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226 【笑い合いながら、次の目的地へ】


他愛もない会話が続く


「まい、じゃあ車に戻るか?」


「うん!」


「運転、大丈夫?どうする? 変わるか?」


俺が尋ねると、まいは少し考えてから首を横に振った。


「まだ走りたいから、もう少しだけいいかなぁ?」


「いいに決まってるじゃん!」


まいが楽しそうに運転しているのを見て、俺も自然と笑みがこぼれる。運転が好きなんだろうな。さっきの生き生きしてる姿を見たら、すぐに交代するのももったいない。


「そうしたら、まい、頼むね!」


「まかせて!」


まいは自信たっぷりに胸を張りながら、再びハンドルを握るまねをした。


俺たちは車に戻り、それぞれシートベルトを締める。エンジンをかけると、静かに車が走り出した。


車内に流れる音楽とともに、心地よいエンジン音が響く。外には広大な北海道の景色が広がっている。青空の下、緑が鮮やかに映え、道路の両脇には草原がどこまでも続いていた。


俺は助手席でスマホを開き、札幌までの道のりにある道の駅を検索してみる。


「まい、このまま進むと、すぐに道の駅があるみたいだよ。まずはそこに寄ってみようか?」


「了解! でも、謙、ちゃんと誘導してよね?」


「大丈夫だよ。この道沿いにあるみたいだから、これを見逃したら逆にヤバいぞ?」


「そっか、じゃあきっと大丈夫だね!」


「……でも、まいだから分からないなぁ〜」


俺がからかうように言うと、まいはすぐに反論してきた。


「そんなことないよぉ〜! 私、結構慎重だからね!」


「では、通り過ぎないことを祈ります。」


「何それぇ〜! 全然信じてないじゃん!」


まいは少し頬を膨らませて、横目で俺を睨む。


「そんなことはいいから、はい、前集中なぁ!」


「むぅ〜、謙、そうやってすぐ茶化すぅ〜!」


それでも、まいは笑顔だった。


そんな何気ない会話をしながら、俺たちは道の駅を目指していた。



「きっと、あそこかも」


俺が前方を指さす。


「うん、そうしたら、あそこから入ればいいのかなぁ」


「そうだね。前の車について行けばいいだけだよ」


「うん」


まいはウインカーを出し、慎重に右折のタイミングをうかがう。対向車が途切れた瞬間、スムーズにハンドルを切り、落ち着いた動作で駐車場の入口へと進んでいった。


「まい、停めやすいところでいいよ」


「わかった」


そう返事をしながらも、まいは迷うことなく駐車場の奥へと進んでいく。適当な空きスペースに入れるのかと思いきや、そのまま店舗のすぐ近くまで進み、一番便利そうな場所を選んだ。


「ここにしよっと」


そう言うと、スムーズにハンドルを切り、迷いなく車をバックで駐車スペースに収める。サイドミラーをちらりと確認しながら、完璧な位置にピタリと停めた。


「まい、車庫入れうまいなぁ」


思わず感心して口にすると、まいは得意げに胸を張った。


「これぐらい楽勝だよ!」


当然とばかりのその表情に、俺はちょっと驚いた。普段はどこか天然っぽいところもあるのに、何か今日は違う……


「へぇ…意外とやるなぁ」


「意外は余計!」


まいが少し頬を膨らませる、俺は思わず笑ってしまった。



「まい、ここでの目的は何?」


車を降りながら俺が尋ねると、まいは目を輝かせながら即答した。


「やっぱり、とうもろこしとじゃがバター!あればいいなぁ〜」


「よっしゃ、とりあえず見に行こうか」


「うん!」


まいは勢いよく返事をすると、そのまま俺の腕にしがみついてきた。ほんのり甘えるような仕草で見上げてくるその顔は、何か言いたげだ。


「まいの運転、どうだった?」


「まい、センスあるよ。全く心配してなかった」


俺が素直にそう伝えると、まいは満足そうに微笑んだ。


「ふふっ、もっと運転してあげてもいいからね!謙は助手席でのんびりしてていいよ」


「おっ、それは助かるなぁ」


どうやら、まいは運転が好きらしい。そう思うと、こちらとしても気楽に任せられる。


「じゃあ、もしここにビール売ってたら飲んじゃおうかなぁ〜」


冗談半分で言ってみると、まいはすかさず俺の腕を引っ張りながら鋭い視線を向けてきた。


「ダメ!それは絶対ダメだからねぇ〜!」


「えぇ〜、なんで?」


「それはまいの係だから!謙は札幌まで我慢!」


「え、なんかずるくない?」


「全然!当たり前のことだよぉ〜!」


「謙にはね、まいを無事に札幌まで送り届けるっていう重要な任務があるの!わかった?」


「なんか納得いかないけど…まぁいいか…」


まいの言い分は完全に正論だけど、こう言われるとちょっと悔しい。でも、俺が渋々頷くと、まいは満足げに笑い、俺の腕をさらに引っ張った。


「それより早く行こう!とうもろこしとじゃがバターが待ってるよ!」


まいはすでに店内が気になって仕方がない様子だった。そのはしゃぐ姿に、俺もつられて笑ってしまう。こうして俺たちは、美味しい北海道の味覚を求めて、道の駅の店内へと向かった。




しかし、この時の俺たちはまだ知らなかった。

遠く離れた場所から、じっとこちらを見つめる視線があることに――。

無邪気に笑い合う俺たちの姿を、誰かが静かに追っていることに、まだ気づいていなかった。

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