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250 【静寂を裂く異変】


市川は、高木たちの車と適度な距離を保ちながら、穏やかな直線道路を走行していた。見渡す限りの空と、大地を横切る一本道。風景は美しく、どこか穏やかな空気が流れていた。


だが、そんな空気を切り裂くように、背後からエンジンの低く唸る音が近づいてきた。


「……また、バイクだな」


ルームミラーに目をやると、大型バイクが一台、音を響かせながらじわじわと距離を詰めてくるのが見えた。市川は自然な動きでウインカーを出し、車をわずかに左へ寄せながらスピードを緩める。


「抜かせますね」


バイクは市川の車を右からゆっくりと追い抜いていった。すれ違いざま、ライダーは片手を軽く上げて挨拶をする。先ほどのツーリング集団と同じ、礼儀正しい動き。


なんとなく市川の目はそのバイクの後をじっと追っていた。


バイクはそのまま前方へ進み、やがて高木たちの車に接近していく。高木も同じくバイクに道を譲ろうとウインカーを出し、速度を落としながら左へ寄った。


――しかし。


そのバイクは抜かす素振りを見せなかった。


市川の眉がぴくりと動いた。


バイクはまるで吸い寄せられるように、高木たちの車の真横にピタリと並び、一定の速度で併走し始めた。車との距離はほんの数十センチ。尋常ではない近さだ。


「……なんだ?」


バイザー越しで顔は見えないが、明らかに中を覗き込んでいる――まるで確認するかのように、車内をじっと見ているのがわかった。


その瞬間。


「まずい、あのバイク……!」


助手席の飯塚が鋭く声を上げた。


「出せ!市川!急げ!」


と飯塚は叫んだ。


市川は一瞬、緊張したが、アクセルを深く踏み込んだ。エンジンがうなり、車体が前へ飛び出す。


「行きます! 飯塚さん、通報を!」


「すぐに連絡する!」


風景が一変した。


飯塚は窓から車の屋根に赤灯をセットしてけたたましいサイレンが響き渡る


穏やかだったはずの北海道の一本道に、突如として緊張の空気が走り始めた。

不穏な影は、静かに、だが確実に2人の時間へと忍び寄っていた――。



後方から迫るエンジン音に、謙はすぐさま気づいた。

ミラー越しに見えたのは、先ほどとは違う、一台だけの大型バイク。スピードを落とし、左ウインカーを点滅させながら、静かに路肩に寄っていく。


「抜くなら、早く抜け……」


「なにやってるんだぁ」


小さく呟き、ふと右側の窓に目をやる。


――その瞬間、背筋が凍った。


バイクは、抜かすでもなく、ぴたりと横に張り付いていた。距離は異常なまでに近い。


風圧すら感じられるほどの距離に、バイザーの奥の視線が、確実にこちらを捉えていた。


「……なんだ、こいつ……?」


その瞬間、まいも気づいたようで、顔をこちらに向けて、視線がバイクに集中している。


「なんだろうね、なんか怖いね」


まいがそう言った

それを聞いて

とっさに胸騒ぎが走る。


これって、もしかしたら……


次の瞬間――バイクの男が、ポケットに左手を突っ込んだ。


謙が声を発するより早く、男の手から現れたのは――黒いピストル。


「銃……!? 嘘でしょ……っ!」


まいが叫ぶ。

その瞬間、男の左手がためらいなくピストルを持ち直し、銃口を謙の顔めがけて――向けた。



「っ……!」


取り出されたのは、黒い金属の塊。ピストル。

それが、ためらいなくこちらに向けて構えられた。



俺は血の気が引き、心臓が激しく脈打つ。



「くそっ、やばい!!」


叫びと同時に、謙は本能のままに動いた。



銃口が火を噴いた。


――パン! パン!


ガシャン、ガシャン


ガラスが割れる音が耳をつんざいた……


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