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129 「優しい朝の目覚め」


——眩しい。


カーテンの隙間から差し込む朝の光が、瞼の裏をじんわりと照らす。

ぼんやりとした意識の中、ゆっくりと目を開けた。


——なんだか、左腕が重い……?


視線を向けると、俺の腕の中にはまいが静かに眠っていた。

穏やかで、どこか無防備な寝顔。

すぅ、すぅと心地よさそうな寝息が、小さく聞こえる。


——あぁ、可愛い……


と、一瞬思った次の瞬間——俺は目を見開いた。


——えっ!? まい、裸……?


混乱した頭で昨夜のことを思い出そうとする。

だが、何も浮かばない。

完全に記憶がない。


この状況で考えられることはひとつしかないはずなのに……


「……嘘だろ?」


自分の声すら掠れて聞こえる。

心臓がドクン、と大きく跳ねた。


気がつけば完全に目が覚めてしまっていた。

しかし、俺の腕の中でまいは変わらず、すやすやと眠っている。


——どうする?


このまま腕枕を続けるべきか、それともそっと抜いてソファへ移動するか?

それとも、目を覚ましたまいに「おはよう」と微笑むべきか?


……いや、それより何より、


——俺たち、昨夜本当に何かあったのか!?


記憶がないとはいえ、このままでは気になって仕方がない。

とはいえ、まいを起こすのは可哀想だ。


ふと、時計を見る。

朝の7時ちょうど。

この時間は、病院で入院していた時なら朝の健診をしていた頃だ。

無意識に昔の生活リズムを思い出し、少しだけ冷静になれた気がした。


——だが、横には裸のまいが寝ている。


その事実だけは、いくら冷静になろうとしても頭から離れない。


俺は、そっと足を動かし、ベッドの端にかかっていた毛布を器用に持ち上げ、まいの体に優しくかけた。

これで少しは落ち着ける……はずだった。


しかし、毛布に包まれたまいが小さく寝返りを打つと、俺の胸に顔を埋めるようにすり寄ってきた。


「ん……」


甘い寝息が肌に触れる。


その瞬間、俺の思考はすべて止まった。


心臓の鼓動がやけに大きく感じられる。

鼓動のリズムが、まいに伝わってしまうんじゃないかと不安になるくらいに——。


——このまま腕を抜いて逃げるなんて、できるはずがない。


俺は小さく息を吐いた。

そして、空いている右手をゆっくりとまいの背中に回し、そっと抱き寄せた。


「……まい……」


ただ静かに、その温もりを確かめるように抱きしめる。

この腕の中にいる彼女が、愛しくてたまらなくなった。


「まい、もう少しだけ、おやすみ」


まいの髪にそっと口づけをし、優しく囁いた。


このまま、もう少しだけ………

2人だけの静かな朝を過ごそう。


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