SAVE.105-1C:乙女ゲーム世界のセーブ&ロード⑤
私の、クリス=オブライエンの――或いはクリスティア=フォン=ハウンゼンの――物語はいつもこの場所で終わりを迎える。これからの物語に、彼が生きていく世界の中に、私の居場所はどこにもない。
だって私はこの世界の主人公なのだから。
望む結末を手に入れるまで、セーブとロードを繰り返す狂った存在。
もう何度世界を繰り返したかなんてわからない。それでも、たった一つの目的は果たせた。
それはこの乙女ゲームの世界に隠された『アキト√』から遠ざける事だ。
ミリアがルークとダンテのどちらかが結ばれるとか、シャロンとミリアのどちらかが断罪されるかなんて、私には些細な違いでしか無いんだ。
もしも望んだ目的ではなく、結末を願うとしたら。それはこのまま彼の隣に立って、共に歩んでいく事なのだろう。
だけどそんな幸せな結末を、私が望んで良い筈がない。他でもない私だけは、彼の隣を願ってはいけないんだ。
だから私はこの世界を繰り返す。何度でも何度でも、有りもしない理想を目指して袋小路を走り回る。
――わかっている、これは罰だと。何度やり直しても、何度繰り返しても、終わることのない消えない罪。
だから、繰り返していく。
暖かな光が明日を照らすこの場所から。
後悔に塗れたあの場所に向かって。
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