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191 「函館到着!まいのテンション爆上がり」


「着いたぁ〜!!」


まいが嬉しそうに声を上げ、キラキラした目で俺を見上げる。


「思ったより、あっという間だったねぇ!」


「そうだなぁ。2時間もかからなかったし、飛行機ってやっぱり早いよな。」


「うんうん!なんかワクワクしてきたぁ〜!!」


まいはそう言うと、勢いよく俺の腕にしがみついてきた。

下から俺の顔を覗き込むようにして、じっと反応をうかがっている。


まいが俺の腕に絡みつくのはもうすっかりお馴染みになってしまった。

最初の頃はドキドキしたけど、今ではこのポジションが妙にしっくりくる。

心地いいというか、落ち着くというか……。


「俺たちこのポジションもう普通で自然だなぁ〜」


そんな事をさり気なく言うと、まいがニヤリと意地悪そうな顔をして言った。


「ねぇねぇ、謙。オッパイ当たってるの、嬉しいんでしょ〜?」


「まい、ちょっ、声デカいって!周りに聞こえるからやめろって!」


「え〜?平気だもぉ〜ん!」


まいは全く気にする様子もなく、無邪気に笑う。

一方の俺は、顔が熱くなるのを感じて思わずそっぽを向いた。


……まいのテンションが爆上がりなのはいいけど、俺の心臓がもたない気がする。


俺たちはそんなやりとりをしながら、空港内を歩き、ここからの移動手段を確認する。

次の目的地は函館市内。移動はバスを利用する予定だ。


荷物を受け取ると、俺たちはバスのチケットを購入し、バス停へと向かった。


外に出ると、春とはいえ北海道の空気はやはり少し冷たい。

東京よりもひんやりと澄んだ空気が肌に触れて、旅行に来たんだという実感が湧いてくる。


「うわぁ〜、やっぱり北海道って空気が違うね!」


まいは深呼吸をしながら、目を輝かせている。

俺もつられて軽く息を吸い込んでみると、たしかに冷たくて心地いい。


空港の前の景色は思ったより殺風景だったが、それがかえって新鮮に感じられた。

しばらくすると、予定のバスが到着。俺たちは並んで乗り込んだ。


ゴールデンウィークを少しずらしたとはいえ、やはり北海道は人気の観光地。

バスは次々と乗客で埋まり、すぐに満席になった。


俺はまいの隣に座りながら、改めて予定を確認する。


「まい?、函館に着いたらまずどこ行くんだっけ?」


「市場!まずは北海道の醍醐味、海鮮からでしょ!」


まいは即答し、楽しそうにスマホを操作し始めた。


「うわっ、どれも美味しそう……!ウニ丼も食べたいし、いくらもいいし、カニも……え〜!どうしよう!」


どうやら、すでにテンションは最高潮のようだ。

俺もガイドブックを広げ、どこの店がいいか調べることにする。


しばらくの間、2人とも無言で画面に集中していた。


……と、思っていたら、突然まいが俺の肩に頭をもたれかけてきた。


「……?」


驚いて顔を覗き込むと、まいは目を閉じてニヤリと微笑む。


「ふふっ、謙の肩、ちょうどいい高さだね。」


「おいおい、もう疲れたのか?」


「違うよ〜。なんか、こうしてると旅行に来たんだって実感が湧いてくるんだもん。」


まいは目を輝かせながら、甘えるように俺に寄り添う。

北海道の旅はまだ始まったばかりなのに、この調子だと食べる前にまいのテンションでお腹いっぱいになりそうだ。


バスは順調に進み、いよいよ函館の街が近づいてくる。

市場で何を食べるか、俺たちの楽しみはますます膨らんでいった。



バスが函館駅に到着し、俺たちは荷物を持って降り立った。


駅前の景色を見渡すと、すぐ右手に市場が見える。

目的地があんなに近くにあると、なんだかワクワクしてくる…


「まい、とりあえず駅のコインロッカーに荷物預けよう。身軽になってから市場に行くか。」


「うんうん、たまには謙、いいこと言うね!正解!」


まいはニコニコしながら頷く。


「何それ?それじゃ、俺って普段は変なことばっかり言ってるみたいじゃないか。」


冗談めかして言うと、まいは軽〜く肩をすくめて、悪戯っぽい笑顔を向けてきた。


「うん、そうだよ?」


あっさり言い切られた俺は、思わず苦笑いする。


「最近、まい、だんだん言うこと厳しくないか?」


そう尋ねた瞬間——まいは突然、俺の言葉なんて耳に入らないかのように、何かを見つけたらしく、駅のフロアの奥へと走り出した。


「えっ?ちょ、何?」


驚きながらも、まいを目で追う。

彼女は駅のフロアの先で、何かを指差しながら俺を手招きしていた。


「謙!早く来て!やばいの見つけた!早く早くぅ〜!!」


まいは目をキラキラさせて、まるで子供みたいに興奮している。

なんだなんだ?市場より優先するほどの“やばいもの”って何なんだ?


俺は半信半疑で少し早歩きでまいの元へ向かった。

近づくにつれ、まいが指差すものがはっきりと見えてきた。


——それは「名探偵コナン」のスタンプラリーの案内だった。


「謙!これ見て!コナンだよぉ〜!!」


まいは興奮した様子でポスターを指差しながら、子供のように満面の笑みを浮かべている。


「これ、やるっきゃないよねぇ〜!」


「マジか……ここでもアニメが絡んでくるのかぁ。」


俺は思わず苦笑するが、まいのテンションは最高潮。

カウンターに駆け寄ると、スタンプラリーの台紙を2枚手に取り、得意げな顔で俺に差し出した。


「ほらっ、謙の分も!」


「え、俺もやるの?」


「当たり前じゃ〜ん!せっかく北海道まで来たんだから、こういうのも楽しもうよ!」


まいの無邪気な笑顔を見て、断る理由が見つからない。

まったく……この旅行は、想像以上にハードになりそうな予感がした…




コインロッカーに荷物を預け、身軽になった俺たちは市場の方へと歩き出した。


函館駅前の市場は、思っていたよりもずっと活気がある。

道の両側には露店がズラリと並び、威勢のいい声が飛び交っていた。


「兄ちゃん!カニ見ていかないかい?」

「ウニもあるよ!今日のは特に甘いよ〜!」

「ホタテ焼いてくよ!味見していきな!」


店先には大きなタラバガニ、ウニ、イカが並び、中にはまだ生きているものもいて、その新鮮さが一目で分かる。

炭火で焼かれたホタテやイカの香ばしい匂いが辺りに広がり、胃が刺激される。


「うわぁ……すごいな。」


俺は値札をチラリと見ながら、東京のスーパーとは桁違いの値段に驚く。


「多分、東京と全然値段違うんだろうなぁ……」


「うん!カニとかめっちゃ安いよ!この値段じゃ東京じゃ買えないよぉ〜!」


まいも目を輝かせながら、店先の商品を興味深そうに眺めている。

だけど——


「でもね、まずは海鮮丼!」


まいはピシッと指を立てて、きっぱり宣言した。


「ここの市場、後でゆっくり見ればいいから!とりあえず早くお店決めよ!」


まいはカニやウニに未練を残しつつも、目指すべきはやっぱり新鮮な海鮮丼らしい。

食べることへの執念が違う。


そう言うのが早いか、まいは一人でスタスタと市場の奥へ進んでいく。


「おいおい、ちょっと待てって!」


俺は慌てて後を追いながら、ふと思った。


今日は運転もないし、昼からビールいっちゃってもいいんじゃないか?


そんなことを考えていたら、さらにテンションが上がってきた。

よし、まずは最高の海鮮丼と、キンキンに冷えたビールを楽しもう。


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