11.広がる景色は2
この決意は誰かを裏切ることになるかもしれない。
自分勝手にやってきたツケだ、それぐらいは受け入れる。
引き続き戦況について確認する。
「遭遇したのは元旅団の連中だ。ゼイロ君は強いな、さすがはパラディン。ただ他の面子は正直頼りない」
戦死したたっくん、ゼイロを除く面子はパンプキンナイトのドコちゃん。ホークマンの横山さん、ブリガンドのヤマか。悪いが色物を揃えたようにしか思えない。
「すぐに相沢、神崎、ラカンが合流した。これでどうにか形になった」
相沢は奇術師と言っていたが本職は別にあるだろう。
神崎はハイプリースト。ヒーラーがいるといないでは大きく違う。
ラカンは火力重視の魔導師だ。黒魔法師だったか。
「他の人達は?」
「遅れてサキ、ロナコンビが合流予定だ。時長さんとクリードは待機してる。エネとピナルもだな。長期戦に備えての判断だそうだ」
クリードはよく我慢出来たな。随分ラスボスに拘っていたようだが。新進気鋭のフェンサーで、近藤は幼く感じると言っていた。
ロナとサキは慎重だろう。ロナは支援系のディーバでありながらラストダンジョン経験者だ。サキはよく分からないが、恐らく支援系。状態異常を得意としている。
となると時長さんだが、パニッシャーについてはよく分からない。
クリード、時長の二人をロナとサキが支援しつつ戦うのだろうか。
「で、情報はどれぐらい拡散されてるの」
「佐々木がラスダンに入ったことを利用して、誰かが挑んで戦死したってことにしてある。戦闘を目撃されない限りしばらくはなんとかって感じだ」
なるほど、もう手は打っているのか。それでもばれたら近藤が動く。今見つからないことを祈るしかない。
「エネさんとピナルは?」
「ん、まあ待機だな。ピナルの仕事じゃない。エネは状況次第じゃないか」
後一日半、それまでに仕留めなければ横取りされる可能性が出てくる。そもそもそこまで持つだろうか。
「交替しながらなんとか打開策を見出すんだろう」
「近藤から見てどう? 映像貰えるかな?」
「ああ、後で送るよ。リアルタイムがいいか?」
出来れば、と応じて腕を組む。近藤がその場にいないのだから誰かの映像を見せてもらうことになる。エネさんが妥当だが、ピナルがいるので簡単に戦闘に参加しないだろう。
「で、お前はどうする。戻ったと伝えないのには理由があるんだろ」
さすがに目ざとい。
「今は知らせなくていい」
「美味しいとこ持ってくつもりか」
「んーそういうわけじゃないんだけど、ちょっと試したいことがあるんだ。冥府の戦闘で疲れてるし」
近藤は「ああ」とすぐザルギイン、クロスターについて思い当たったらしい。
「なるほどそっちか。確かに真っ当にやって勝てる保証なんてないからな」
「うん、まあね……」
好きで連れてきたわけではない。だが使えるものはなんでも使わねば。
「俺は俺の仕事をするよ。そっちそっちでまあ頑張ってくれ」
「分かってる」
通話はそこで切れ、私はリビングに向かった。
三十分程空けただけだが、トカレスト内ではその六倍待たせたことになる。
「貴様、何をぼうっとしていたのだ。返事もせずやる気があるのか」
ザルギインに冷たい眼を向けられ、つい見返す。
「すまん」
素直に謝ると何故かむっとされた。らしくないと思われたのだろうか。
「で、どんな感じだった。僕が参加しても問題ないかな」
ハッキネンの問いかけに、私は曖昧な返事しか出来ない。
「ごめんなさい、まだ近藤としか話してなくて」
「そうなのか。戦況は?」
現状を伝えると、ハッキネンの目に力がこもっていくのが伝わってきた。
「戦力は多い方がいいようだね。足を引っ張ったりしない。身内もやられてる。話を通して欲しい」
言い分は最も、熱意も理解出来る。
だけど、
「今は動きません」
抑揚なく応じる。当然強い反応が返ってくる。
「何故? 時間が惜しくないのかい? それとも僕の実力に――」
「いえ全く」
「じゃあなんで!」
なんて答えればいいんだろう。
私は私の目的を果たす。だから今は動かない。答え方が分からず、私は憎悪の対象に顔を向ける。
「お前らに頼みがある」
「ん? なんだ、観るだけではないのか」
そんなわけないだろう。これから話すことにはリスクが伴う。考えを整理し、こいつらと真剣に向かい合わねばならない。
ここから先は、近藤にも伝えていないことだ。
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