消えた記憶と愛する人の嘘 52 【玄関先でのちょっとした出来事】
ごめんなさい。間違えてしまいました。
こちらになります
茅ヶ崎渚
「ピンポーン」
ドアのチャイムが鳴ると、まいは「ハァーイ!」と元気よく返事をしながら、急いで玄関へ向かった。
俺はソファに座ったまま、その様子をぼんやりと眺める。
まいは、まるで小さな子供のように軽やかな足取りでドアの前に立つと、少し背筋を伸ばし、
一呼吸おいてから扉を開けた。
目の前に立っていたのは、昨日会った刑事、
橘純一。
昨日の彼は刑事としての威厳があったが、今日は私服姿で、どこか柔らかい雰囲気をまとっている。
そのせいか、まいの中ではすっかり「謙の友達」という意識しかなく、改めて彼の顔を見た瞬間、
あ、すごくいい感じの人だな と、第一印象を決定づけた。
「改めまして、橘です。今日はお邪魔します」
橘はにこやかに挨拶をし、軽く頭を下げる。
その礼儀正しい態度に、まいは 素敵なお友達だ と感心した。
だが——その直後、思いもよらぬ一言が飛び出した。
「相変わらず、奥さん綺麗ですね」
一瞬、まいの思考がフリーズした。
「えっ…?」
驚きと戸惑いが入り混じる中、じわじわと顔が熱くなっていくのを感じる。
そして、すぐにそれは 猛烈な照れ へと変わり、まいのテンションが一気に跳ね上がった。
「な、何言ってるんですか〜!!」
普段ならもう少し冷静に返せたはずなのに、
動揺しすぎて、声が裏返るという失態を犯してしまう。
「そんなことないですよ〜!」
顔を真っ赤にしながら、両手をブンブン振り、否定するまい。
けれど、嬉しさは隠しきれず、内心では (えっ、やっぱりそう見える? もしかして謙もそう思ってたり…?) と、
完全にテンションが爆上がりしていた。
そして、いてもたってもいられず、慌てて俺を呼ぶ。
「謙! 橘さん、いらっしゃいましたよ〜!!」
その呼びかけの声は、無駄に弾んでいて、どこかうわついている。
俺はリビングでその一部始終を聞いていた。
そして、まいの様子を思い浮かべながら、苦笑いを浮かべる。
——まい、完全に舞い上がってるな。
扉の向こうで、赤くなった顔を隠しながらそわそわしている彼女の姿が、目に浮かぶようだった。
あとがき
まいのキャラはいかがですか?
また、よかったらしばらくの時間お付き合いよろしくお願いいたします。
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