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124 「夜の潮風とふたりの未来」


夜の潮風はひんやりと肌を撫で、静かに波が打ち寄せる音だけが響いていた。

俺はそっとジャケットを脱ぎ、まいの肩に優しくかけた。


「ありがとう」


まいは小さく微笑みながら、目の前の海を見つめていた。

遠くに光る街並みが、水面にゆらゆらと映っている。


「謙……このまま時間が止まってくれればいいのにね」


「……そうだな」


ふたりでただ波の音を聞きながら、同じ景色を見つめる。

寒さが少し和らいだが、まいは肩を寄せてきた。


「今日はね、謙といろんな話をしたね」


「そうだな……」


「こんな日がずっと続いたらいいのになぁ」


まいの声には、どこか切なさが滲んでいた。

俺はそっと彼女の手を握り、静かに言葉を紡ぐ。


「大丈夫だよ。俺はまいから離れないから」


まいは俺の言葉に何かを感じ取ったのか、しばらく黙っていた。

それでも俺たちは、ただ隣にいるだけで心地よかった。


ふと、俺はまいに尋ねる。


「まいはどんな未来を描いてる?」


「未来?」


まいは少し考え込んで、夜空を見上げた。


「そうだなぁ……難しいな。あんまり深く考えたことはなかったかも。でもね……」


風に髪をなびかせながら、まいはゆっくりと微笑んだ。


「今言えることはね……大好きな人と同じ時間を、穏やかに過ごしていけたらいいなって……」


その言葉を聞いた瞬間、胸の奥が温かくなった。


俺はまいの瞳を見つめ、まっすぐに伝える。


「まいの描いた未来の中に、俺も一緒にいられるように——頑張るよ」


「……謙……」


まいの瞳が揺れ、微かに潤んだように見えた。

俺はそっと彼女の肩を引き寄せた…。




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