消えた記憶と愛する人の嘘 45 【何を食べようか?】
「さて、謙、何食べに行く?」
まいが明るい声で問いかけた。さっきまでのしっとりした雰囲気はどこへやら、いつもの調子に戻っている。
「いや、さっきまでのムードどこ行ったんだよ」
思わずツッコむと、まいは「だって、お腹すいたんだもん!」と、おどけながら笑う。
たぶん、俺が無事に帰ってきたことに、彼女なりにホッとしてるんだろう。
「よし、じゃあ外で食べよう。どうせならデパートのレストラン街とか行く?」
「賛成!でも何食べる?」
「うーん……寿司とか?」
「いいね!……って言いたいけど、イタリアンも捨てがたいなぁ」
「パスタとかピザか。確かに、久しぶりに食べたいかもな」
「あとね、オムライスとかもいいなぁ。デミグラスソースたっぷりのふわふわのやつ!」
「それなら洋食系もありか……」
「でもさ、がっつりいくなら中華もいいよね?餃子とか麻婆豆腐とか」
「いや、それ言ったら焼肉もありじゃないか?」
「それな!」
「結局、何でもアリじゃん……」
お互いに候補を挙げるたびに「それもいいな」と意見が揺らぎ、まったく決まらない。
それでも、こうしてあれこれ話しているのが楽しくて、俺たちは笑い合いながら歩いていく。
「よし、こうなったら実際に行って、目についた店にしよう!」
「賛成!レストラン街でぐるっと一周して、直感で決めよ!」
そんなこんなで、俺たちは駅のデパートへと向かった。
結局、まいが「やっぱり寿司がいい!」と言い出し、俺たちは寿司屋に決めるのだった。




