111 「楽しいロングドライブ」
沼津インターを通過し、目的地はもうすぐそこ。
「まい、今までこんな長距離のドライブしたことあるの?」
「うん、今日が初めて!」
「本当かよ!」
「うん、嘘ついても仕方ないでしょ」
まいがあっけらかんと言うので、俺は思わず言葉を失った。
「……少し怖くなってきた」
「なんでぇ〜? 無事に着けそうじゃん!」
「いや、でもさ……」
「だから最初に言ったじゃ〜ん! 途中で運転変わってもらうかもって!」
確かに言っていた。確かに聞いた。
でもまさか、本当に初心者並みのロングドライブだったとは……。
「じゃあ何? 私の運転、落ち着かなかったの?」
「そんなこと言ってないし」
そう言いながらも、なぜか笑いが止まらなくなってしまった。
「何笑ってんのよ! 私、真面目に運転してきたのに損した!」
まいが少し拗ねたように言いながら、すぐに得意げな顔で続ける。
「帰りは謙だからね。わかった? 返事は?」
俺が笑いながら「はい」と答えると、まいは満足げに頷いた。
「帰りはまい、の〜んびりするもんねぇ〜!」
……今気づいた。
これ、最初から計画されてたやつだな。
――沼津港、到着。
駐車場に無事車を停めると、「お疲れさま」と声をかけた。
まいはハンドルから手を離し、ふぅっと息をついたあと、ニコッと笑った。
「やっぱりさ、こうやってお互いに言いたいこと言えるの、楽しいね」
その笑顔が妙に印象に残った。
「まい、写真撮ろうよ」
「うん!」
2人で並んで、楽しかったロングドライブの記念をスマホに収めた。2人いい感じで収めることが出来た。
まいは満足気だ。
まいはさて、何処にしようかと、スマホをいじりながら、「いろいろあるねぇ」と評判の店を検索しはじめた。
「やっぱりここでは海鮮しかないよね!」
「じゃあ、まいの食べたいところ行こう」
「えっ、いいの?」
「もちろん。まい、お酒飲んでいいからな」
その瞬間、まいの顔がニヤッとした。
「まい……なんでそんなにわかりやすいの?」
「なんででしょう〜? やっぱり謙のおかげかな?」
「よく言うよぉ〜」
冗談を言い合いながら、2人で笑い合う。
久しぶりに、何もかも忘れて、ただ楽しい時間が流れていった。




