113 「待ちに待った海鮮丼!」
目の前に運ばれてきた海鮮丼を見た瞬間、まいの目がギラギラと輝いた。
「やばい、めっちゃ美味しそう!! これ、夢じゃないよね?」
「夢だったら、俺も一緒に見てるな」
俺は笑いながら、自分が頼んだおすすめのにぎりを見つめた。
これもなかなかの迫力だ。
「よし、2人揃って……」
「いただきます!!」
まいは勢いよく箸を持ち、まずは大好きなサーモンを一口。
「んっっ!! これもやばいよ!!」
「そんなにか?」
「うん、トロトロ!! 口の中で溶ける感じ!!」
嬉しそうに頬を膨らませるまいを見て、俺は思わず微笑んだ。
「じゃあ、まい。ホヤは食べないの?」
「……えぇ〜、それ絶対ヤバいやつでしょ?」
「そんなことないって! ちゃんと美味しいから」
「……んー、じゃあ食べてみる」
まいは恐る恐る箸を伸ばし、ホヤを口の中へ。
――次の瞬間。
「うぅ〜……」
まいの顔がくしゃっと歪んだ。
「……これ、無理!!」
「えぇ!? 美味しいのに?」
「いや、なんか癖強すぎる! 口の中が混乱してる!! なんだこれぇ〜!!」
まいは必死にお水を飲んでいる。
「これは謙が頼んだんだから、責任とってよね!」
「あのぉ〜、そんな言い方しなくても……」
「ダメ! これは謙だからね!」
「はいはい、わかりました……でもホヤ、本当は美味しいんだけどなぁ〜」
「私は海鮮丼の責任取りますので」
まいは満面の笑みで丼をかき込んでいる。
そんな様子を見て、俺はやっぱりこのドライブに来てよかったなと心から思った。
「……でもさぁ謙、ここのお店本当に美味しいね!」
「まいのチョイス大正解だった」
「うん! ここで本当によかった!!」
まいのその言葉に、俺は小さく頷いた。
――食後。
「ふぅ〜、食べた食べた……」
まいはお腹をさすりながら椅子にもたれかかる。
「本当にもうお腹パンパン、これやばいよ……帰り、車で寝ちゃったらごめんね?」
「それは大丈夫」
「ん〜……」
まいは何かを考えているような顔をしてから、ふと顔を上げた。
「ねぇ、なんか干物でも見ていかない?」
「いいな、それ。ちょっと買って帰ろうか」
店を出て、沼津港のお店の探索を始めた.
いろんな店があり、干物だけではなく、生や加工食品いろんな物があり迷っていた、
俺たちは干物コーナーをぶらぶら。
「これ美味しそう!」
「やっぱりこっちかな?」
「これとなら、やっぱり日本酒だよね」
「そうだな、日本酒で合わせてみたいなぁ」
そんなふうに時間を過ごして沼津港での買い物は楽しく終了した。
車に乗り込む。
「さて、次は?」
俺が尋ねると、まいはニヤリと笑ってこう言った。
「ここまで来たら、御殿場アウトレット行くしかないでしょ!!」
「……やっぱり?」
まいのテンションが一気に最高潮。
まさに本領発揮といった感じだ。
「まぁいいか。今日は楽しくいきましょう」
「謙、運転大丈夫?」
まいが少し心配そうに聞いてくる。
「……わからん」
「えっ、本当に!?」
まいが目を丸くするので、俺は笑いながら胸を張って
「冗談だよ、大丈夫。寝てな」
「もぉ〜、びっくりさせないでよぉ〜」
車を発進させると、まいはすぐにウトウトし始めた。
――東名までの約20分。
横を見ると、まいはすっかり眠っている。
その寝顔を見て、俺は思わず微笑んでしまった。
「……やっぱり寝顔も可愛いな」
そう思った瞬間、なんだか照れくさくなった。
運転には全く問題ない。
不思議だけど、やっぱり体は覚えているんだな――。
「さて、高速に乗ったら……ちょっと飛ばしてみるか?」
俺はひとり、そんなことを考えながらアクセルを踏んだ。




