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勇者パーティの犯行予告

 

「アリク様! 買い物しましょう!」

「——お肉食べたい」

「この服可愛くない?」


 ラナ達とダヌアを連れて街へ来た。

 理由は勇者様の企みを阻止する為だ。


 無人島から宝石を盗んだ本当の理由。

 ダヌアやネムに指示を出した意味。

 彼は一体、何をしようとしているのか。

 その真相を全て知るために来た。


 なのにラナ達はこの浮かれよう。

 中心街には何度も来ている。

 そろそろ落ち着いて欲しいものだ。


「新しいアクセが欲しかったのよねぇ」

「お客様にはお似合いかと」

「ならマケてくれるかしらぁ?」

「ハハ、ご冗談を」


 ダヌアも呑気にアクセサリー選びだ。

 しかも金の出所は不明。

 当然ながら俺は渡していない。


 プライド的に金を盗む奴ではない。

 島から宝石は盗んだけれども。


「買ーっちゃったぁ買っちゃったぁ」


 上機嫌でダヌアが戻って来る。

 言ってはダメだがかなりムカつく。

 互いに相性最悪を自覚しているだけある。

 というか本当に金はどこから出した。


「靴も買おうかしらぁ」

「——お肉……」


 女子達は別の店へと入っていく。

 リッカ、目的はダヌアの監視だぞ?

 忘れてないよなアイツ。

 ラナもいざとなったら戦力だからな。


 やれやれ、全然疲れが抜けない。

 店が見える位置のベンチへ腰掛ける。

 危機的状況って伝えたんだけどな。


「はぁ」


 溜息が漏れた。

 心労は増していくばかりだ。

 だがここは俺が頑張らなければ。

 何せ元とはいえ勇者パーティの一員。

 俺は全面的に当事者なのだ。


 当然被害面での阻止も理由である。

 だが俺には仕事への復帰もある。

 シーシャの仕事は手伝いだ。


 暗躍を止めなければいけない。そう——。


「ダヌアといい勇者様といい」

「……ンー?」

「どうして背後につくのが好きなんだ」


 俺の真後ろに座った勇者様の暗躍を。


「元気だったかよ、アリク」

「右手のギプスを見てから言え」


 最悪だ、座らなければ良かった。

 よくある背中合わせのベンチ。

 これが仇になった。


 顔を見ずとも気配でそれがわかる。

 ネムやダヌア以下の邪悪。

 知性もネム以下のそれ。

 強さも一般的で決して脅威ではない。


 だからこそ、底知れぬ謎を持つ存在。

 勇者ブライ・シン。


「聞きたい事を言い当ててやろうか」


 飄々と彼は語る。

 楽しそうじゃないか、言ってみろ。


「この街へ来た理由。企みの真相。だろ」

「一つ抜けている」

「ン?」

「パーティに新しく入った女の子だ」


 残念だったな、全部当てられなくて。

 俺が本来知る(よし)も無い情報だ。

 ベンチが一瞬ビクッと震える。

 まあ当然驚くよな。


 だが流石は勇者様。

 下手にマウントは取らせない。

 面の皮の厚さ、見習いたくもない。


 あと検問を抜けた方法も気になる。

 が、まあ今は抜きにしよう。


「アレはお前用の特殊兵器だ」

「あの女の子が? どういう事だ」

「言うわけねーだろ雑魚が」


 俺の代わりの召喚術師。

 それが俺用の特殊兵器とは。

 雑魚呼ばわりの癖に高評価じゃないか。


 しかしあの子に相手が務まるのか?

 油断するつもりは無いが。


 あんな子供を俺の当て馬にするとは。

 子供相手は戦い辛いとでも。

 ……その通りだ。

 あんな子供を簡単に攻撃できるか。


「戦闘ならお前の方が少し上だ」


 随分と冗談が上手くなったものだ。


 昔から話術は達者だった。

 そのせいで俺は騙されていたのだ。


「でも殺せねーワケじゃ無ェ」

「面白い事を言うな」

「だろ? もっと褒めろ」


 褒めていない。むしろ貶している。

 子供を当て馬にして心が痛まないのか。

 お前のやっている事は人道に反する。

 決して勇者が務まる器では無い。


 というより何故お前は勇者なんだ。

 お前みたいな奴が、何故。


「この街に来た理由はホノンの為だ」

「お前が他人の為に動いたのか」

「勇者が他人の為に何かしちゃダメか?」

「……普通はそれが当たり前だ」


 十中八九、嘘だろう。

 もし本当だとしても何か裏がある。

 タダで前業を行う人間では無い。

 見返りがなければ動かない。


 しかもそれが自身の仲間。

 つまり自分が見下している相手だ。


 ダヌア、イゴウ、ネムを失っている。

 その上でホノンまで使い捨てるか。

 お前にとって仲間とは何なんだ。


「あとは俺の目的か」


 お前の目的が何だとしても、誰1人として褒める者は現れないだろう。

 その理想は過程から血濡れて汚れた。


 それでも語るなら聞いてやろう。

 相変わらず饒舌な奴だ。


「『世界平和』の為とだけ言っとこう」

「……ふざけているのか?」


 感情の奥底。

 怒りが僅かに煮えたぎる。

 イゴウ戦のせいで沸点が下がったか。

 落ち着け、平常心を保て。


 コイツに感情を向けたら負けだ。

 それを見越したように勇者様は語る。


「数日後、大陸の中心から要人が来る。そこでホノンは伝説に名を残す」


 不敵に物騒に、勇者様はにやけ声を出す。

 シーシャも会談があるとは言っていた。

 その要人の集う会談が標的か。


 何をするのかはわからない。

 だが嫌でも予想がつく。


 ホノンは射手。

 死角から敵を攻撃し、援護する者。

 アサシンとしての一面を持つ。

 そこから導き出される答え。

 それはどれも物騒だ。


「次会う時、この街は大混乱だと思うぜ」


 そう言って勇者様は立ち上がった。

 本当ならば二度と会いたくない。

 だがお前らを止めるのも俺の役割だ。


 好き勝手にやらせはしない。

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