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消えた記憶と愛する人の嘘 24 「希望の灯り」
夜の静けさを破るように、病室の扉がそっと開いた。
入ってきたのは、いつものナースだった。
「高木さん、今日はすごく顔色がいいですね」
彼女は笑いながら、カルテを確認しつつ俺の顔を覗き込む。
「彼女さんに、たくさん元気もらったんですか?」
冗談めかした言い方に、俺もつられて微笑んだ。
「そうかもしれませんね」
思わずそう答えたあと、ふと胸の内に芽生えているものに気がついた。
希望——今の俺には、それがある。
「なんか、希望がね」
そう付け加えると、ナースは軽く目を丸くして、すぐにクスッと笑った。
「まあ、ご馳走様です」
冗談ぽくそう言うと、点滴やバイタルのチェックを終え、優しい声で告げる。
「何かあったら、遠慮せずナースコール押してくださいね」
俺は軽く頷く。
「ありがとうございます」
ナースは微笑んだまま部屋を出ていき、再び静寂が戻った。
でも、その静けさは、昨日までの寂しさとは違っていた。
——確かに俺は、元気をもらったのかもしれない。
まいと過ごした時間が、俺に小さな希望を灯してくれた。
そう思うと、自然と口元がほころんだ。




