消えた記憶と愛する人の嘘 64 【静かに熱を帯びていく夜】
唇が触れ合うたびに、互いの体温が少しずつ上がっていくのを感じた。
柔らかく触れるだけだったキスは、次第に深くなり、熱を帯びた吐息が絡み合う。
「まい……」
謙はまいの頬を包み込みながら、唇をわずかに離し、その瞳を見つめた。
彼女の瞳は潤み、揺れながらも確かな思いを秘めている。
「……怖くない?」
そっと囁くと、まいはかすかに首を振り、目を閉じた。
「怖くなんかないよ……ずっと、こうしたかったから」
その言葉が決定的な引き金になった。
謙は再びまいの唇を塞ぎながら、ゆっくりと体を倒していく。
抱きしめる腕に力を込めると、まいの指が謙の背中にしがみついた。
触れ合う肌の熱、重なる鼓動——
理性は、もうどこにも残されていなかった。
謙はまいの首筋に唇を落としながら、彼女の身体を確かめるようにゆっくりと指を滑らせていく。
まいの肩が小さく震え、指先が謙の腕をぎゅっと掴んだ。
「……んっ……」
細い吐息が零れ、謙の胸の奥を甘く刺激する。
彼女の反応ひとつひとつが愛おしく、もっと感じさせたくなる衝動に駆られる。
「まい……」
「……謙……」
まいの声は震えているのに、その瞳は強く謙を求めていた。
静かに衣服が滑り落ち、肌と肌が触れ合う。
鼓動の音が響くほどの静けさの中、互いの存在を確かめるように指が絡まる。
謙はまいをそっと抱きしめ、耳元で囁く。
「……愛してる」
まいの細い腕が強く謙を引き寄せ、彼女もまた、震える声で応えた。
「私も……謙が、好き……」
その瞬間、2人はひとつになった。
まいの身体がかすかに強張り、すぐに甘くとろけるような声が洩れる。
謙はゆっくりと動きながら、まいの表情を確かめるように彼女の胸を優しく撫でた。
「大丈夫……?」
「……うん……もっと、ぎゅってして」
彼女の願いに応えるように、謙はまいの胸を強く激しく撫で回した
重なる熱、深まる快感——
まいの指が謙の背中を掴み、甘く切ない声が夜の静寂に溶けていく。
2人の熱がさらに高まり、互いの名前を何度も呼び合った。
「まい……愛してる……」
「謙……もっと……もっと……」
求め合い、与え合い、激しく、さらに激しく満たされていく感覚——
「謙……好き……もっと……もっと……あぁぁぁ……」
やがて、波のように押し寄せる快楽の頂点が2人を包み込み、まいは切なげに謙の名を呼びながら震えた。
謙もまた、まいの秘密のぬくもりの中に包まれながら、深く息を吐き出す。
静かに、熱が落ち着いていく。
「……まい」
謙がそっと髪を撫でると、まいは幸せそうに微笑みながら、ぎゅっと彼にしがみついた。
「……謙、大好き」
「俺も……」
2人はそのまま静かに寄り添い、互いの温もりを感じながら、ゆっくりと目を閉じた。
夜はまだ、この2人を優しく包み込んでいった




