消えた記憶と愛する人の嘘 66 「平和な朝の刑事コンビ」
橘、栗原が動き出す。
少しずつそして徐々に明かされていく真実……
新展開、刑事編
謙とまい、これから2人を待ち受ける運命…
2人の歯車は……
「おはようございます……橘さん。」
デスクに座る橘の前に、コーヒー片手に現れたのは後輩刑事の栗原篤志。
「おぅ、篤志、おはよう。」
橘は軽く手を挙げながら、目の前の資料に視線を落としたまま答えた。
「最近、橘さん、何か調べてるんですか?」
「別にな…。」
「いや、なんかいつも1人でコソコソやってますよね。」
篤志の疑わしげな視線に、橘は苦笑する。
「ちゃんと捜査してるから心配すんな。」
「そうじゃなくて、何か違うことに動いてません?」
「そんなことないよ。なんで?」
篤志は腕を組み、少し考え込むように首をかしげた。
「刑事の勘ですよ。」
その一言に、橘は思わず吹き出した。
「お前、朝から冗談よく言うなー。」
肩を揺らして笑いながら、橘は篤志を見やる。
「まだこのフレーズを使うには、10年早いんだよ。」
「先輩、それひどくないですか?」
不満げな顔をしながらも、篤志は口をとがらせて軽くじゃれてくる。
そんな日常のやり取りが、今朝も変わらず続く。
刑事としての厳しい仕事の中でも、橘にとって篤志は気の抜ける可愛い後輩だった。
「橘さん、今日はどうしましょうか?」
篤志がデスクに腰かけながら問いかける。
「そんなの自分で考えろー。」
橘は適当に流しながらも、ふと考えた。せっかくだから、ちょっと付き合わせてみるか――。
「篤志、ちょっと俺に付き合ってくれ。」
「ウィっす。」
篤志は軽く敬礼のポーズをとりながら、すぐに支度を始めた。
2人は署の廊下を並んで歩きながら、篤志が横目で橘を見上げる。
「で、橘さん。どこ行くんですか?」
「病院だ。」
「えっ、どこか悪いんですか?」
篤志が単純に尋ねると、橘は呆れたようにため息をついた。
「お前バカか? 俺が病気で病院行くんだったら、お前を付き合わせるわけないだろ。」
「……確かに。」
篤志は納得しながらも、どこか釈然としない表情を浮かべる。
「刑事の勘、それじゃ泣くぞ。」
橘がニヤリと笑いながら言うと、
篤志は苦笑しつつ「また橘さんの勘ですか」とぼやきながら、2人は病院へと向かった。
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