8-6 FX怖い
===============
“ステータスが更新されました
ステータス更新詳細
●実績達成ボーナススキル『成金(強制)』を取得しました”
“『成金(強制)』、両手から溢れ出る金にほくそ笑むスキル。
金銭感覚が麻痺するが、持ち資産で実現可能な欲望に対する耐性が百パーセントになる。
往々にして、人は現在資産以上の金を求めてしまうため、スキルを有効活用できる場面は少ない。
強制スキルであるため、解除不能”
“実績達成条件。マッカル金貨一万枚分の金を一日で稼ぐ”
===============
“ステータスが更新されました
ステータス更新詳細
●実績達成ボーナススキル『破産(強制)』を取得しました”
“『破産(強制)』、両手から消え去った金に泣くスキル。
資産がなくなった圧倒的な喪失感により精神崩壊する。既に精神異常状態であるため、魔法やスキルによる精神攻撃を拒否できる。
垂れた顔になるのはスキルの仕様ではない。
強制スキルであるため、解除不能”
“実績達成条件。マッカル金貨一万枚以上の全財産を一日で失う”
===============
“ステータスが更新されました
ステータス更新詳細
●実績達成ボーナススキル『一発逆転』を取得しました”
“『一発逆転』、どん底状態からでも、『運』さえ正常機能すれば立ち直れるスキル。
極限状態になればなるほど『運』が倍化していく。
このスキルを得る前提条件として、『破産』系スキルを取得しなければならないため、『運』のベースアップは行われない。
スキル取得によって『成金』『破産』は強制スキルではなくなり、自由にスキル能力を発動できるようになる”
“実績達成条件。『破産』スキルの達成条件を一日以内に帳消しにする”
===============
激動の三日だった。ギルクとの戦いよりも壮絶で、精神的な重圧は桁違いだったと言える。
紙屋優太郎から教えてもらった資金調達方法、FXに手を出してしまったのが火曜日か。
最初に、軽い気持ちで一万円を二万円に増やしてしまったのがすべての誤りだったのだ。金儲けとは、給料袋の重さを感じながら行われるべき行為であるべきなのに、あの日の俺は、電子世界で儲け金額の桁が爆増していく様を喜ぶ愚者でしかなかったのだ。
火曜日の夜は浮かれ過ぎていて、どう眠ったのか覚えていない。夜の街をうきうき気分で巡回し、帰り道のコンビニで金銭感覚なく高価なコペンダッツのアイスを購入してしまった事ぐらいしか記憶にない。
生涯年収をたった一日で稼げるレバレッジで、金を玩具にしていた俺に天罰が下ったのは水曜日の午前中。
『運』10は、確かに賭け事において絶対的な力を発揮してくれる。過信しなければという前提があればだが。
運は所詮運でしかない。十分の一の当たりくじを必ず引き当てる事はできても、残った九枚の外れくじを当たりに変換する運命の改竄機能は備わっていないのだ。
常勝のためには外れくじの残り枚数の見極め必要だというのに、俺は何を選択しても勝てるという妄想に取り付かれていたのだろう。外国為替のグラフの読み方が分からないまま、無謀な取引は続けられた。
そして、限界まで引き伸ばされた納豆の糸が切れるように大外れを引き当てる。坂を上がるのは難しくとも、死に体となって転げ落ちるのは楽なものである。
水曜日の夜はどう眠ったのか覚えていない。溶けた全財産と同じように蕩けた顔をしていたとは思うが。
木曜日に優太郎に泣きついて資金調達を行い、今度は堅実――一般的には十分常識外れなレバレッジでだが――に取引を行った。
人生最大を誇った火曜日夜の時点まで資金を回復させて、俺はネット口座をログアウトさせた。当分の間は凍結させておこう。来年の確定申告が大変だろうな。
『件名:彼女(候補)放置するなっ 本文:魔法使い全員非協力的。私達で戦うしかないけど、どうするべきだと思う?』
携帯電話に皐月からメールが届いていた。
皐月には残りの魔法少女達に対する交渉を依頼していたのだが、良い結果は得られなかったようである。
『件名:RE:彼女(候補)放置するなっ 本文:黒幕共が大人しいのであれば、無闇に動く必要はない。それらしい動きは察知できているか?』
『件名:RE2:彼女(略) 本文:分からない。ギルクって名前だっけ、アイツの動きも私には分からなかったし、敵にも隠蔽系魔法が使える奴がいるのかもしれない』
文字の打ち込みが面倒になってきたところで、携帯電話番号教えろという次のメールが届いた。
敵にも俺の存在は知られているだろうし、躍起になって隠す必要性はもうない。好いてくれている子に電話番号さえ知らせないのは誠意がなさ過ぎる。
その後は直接電話で、黒幕共への対策のため週末に直接顔を合わせる約束と、街の巡回という消極案を話し合う。
「俺の準備はまだ整っていない。黒幕が動いていないと良いんだが、ギルクのように単独行動を取る奴がいないとも限らない。俺も一応、夜は街を見回ってみる。『エンカウント率上昇』スキル持ちの俺なら、敵がいるなら高確率で出遭えるだろうしな」
「その妙なスキルの実在も含めて、御影とはもっとお互いに話し合い、親しくなる必要があると思うのだけど?」




