148 「笑顔あふれるお地蔵さん参り」
「謙、ここだよ。」
まいに手を引かれて到着した場所は、地蔵通りのイメージで思ったよりも鳥居も大きく本堂も立派。それが第一印象。そして、境内には参拝客があふれかえっていて、活気に満ちている。
「こんなに人がいるんだな…。」謙は驚きを隠せなかった。
まいは目を輝かせながら微笑んだ。
「謙、お参りしよぉ〜!」
「そうだな」
二人は本堂に向かい、静かに手を合わせた。
まいは真剣な表情で目を閉じ、何かを心の中で祈っている。
その横顔を見つめながら、謙も静かに祈りを捧げた。
お参りを終えると、まいが満面の笑みで振り向いた。
「謙、何お願いしたのぉ?」
「わかってるくせに。」
「わかってないよぉ〜。教えて?」
まいは上目遣いで甘えるように聞いてくる。
その瞳の輝きに、謙は思わず照れてしまった。
「教えなぁ〜ぃ!だって、教えたら叶わないかもしれないからなぁ〜。」
「謙のケチ!」
まいはぷくっと頬を膨らませ、わざとらしく拗ねた顔を見せた。
でも、その表情の奥には、いたずらっぽい笑みが浮かんでいる。
謙は思わず笑ってしまい、まいの頭をポンと軽く叩いた。
「まぁまぁ、かわいいまいちゃん。次、行こうぜ。」
「仕方ないなぁ〜。」
まいは謙に背中を押され、嬉しそうに次の場所へ向かった。
次は「お地蔵さんを洗う」場所だった。
ここでは、自分が病んでいる部分と同じ場所を、お地蔵さんの体で拭くと良くなると言われている。
長蛇の列ができていたが、まいは待つことすら楽しんでいる様子だった。
「謙はやっぱり頭?」
まいが笑いを堪えながら、わざとらしく聞いてきた。
謙は眉をひそめて、からかうように返した。
「それ、何か意味が違うだろ?」
まいはニヤリと笑って肩をすくめた。
「全然、深い意味ないよぉ〜。」
そう言いながらも、目はいたずらっぽく輝いている。
順番が回ってきて、まいにやり方を教わりながら、謙はお地蔵さんの頭を優しく撫でた。
その様子を見たまいが、また茶化してくる。
「もっとしっかり頭を撫でないと、頭良くならないからね〜。謙、頭!頭しっかり!」
俺は恥ずかしくなり、顔が赤くなった。
「まい、頭ってあんまり強調するなよ。他の人に誤解されるだろ…。」
まいは無邪気に笑いながら、さらに追い打ちをかける。
「だって、謙は頭が悪いんだから、頭良く直したほうがいいじゃん!」
その言葉に、後ろで待っている人たちも思わずクスクスと笑い出した。
まいはその反応に気を良くしたのか、どんどん調子に乗っていく。
俺は頭をかきながら、顔がますます熱くなるのを感じた。
「もう、まい!少し黙って集中な」
でも、その楽しそうな笑顔を見ていると、不思議と腹は立たない。
むしろ、愛おしさが込み上げてくる。
ふと、俺は思った。
こんなに無邪気に笑うまいを、俺は本当に好きなんだなぁ…。
大人びた色気で俺を惑わせる時もあれば、こうして子供みたいにはしゃぐ一面もある。
その全てが、愛しくてたまらなかった。
「ほら、謙、次はあっちだよ!ぐずぐずしな〜い!」
まいが楽しそうに手を引く。
謙はその手の温もりを感じながら、微笑んだ。
「はいはい、わかりました!かわいいまいちゃんに、ついていきますよ。」
二人は笑いながら、お地蔵さんの前を後にした。
春の日差しが降り注ぎ、まいの笑顔が眩しく輝いていた。




