103 「フィアット500、目指せ御殿場!」
「さて、そろそろ行こうか」
そう言うと、まいは車のキーを手に取りながら俺を振り返った。
「行きは私が運転するね。でも、もしかしたら途中で謙に代わってもらうかも」
「大丈夫だよ」
俺は軽く笑いながら答えた。
「……本当に? 謙、大丈夫?」
まいは少し心配そうに眉をひそめる。
「信じなさい!」
「え?」
「信じる者は救われるって言うでしょ?」
「……なんか違う気がするけど」
まいは苦笑しながらも、どこか安心したような顔を見せた。
「で、どこに行くの?」
「御殿場!」
俺は少し得意げに答えた。
「ここからちょうどいいドライブコースでしょ?」
「うん、確かにそうだね。じゃあ、高速に乗るね」
まいはハンドルを握りながら、慎重に車を発進させる。
「気をつけろよ」
「謙に言われたくない!」
まいは少し膨れっ面になって、それでもすぐに笑顔に戻った。
「これでも運転には自信があるんだから!」
「わかった、わかった」
助手席のシートベルトを締めながら、俺は軽く肩をすくめる。
「じゃあ、行くよ!」
まいはウインカーを出し、ゆっくりとアクセルを踏み込む。
「フィアット500、出発〜! 目指せ御殿場!」
明るい声が車内に響き、エンジンの軽快な音とともに俺たちのドライブが始まった。




