表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
80/361

消えた記憶と愛する人の嘘 80 「総務部への案内」



橘と栗原は、豊島総合病院の広々としたロビーにいた。


病院とは思えないほど洗練された空間。

天井は高く、ガラス張りの壁からは自然光が差し込み、明るく開放的な雰囲気を醸し出している。


二人は受付でアポイントメントの確認を済ませ、促されるまま近くのソファに腰を下ろした。

ふかふかとした座り心地の良いソファだったが、これからの会談の内容を考えると、落ち着いてリラックスする気にはなれない。


「……大きな病院ですね」


栗原が周囲を見渡しながらぽつりと呟いた。


「そうだな。思ったより人の出入りも多い」


橘も同じように視線を巡らせる。

受付には次々と人が訪れ、職員と何やらやり取りをしている。

忙しそうだが、受付のスタッフは手際よく対応し、流れるように案内を続けていた。


ふと、エレベーターの方に目を向けると、一人の男性が降りてきた。


スーツ姿の、どこか威厳を感じさせる風格のある男。

彼はまっすぐ受付へ向かい、スタッフと何か話を交わしていた。


すると、受付の女性が彼に何かを伝え、視線をこちらへと向ける。

橘と栗原もそれに気付き、自然と背筋を正した。


次の瞬間——


その男性は、ゆっくりとした足取りでこちらへ歩いてきた。


「お待たせしました。」


低く落ち着いた声が響く。


「豊島総合病院、総務部の課長を務めております、山口と申します。」


名刺を差し出しながら、穏やかな笑みを浮かべている。

一見すると柔和な印象だが、どこか隙のない空気をまとっていた。


橘と栗原も立ち上がり、丁寧に会釈をする。


「お忙しいところ、お時間をいただきありがとうございます。」


橘が代表して挨拶をすると、山口は軽く頷いた。


「いえ、お二人とも遠いところをわざわざありがとうございます。」


「……ここでは何ですから、総務部の会議室でお話ししましょう。」


周囲を気にするようにしながら、山口が提案する。

確かにロビーは開けた空間であり、人の出入りも多い。


「ありがとうございます。」


橘が返答すると、山口は「では、ご案内します」と先導するように歩き出した。


橘と栗原も、それに続く。


重厚な雰囲気を纏う山口の背中を見つめながら、橘は静かに息を整えた。


これからの会話が、どういう展開を迎えるのか——

慎重に進める必要がある。


そう思いながら、二人は病院の奥へと進んでいった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ