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189 「捜査の新たな視点」


橘たちは、これまで集めた資料を事細かに整理しながら、慎重に捜査の方針を模索していた。

しかし、捜査そのものは大きな進展を見せていない。


そんな中、橘はこれまでの捜査方法を見直し、新たな視点からアプローチすることを決めた。


それは、事件の「加害者側」から攻めるというものだった。


橘は手を止め、向かいのデスクに座る篤志に声をかける。


「篤志、ちょっといいか?」


「はい、なんでしょう?」


篤志は軽く身を乗り出し、橘の言葉を待った。


「今までは、上の連中を直接追おうとしていたが、これからは加害者の方から攻めることにする。」


「はぁ……? どうしてですか?」

篤志は驚いた様子で眉をひそめる。

「今、だんだんと核心が見えてきてるのに……」


橘は腕を組み、低い声で説明を続ける。


「問題は、病院の管理システムだ。

あのシステムが壁になって、俺たちの捜査ではどうにもならない。

だから、別の方法で突破口を探るしかない。」


「……別の方法?」


「そうだ。加害者が『誰に』頼まれて動いていたのかを突き止める。」


篤志は少し考え込んだが、すぐに気づいたように顔を上げる。

「……もしかして、井上が殺されたのも、この件に関係があるからですよね?」


「間違いない。」

橘は力強くうなずく。


「だから、他の加害者たちにも揺さぶりをかける。


加害者がもし篤志なら俺たちに『お前たちも危険だ。井上の様になる。』と伝えられたらどう思う?」


篤志は少し息を呑んだ。


「……そりゃ、怖いですよ。毎日、緊張しっぱなしになると思います。」


「だろ?」

橘は静かに続ける。


「恐怖心を植えつけた上で、『俺たちが守ってやる』と持ちかければ、何かしら挙動がおかしくなったりして、そこをつけば情報を引き出せるとはおもわないか?。」 


篤志は真剣な表情でうなずいた。


「なるほど……加害者が誰に頼まれていたのかを突き止めて、それを積み重ねていけば、最終的に上まで辿り着ける……そういうことですね?」


「そうだ。」


橘はゆっくりと椅子にもたれ、篤志をじっと見つめる。


「どう思う?」


篤志は一瞬、迷うように視線を落としたが、すぐに顔を上げた。

その目には、決意の色が宿っていた


橘と篤志が捜査方針について話している最中、橘のスマホが小さく振動した。

画面を見ると、謙からのLINEだった。


「ちょっと待ってくれ」


謙?


「お疲れ様。

純一、今日からまいと2人で北海道旅行に行ってきます。3泊4日で。

まいに心配かけたから、今回は思いっきり楽しんでもらおうと思ってね。

だから、しばらく留守にするけど、何かあったらLINE下さい。

帰ったら飲み会やろう。

あと、お土産は何がいいか考えといて!


では、行ってきます。」



橘はLINEを読みながら、思わず苦笑した。

こっちはこんなにバタバタしてるのに……


「……あいつら、でも本当に仲がいいなぁ。」


北海道旅行か。

しかも3泊4日。

まいちゃんを楽しませるために計画したというのも、いかにも謙らしい。


橘はスマホを手の中で転がしながら、ふと窓の外を眺めた。


「旅行かぁ…… いいなぁ。香とそういえば、全然出かけてないなぁ」


短くつぶやいたその言葉には、少し羨ましさが滲んでいた。


このヤマが片付いたら俺たちも

行ってみるかなぁ……



『消えた記憶と愛する人の嘘』を読んでくださっている皆さまへ


いつも読んでいただき、本当にありがとうございます!


さてさて、物語はいよいよ北海道編に突入しました!

ちょっぴり切なくて、でもどこかあたたかい――そんな展開を目指して、

二人の物語をゆっくり丁寧に描いていけたらと思っています。


そして今回は、ストーリーの合間に北海道ならではの観光スポットも少しだけ登場します。

読んでくださる皆さんにも、旅気分をほんのり感じてもらえたら嬉しいです。


これからの展開も、ぜひお楽しみに!

引き続き応援よろしくお願いします!

           茅ヶ崎渚

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