消えた記憶と愛する人の嘘 91 「カフェでの再会と、謎の糸」
場所がわからなかったが、まいが教えてくれたアプリを起動させ、目的地を検索した。数秒後、画面に目的地が表示され、指示に従って歩き始めた。
歩き進めると、すぐに目的地が見えてきた。扉を開けると、カランカランと鈴の音が響き、店内の客たちが一斉にこちらを振り返った。すぐに目に入ったのは、純一の姿だった。彼もすぐに俺を見つけ、手を上げて合図してきた。
席に着くと、純一は「何飲む?」と聞いてきたので、俺は「ブレンド」と答えた。ウェイトレスに「ブレンド1つ追加で」と伝えると、彼女はおしぼりと水をテーブルに置き、静かに戻って行った。
純一がすぐに話し始めた。「謙、今日はナイス判断だったよ。」
「俺もなんか前と違うって思ったから、適当に誤魔化したけど。」
と、俺が答えると、純一は少し困った顔をした。
「何か思い出したか?」
と聞いてきたので
「全然、まだ何もないよ。」
と、うんざりした表情を見せた。
「そういえば、お前、去年の春そんなに痩せたのか?でも覚えてないもんな。」と続けると、純一は少し黙り込んだ後、
「まいちゃんは知ってるかな?」と言った。
「帰ったら聞いてみるよ。」と、俺が言うと、純一はうなずいてから、突然、真剣な表情になった。
「頼むよ。」
そして、少し間が空いた後、俺は素朴な疑問を口にした。「純一、俺の事故は事件なのか?」
純一は真剣に答えた。「まだわからない。」
「でも、これはマジで信用してくれ。」と、純一は少し強調した。「なんとなく、興味があってな。」と、理由を告げた。
「謙が絡んでるから、それだけだよ。」と、純一が言うと、俺は黙ってうなずいた。
「そっか、ありがとうな。」と、軽く感謝の気持ちを伝えると、純一はあっけらかんと笑った。
「別にたいしたことないさ。」と、素っ気なく言った後、また話題は変わり、くだらない話ばかりが続いた。やがて、純一が何度もまいのことを褒めるので、俺は冗談交じりに言った。「お前には絶対やらんからな。」
純一は大きく笑いながら「そんなこと言うなよ。」と返し、会話を締めくくった。




