140 「くしゃみと同時にバチン!」
ベッドルームから突然、「けーん!」という叫び声が響いた。
驚いて駆けつけると、まいがベッドの上であぐらをかいて、楽しそうに笑っていた。
「どうした?」
「だって、謙が隣にいなかったから…」
まいは目を細めて笑いをこらえきれない様子。
俺は呆れながらも、つられて笑ってしまった。
「大丈夫だよ。目が覚めたから、ちょっと1人でコーヒー飲んでただけだって」
そう言うと、まいは無邪気に両手を差し出してきた。
「抱き起こして、ってか?」
俺は微笑みながら、
「まったく、仕方ないなぁ〜。お子ちゃまなんだから」
と軽く皮肉を言いつつ、まいの脇に手を回して抱き上げようとした。
その瞬間、まいの表情が急に変わった。
「ハックション!」
予期せぬ大きなくしゃみと同時に、バチンッ!と鋭い痛みが肩に走った。
「痛ってぇ!」
思わず顔をしかめる俺に、まいはケラケラと笑いながら、
「ごめん、ごめん!」と手を合わせて謝った。
「いや、ちょっと待て!なんでくしゃみと同時に叩くんだよ!」
俺が肩をさすりながら尋ねると、まいは笑いをこらえつつ、
「くしゃみした瞬間に、つい何か叩いたら気持ちいいかなって思っちゃった」
俺はあきれ果ててため息をついたが、次の瞬間には吹き出して笑っていた。
本当に、こいつには敵わない。




