107 「純一の推理と親友への想い」
スマホに通知が届き、純一はすぐに画面を開いた。謙からのLINEだった。
【おはよう、純一】
【ごめん、忘れてたよ】
【今、まいに確認とったら——】
メッセージを読み進めていくうちに、純一の表情が少し和らぐ。
【年度末で仕事が忙しくて、寝る時間もなかったみたい。なんかいつも「疲れた、疲れた」って言ってたってさ】
【携帯の写真も確認したけど、その時の写真はなかった。だから、どれくらい痩せてたのか俺も少し気になったんだけどな】
純一はその言葉を反芻しながら、僅かに眉を寄せる。確かに年度末は忙しい。特に謙の仕事なら、それはなおさらだろう。でも、「どれくらい痩せていたのか気になる」という言葉が妙に引っかかった。
【まいも、純一のこと「いい人」って言ってたよ】
【今度、彼女と4人で必ず飲み会しような】
この言葉には思わず苦笑する。謙らしい。こういう、何気ない気遣いをさらりと見せるのが、昔から変わらない。
【俺はまだ仕事休みで楽してるけど、純一もあまり無理しすぎるなよ】
【これからもよろしく!】
——この最後の一文が、純一の胸にじんわりと温かく広がった。
謙は昔から、言葉の端々に「気にかけているぞ」と伝えてくる。遠回しだけど、それが彼なりの優しさだということを純一はよく知っていた。
メッセージを閉じた後、純一はふっと息をつき、ほっとしたように微笑む。
——あの2人に限って、そんなことはありえない。
少し前まで抱いていた妙な勘ぐりが、自分でもバカバカしくなってくる。
(俺の推理は……さすがに飛躍しすぎか)
そう自嘲しながらも、純一の頭の中では、これまでの情報が整理されていく。まだ、バラバラのピースばかりだ。しかし——
必ず、見えてくるはずだ。
今はまだ未完成のパズル。でも、どんなに複雑でも、ピースは必ず収まる場所がある。そう信じて、純一はもう一度、思考を巡らせることにした。
——この事件の全貌を、親友のためにも、そして自分自身のためにも、必ず解き明かす。
静かに決意を固めながら、純一はスマホをポケットにしまい、ゆっくりと椅子に背を預けた。




