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消えた記憶と愛する人の嘘 31 「担当医とナースの違い」



まいのことを考えていると、不意に病院内のスピーカーから放送が流れた。


「午後の検診を始めます。ご準備をお願いします」


時計を見ると、もうそんな時間かと少し驚く。


扉が開き、担当医とナースが入ってきた。


「高木さん、調子はどうですか?」


担当医は、毎回同じフレーズで俺の様子を尋ねる。

事務的で、決まった流れの中で仕事をこなしているような印象だ。


(たまには、違うことを聞いてもいいんじゃないか……)


そんなことを思ってしまう。


もちろん、担当医が悪いわけではない。

むしろ、医者として当然の仕事をしているだけだ。

でも、その 機械的な対応 に、少し物足りなさを感じてしまうのも事実だった。


その点、ナースは違う。


担当医の後ろから俺の顔を覗き込むようにして、ふっと 微笑んだ。


「今日は顔色がいいですね。お昼ご飯、おいしかったですか?」


その言葉に、自然と力が抜ける。


ナースは、俺の様子をちゃんと “人として” 見てくれている。

決められた台詞ではなく、毎回違う言葉で話しかけてくれるのがわかる。


(すごいな……)


改めて思った。


俺は、この病院で勤務していたらしい。

でも、今までは ナースの仕事をこんなふうに意識したことがあっただろうか?


病院での仕事は、ただのルーティーンワークではない。

患者と向き合い、言葉を交わし、その 小さな気遣い ひとつひとつが、

治療の一部になっているのかもしれない。


(これからは、ナースの見方を変えないといけないな)


そう思った。


担当医は変わらず淡々と検診を進め、

必要な確認を終えると、特に雑談もなく出ていった。


ナースは最後まで笑顔で、

「何かあればすぐナースコールを押してくださいね」

と優しく声をかけてくれた。


扉が閉まったあと、俺はふと天井を見上げる。


(尊敬に値する人たちだな……)


そう、心の中で静かに思った。


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