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消えた記憶と愛する人の嘘 51 【訪問者と、そわそわするまい】


まいはキッチンで、忙しなくティーカップを並べていた。

白い陶器のカップに、可愛らしい花模様があしらわれている。

それを、テーブルの中央に丁寧に配置しながら、紅茶の準備を進めていた。


「よし、完璧!」


まいは満足そうに頷くと、次にお菓子の箱を開け、綺麗にお皿へと盛りつける。

和菓子と洋菓子の両方をバランスよく並べ、彩りにも気を遣っているのが伝わってくる。

その姿はまるで、お客さんを迎える新妻のようだった。


俺はソファに座りながら、その様子を何気なく眺めていた。

まいは、きっと橘に「いい奥さん」だと思われたいのだろう。

わかりやすいくらいに張り切っているのが、なんとも微笑ましい。


そんなことを考えていると——


「ピンポーン」


部屋にチャイムの音が響いた。

まいはハッとして、すぐにインターホンへと駆け寄る。


「はい!」


元気よく応じると、モニターには橘の顔が映っていた。

彼は軽く会釈をしてから、


「橘です」


と、落ち着いた声で名乗った。


「どうぞ!」


まいは勢いよくセキュリティのロックを解除する。


その瞬間、まいはパッと振り返り、


「謙、来たよ〜!」


と、まるで子供のように大きな声で報告してきた。


俺は軽く苦笑いを浮かべながら、


「……いや、聞こえてるよ」


と返すが、まいは興奮気味で全く落ち着く気配がない。


「だって、謙の友達初めてなんだもん!」


なんだか妙にそわそわしながら、服の裾を整えたり、髪を指でくるくるといじったりしている。

いつものクールな雰囲気はどこへやら、完全に落ち着きを失っているのが丸わかりだった。


「まい、少し落ち着けって」


そう言ってみるものの、彼女は「無理!」ときっぱり言い切る。


俺はそんなまいの様子がおかしくて、思わず吹き出してしまった。

こういうところ、ほんとに可愛いよな——なんて思いながら。




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