137 【歯車】
まいと寄り添いながらアニメを見ていた。
画面にはいつもの面白い展開が映し出され、まいは楽しそうに笑っている。だが、俺はどうしても集中できなかった。
頭の中に、あの出来事がこびりついて離れない。
昨日の夜も楽しかった。今日も朝からまいと一緒に過ごし、充実した1日だった。
だけど、頭の片隅にこびりついているのは、昨日のあの事故未遂。
偶然だったのか、それとも故意だったのか……。
今までの人生で、死にそうになったことなんてほとんどなかったのに、たった1ヶ月の間に2度も危険な目に遭うなんて。
まいと話している間は気が紛れているけど、こうして静かにしていると、不安がふと頭をもたげてくる。
考えすぎだと思いたいが、どうしても拭い去れない。
「謙、どうしたの?」
まいの声にハッとして、隣を見ると、心配そうな顔をしていた。
「なんか元気ないよ。具合でも悪いの?」
しまった、表情に出てしまっていたらしい。慌てて笑顔を作り、
「なんでもないよ、大丈夫。心配しすぎると、またくすぐっちゃうぞ〜」
冗談めかして言うと、まいはほっとしたように笑った後、
「やだぁ、もう!」と言って俺の肩を軽く叩いた。
……が、それが結構痛い。
本気で痛がるのをこらえながら、俺は無邪気に笑うまいを見つめた。
彼女の笑顔に救われているのは、きっと俺の方なんだろう。
それから数日後に起こる事件——。
町外れの川沿いで、1人の遺体が発見された。
その報せは、静かだった日常を一変させ、事件の展開が思いもよらない方向へと動き出す予感を漂わせる。
遺体が見つかり、そして被害者の身元が明らかになるにつれ、この事件が単なる偶然ではないことが次第に浮かび上がってくる。
謙の身にも、知らず知らずのうちに危機が迫っていた。
しかし、まだ誰も気づいていなかった。
謙も、舞子も、そして捜査にあたる橘や栗原さえも——。
この事件が、謙と舞子に深く関わっていくことに。
そして、逃れられない運命の渦に巻き込まれようとしていることに。
すべてが繋がり始める時、彼らはその真実を受け止められるのか——。
だが、まだ、現時点ではまだ何も……。




