殺伐とした罠も無かった。


「確かに落ちて来たらヤバそうだな」


 そしてついに、ウルスラの待つ玉座へとたどり着く。


 しかし、そこに人影はなく、気配も無かった。


「どこかに隠れているの? 不意打ちを狙うなんて、大した奴じゃないね」フレインは炎牙龍拳の構えを取り、いつも以上に目付きを鋭くさせる。


「魔力も感じない……まさか不在なのか?」ヴレイズも警戒しながらも体内の魔力循環を速め、いつでもクラス3.5を発動できるように用意する。


 しばらく2人が玉座の間で戦闘態勢のまま構えていると、別の扉がゆっくりと開き、そこから料理の乗った膳を持ったウルスラが現れる。



「あ、やっと来た」



 ウルスラはヴレイズ達を見るや、少々気の抜けた声を出しながら近場のテーブル席に座る。


「……あんたが氷帝ウルスラ?」目を丸くしてフレインが首を傾げる。


「ちょっと待っててくれるかしら? 今、夕食時でしょ。あんた達があまりにも遅いからさ……」と、寒々とした玉座で湯気の立った夕食を食べ始めるウルスラ。


「それ、自分で用意したの?」フレインは興味あり気に問うた。


「そうよ。この城を探索したならわかるでしょうけど、ここには兵もメイドもいないから……」と、皿の上の魚のクリーム煮を上品に食べ始める。


「自炊する女帝か……」


「で? 何の用? 見た感じだと、私と戦いに来たって感じだけど……私を倒してどうするの?」


「そんなの、知れた事! あんたを倒して、この国の雪を全部溶かすのよ!!」本来の目的はタダ戦いたいだけだったが、道中の雪に散々苦しめられた故、目的が彼女の中で変わっていた。


「……まぁ、そうだな……」複雑な顔でヴレイズが頷く。


 彼が見る限り、国民はこのままでも問題ないような生活をしていた。ギオスの町だけなのだろうが、万が一氷帝を倒し、この国の氷を取り除いても、余計な事かもしれないと考えていた。


「それが、あなた達クラス3に出来るのかしら? この前来たのは炎のクラス4だったけど、相手にならなかったわ」2人には目もくれず、料理を楽しむウルスラ。ミニボトルワインを手に取り、指を鳴らすと同時に瓶の口がキンッという音と共にスッパリと切れる。いつの間にか氷のグラスを作りだし、注ぐ。


「相手にならないかどうか、試してみる?」フレインは全身から炎を滲みだし、激しく睨み付ける。


「……そうねぇ……ま、試すだけならいいかな。余興にはいいかも」と、グラス片手に玉座へ上がり、優雅に座って白ワインを一口飲む。


「本当に余裕ね。頭来るわ……」と、フレインは額に血管を浮き上げた。


 しかし彼女のオーラに2人は圧倒され、動けずにいた。



「さ、踊って見せて」



 ウルスラが手を叩くと、2人の目の前に氷塊が現れる。それが徐々に形作られ、一体の尖った甲冑戦士に姿を変える。目を青く光らせ、口元から冷気を吐き出す。


「なに、コイツ?」氷の戦士を目の前にし、目を震わせるフレイン。


「まさか、ゴーレム?」大地使いが操る泥人形を思い出すヴレイズ。


「アイスソルジャーよ。ロキシー軍団長のナイトメアソルジャーには負けるけど、中々の動きは魅せるわよ?」と、指を鳴らす。


 するとそれを合図に、アイスソルジャーが一足飛びに襲い掛かる。槌の様な腕を振り下ろし、フレインの肩を狙う。


「いきなりあたし? 気が利いてるじゃん!」喜々としてフレインは相手の攻撃を受け流し、炎を纏った拳で叩く。その打撃は氷兵のボディーに皹を入れた。


「ヴレイズは手を出さないで! こいつはあたしがヤる!!」自信満々の顔でフレインは連打を浴びせる。


 見事な造形をしていた氷兵はあっと今にみすぼらしくなり、動きがぎこちなくなる。


 しかし、一瞬で冷気を纏い、あっという間に無傷の状態へ何事もなく回復する。


「なに?!」狼狽するフレイン。


「そいつは粉々に砕かない限り、動き続けるわよ」余裕で脚を組み、ワインを飲むウルスラ。


「そう……粉々にすればいいんだね!」フレインは不敵に笑い、身体全身から真っ赤な灼熱を放つ。そのまま高速で突撃し、アイスソルジャーに殴りかかる。


 今度はアイスソルジャーが彼女の攻撃を受け流し、氷の槌でフレインの脇腹に命中する。


「ぐはっ! こいつ! 学習しているの?」


「そうよ。新しい技を見せればそれだけ、自分の首を絞める事になるわ」ウルスラは勝ち誇った様な笑みを覗かせ、また指を鳴らした。


 すると、アイスソルジャーがもう2体追加され、両腕を鋭く尖らせる。


「フレイン!」ヴレイズが颯爽と彼女の前に立つ。が、それを迷惑がる様にフレインは彼を横に退けた。


「邪魔しないで! こいつらはあたしが、ひとりで倒すから! そして、こいつらが終わったら……」と、フレインは玉座を見上げ、ウルスラに熱い殺気を送った。

如何でしたか?


次回、戦いがヒートアップ!

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