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318 【おとぼけ男子VSしかっかり女子グループ】


謙の隣で、純一が少し戸惑いながら携帯を操作していた。


「携帯開いて……謙、これ押せばいいんだよなぁ?」


画面を覗き込みながら尋ねるその声には、少し不安と、どこか子どもみたいな真剣さが滲んでいた。


謙は笑いながら軽く頷く。「多分そうだと思うよ。俺も詳しくはないけど、きっとそれでいけるはず」


「よし、押してみるか……」


純一は恐る恐るそのボタンをタップした。^_^数秒後、画面に変化が現れた。


「おぉ〜……なんか、つながったぞ!」


その瞬間、純一の顔にパッと明るい笑みが浮かぶ。成功したことが純粋に嬉しかったのだろう。


「よし、俺もやってみる」


謙もすぐに操作を始めた。今しがた純一が押した場所を思い出しながら、慎重に指を動かす。


そして次の瞬間──

グループトークの画面に、4人の名前とアイコンが並んだ。まい、香、純一、そして謙。


「……お、できた!」


「できたじゃーん!」

純一が思わず声を上げた。まるで子どもがゲームでハイスコアを出したときのような、ちょっと誇らしげで無邪気な笑顔だった。


謙もつられて笑った。

たかがグループLINE、されどグループLINE。たった一つの繋がりのアイコンが、4人の間に小さなあたたかい絆を可視化してくれている気がした。


どこか不器用で、でも確かなつながりが、そこには確かに生まれていた。


謙はふと、携帯の画面をじっくりと見直した。

そこに表示されていたグループ名に、思わず吹き出しそうになった。


「おとぼけ男子VSしっかり女子グループ」


なんだこの絶妙なネーミングは、と一瞬呆れそうになりながらも、どこかツボに入ってしまった自分がいた。


「おい、見ろよ純一……グループ名、これ……」

謙が画面を見せると、隣にいた純一も目を凝らして内容を確認し、次の瞬間、思わず声を出して笑い出した。


「ははっ!なんだよこれ、めっちゃ当たってるじゃん!」

そう言いながら純一は謙と目を合わせ、笑う。


謙も苦笑しながら、自然と頬が緩んでいくのを感じた。

「まったく……奴ら、鋭いなぁ……」

軽く首を振りながらも、どこか感心せずにはいられなかった。


「でも……間違ってないな、これ」

謙がポツリと呟くと、純一も「確かにな」と深く頷いた。


それはただの冗談めいたグループ名だったかもしれない。

だけど、その言葉の中にはちゃんと彼らの関係性が詰まっていた。

少しおとぼけな男子2人と、しっかり者の女子2人。

笑ってしまうくらい、ちょうど良いバランスで成り立っている――

そんな4人の関係を、画面の文字が物語っていた。


静かに笑いながら、謙はそのグループ名をもう一度見つめ、

「いい名前じゃないか」と心の中で呟いた。



「よし、無事つながったね!」


グループLINEに最初の言葉を打ち込んだのは香だった。


まるで新しい扉が開いたような、そんな小さな始まりの一言。


続けて、まいがすぐにメッセージを送った。

「純一さん、よろしくお願いします!」

文面は丁寧だったけど、画面の向こうにいるまいの笑顔が目に浮かぶようだった。


謙も続いた。

「俺、なんとかなって良かった…」

操作に不安があったせいか、どこかホッとしたような口調で。


すると純一がすかさずこう打ち込んだ。

「てかこのグループ名、誰が考えたの?笑」


その質問に香がすかさず返す。

「まいちゃんと2人で考えたよ〜!どう?気に入った?」


それを見た純一は即答した。

「いや、これ……すごいよ。もうパーフェクトだよ!完全に俺たちのこと見抜いてるよな!笑」


謙も笑いながら指を動かした。

「うん、大正解だと思う(笑)」


まいも楽しげに続けた。

「これしかない感じですよね。香さんと爆笑しながら考えました!」


そこからは、もう会話の流れは止まらなかった。

「このグループで何話すのが正解?」

「謙の料理は期待しない方がいいって話から始めます?」

「いやいや、それなら純一の“とりあえず大量買い”も議題に上げるべき!」

「ちょっと!女子たち、やりたい放題じゃん!」


誰かがふざけたことを書けば、誰かがツッコミ、また誰かがそれに乗っかる。

4人で笑って、いじり合って、そしてちゃんとお互いを大切に思ってるのが言葉の節々から伝わってくる。

たわいのないやり取り。

だけど、それがとびきり心地良かった。


何か特別なことを話しているわけじゃない。

けれど、そこには“特別な空気”があった。

遠く離れていても、スマホの画面越しでも、今だけはしっかりと“ひとつ”に繋がっている――

そんなあたたかな夜………のはずだった



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