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166 【迫り来る影、隠された不安】



橘はまいから話を聞き終え、静かに立ち上がった。


彼女の痛みを知り、橘は強く心に誓った。


(俺が、この真相を必ず突き止める)


「まいちゃん、ありがとう。辛かっただろうに……よく話してくれたね」

橘は優しく微笑んだ。

まいは

小さく頷き、少しだけ顔をほころばせた。


「謙が外で待ってるよ」


「はい」


まいは席を立ち、橘と共に扉の方へ向かった。

しかし、ドアノブに手を掛けたその時——。


「橘さん、あともう一つ……」


まいの声が震えた。

橘は振り返り、まいの表情を見た。

そこには、明らかにためらいと不安が滲んでいた。


「どうしたの?」


「……実は、この前の5日の日、謙と二人でドライブに行った帰り道、高速を降りて、あともう少しで家に着くところで……反対車線からダンプカーが、私たちに突っ込んで来たんです」


橘の目が鋭く光った。


緊張感が走る。


「ダンプカーが……?」


「はい……本当に、間一髪で……。謙がとっさにハンドルを切って避けてくれたので、何とか事故にはなりませんでした。

でも、そのダンプカー……何事もなかったかのように、そのまま走り去って行ったんです」


まいの声は震え、手が小刻みに揺れていた。


橘は眉を寄せ、鋭い表情を浮かべた。

(偶然か? それとも……)


「わかった。それも調べてみる」


まいは少しだけ安心したように見えたが、不安は拭えない様子だった。

橘はまいの肩に手を置き、真剣な眼差しで言った。


「まいちゃん、しばらくは一人行動を控えて。

もしその事故未遂が故意だとしたら、まだ第二、第三の攻撃を仕掛けてくる可能性がある。

念のため、俺のLINEも繋げておこう。何かあった時、すぐに連絡が取れるように」


まいは一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに頷いて携帯を取り出した。

「はい、よろしくお願いします」


二人は携帯を操作し、LINEを繋げた。

その間も、橘の頭の中では様々な可能性が駆け巡っていた。


(事故未遂……もしや、これも一連の事件に関係しているのか……?)


LINEを繋げ終わった後、橘はふと気になって尋ねた。

「まいちゃん、さっきのことは謙には言わないからね。俺の胸にしまっておく」


まいは安心した様に微笑んだ


「でも、なぜ謙には内緒なの?」


橘はまいの目を見つめ、答えを待った。

まいは少しためらった後、視線を落とし、小さな声で呟いた。


「……多分、謙も、記憶を無くす前に調べてたんだと思うんです。

でも、私にはよくわからないんですけど……

だから、心配で……」


橘の胸に不安が広がった。

(謙が……? 一体、事件の何を調べていたんだ?謙は何かを知っている。だから……)


だが、まいの表情を見て、それ以上追及するのは止めた。

「わかったよ。これからは警察の仕事だから、まいちゃんはくれぐれも無茶はしちゃいけないよ。

あと、何か思い出したらLINEでもいいから教えて」


まいは頷き、橘に向かって深く頭を下げた。

「橘さん、本当にありがとうございました」


橘は照れくさそうに頭をかいた。

「そんなことないよ。むしろ、貴重な情報をありがとう」


二人は微笑み合い、外にいる謙の待つ駐車場へ向かった。


———


外に出ると、寒風が頬を撫でた。

まいと橘が正面玄関から姿を現すと、謙が駐車場の方から走ってきた。


「まい、大丈夫だったか!?」

謙の表情には、不安と心配が滲んでいた。


「謙、大丈夫だよ。ごめんね、心配かけて……」

まいは微笑んだが、その顔には少し疲れが見えた。


「橘さんが途中から来てくれて、本当に安心したんだよ。

橘さん、すごい刑事さんだった!」


橘は照れくさそうに鼻の頭を掻いた。

「いやいや、たいしたことしてないから」


謙はホッとした表情を浮かべ、橘に向かって頭を下げた。

「純一本当にありがとう」


「うん、お前とまいちゃんを守るのが俺の仕事だからね」

橘は笑顔を見せた。

だが、その裏には、まいから聞いた新たな情報が頭を離れなかった。


(事故未遂……これは、単なる偶然じゃない。

確実に、誰かが動いている……)


橘は謙にも「しばらくは一人行動を控えるように」と軽く忠告をし、二人に別れを告げた。


「じゃあ、俺はここで。また何かあったらすぐ連絡して」


「はい! 橘さん、本当にありがとうございました」


「おぉ、謙、まいちゃん俺またこれから、行かなきゃ行けないとこあるからこれでね」


まいは笑顔で手を振った。

橘は頷き、車に乗り込んだ。


車のエンジン音が響き、橘はバックミラーに映る二人の姿を確認した。

謙はまいに優しく寄り添い、安心させるように微笑んでいた。


(謙、お前は一体、何を調べていたんだ……?)


橘の目が鋭く光った。

(俺が、全てを暴いてやる。あの2人の為にも絶対に——)


橘の車は、篤志と合流するために走り出した.

まいと謙の姿は、次第に遠く、小さくなっていった。


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