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消えた記憶と愛する人の嘘 57 【再会の約束】

話に夢中になっているうちに、いつの間にか時間がかなり経っていた。


ふと時計を見た純一が「あれ、もうこんな時間か」と呟く。


「謙、そろそろ帰るわ。長居しすぎちまったな」


彼は申し訳なさそうに笑いながら立ち上がった。


「まだ疲れてるのに、ごめんな」


俺の体を気遣ってくれる言葉に、じんわりと心が温かくなる。


「いや、全然そんなことないよ。むしろ楽しかったし、いろいろ話せて嬉しかった」


素直にそう答えると、純一は安心したように頷いた。


「なら良かった。でもまぁ、無理すんなよ」


そう言うと、純一はポケットからスマホを取り出し、俺に向かって差し出した。


「謙、LINE交換しようぜ。これからもちょくちょく会おう」


「おう」


俺がスマホを取り出そうとすると——


「はいはい、謙のスマホ貸して!」


まいが素早く俺のスマホをひょいっと取り上げ、テキパキと操作し始めた。


「あ、ちょっと待——」


「QRコードでサクッとね!」


俺が言い終わる前に、もうLINEの交換は完了していた。


「……まい、手際よすぎじゃね?」


「こういうのはスピード勝負だからね!」


得意げな顔をしてスマホを返してくるまいを見て、純一は「ははっ」と笑った。


「ありがと、まいちゃん。助かったわ」


「どういたしまして!」


まいがニコッと笑う。


——そのとき、純一が少し真剣な表情になり、俺の肩をポンと叩いた。


「謙、事故のこと、何か思い出したらLINEくれ。あと、不安なことがあったら、いつでも俺を頼れよな」


その言葉に、一瞬胸が詰まった。


「……純一」


俺は言葉に詰まりながらも、心の底から感謝の気持ちを込めて言った。


「ありがとう」


「おう」


純一はきっとむかしと同じように気さくな笑顔でいてくれたが、その瞳には確かに「友達を心配する気持ち」が宿っていた。


こんなふうに気にかけてくれる友達がいる。俺は幸せ者だ。


「まいちゃんも、今日はありがとう。楽しかったよ」


「こちらこそ!」


まいが嬉しそうに答えると、純一はニヤリと笑って言った。


「今度、俺の彼女も誘って、4人で飲もうな」


「えっ、ほんとに!? めっちゃ楽しみ!」


まいは目を輝かせながら手を叩いた。


「もちろん私! 絶対行くからね!」


純一も笑顔で「決まりな!」と親指を立てた。


俺とまいで玄関まで彼を見送り、靴を履いた純一はドアの前で振り返った。


「じゃあ、また連絡するわ。謙、まいちゃん、またな」


「うん、気をつけてね!」


「またな、純一」


「あぁ、そうだまいちゃん、これからも謙の事頼むな。こいつ、わがままだけど、よろしくな」


「はい」


そう言って、純一は軽く手を振り、エレベーターへと向かって行った。


——扉が閉まるのを見届けてから、まいが俺の方を向いて言った。


「……いい友達だね、純一さん」


彼女の声には、心からの温かさが滲んでいた。


「謙のこと、本当に心配してたね」


俺は、ゆっくりと息を吐きながら呟いた。


「……あぁ、そうだな。純一は、昔もこんなふうに俺のことを気にかけてくれてたんだろうな」


思い出せなくても、確信があった。


「……大切にしないとな」


ポツリとそう呟くと、まいが「うん」と頷いて、優しく微笑んだ。






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