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トカレストストーリー  作者: 文字塚
最終章:壊れいく世界の中で
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第十八話:港町にて2

 これは連絡会だ。別にトカレストの中でやる必要もないし、わざわざアレキサンドリアの小汚い雑居ビルの地下の喫茶店でやる必要もないのだけど、待ち合わせの場所を近藤に任せたらこうなってしまった。


「聞かれた、というのは?」


 凄く大切な話を始めようか、みたいな感じで近藤は格好付けているが、ピンクのソファの背もたれに腕を回し、体重をかける姿は滑稽だ。凄く指摘したいが、我慢して応じる。


「最初の問いかけは"これはクリアに値するのか"ってこと」

「当然の疑問だな」

「これがラビーナ・ガルバルディルートなら相当するはず、って答えておいたよ」


 前にも説明したことを繰り返した。が、実際のところは正直分からない。私も自信があるわけではない。近藤に至ってはクリアの存在自体、疑問に思っている。小さな差異はあるとしても、同じような考えを持つプレーヤーは他にもいるだろう。


「彼らは納得したのか?」

「微妙かな。でもソロはありえない、が私の結論で、そのソロクリアの情報収集の意味もあるから、って言ったらまあまあ納得してくれてたよ」


 近藤は小さく頷いているが、その辺は余り興味がないらしい。しかしクリアを目指すメイン派に、今回の取り組みは意外に響く、と私は見ている。前提が強制ソロの場合、支援系プレーヤーは絶対と言っていい程クリアの可能性がないからだ。事実参加者の内数名は、支援系として育成してきた現実がある。彼らにとっては渡りに船、ではないだろうか。しかし……、


「手の内を隠してるのが、どうも引っかかるんだよなあ」


 そう愚痴を零し、続ける。


「だってパーティー組んで集団戦やるんだよ、なんで手の内隠すかなあ。連携の問題もあるのに」

「信用されてないんだろう。恥ずかしいだけかもよ」

「真面目に考えて」


 怒気を込めると、近藤は肩を竦めた。


「私達は"ソロで苦戦するぐらいの強さ"を基準にレアボス狩りしてるんだ。なのに、あいつらメインジョブ隠して本気出さないでさ……」


 そう憤慨すると「あいつら呼ばわりはやめとけ」と苦笑され、少しの間の後近藤は口を開いた。


「トカレスト内での身バレを恐れてるのかもしれん」

「ああ……」

「結構目立つことしてるんだ。組んではいるが、運命共同体だとは思ってないんだろう。その通りだし、まあ大目に見てやれ」


 一時的に共同歩調を取っているだけ。なるほど、言われてみれば確かに。


 事は順調に進んでいる。ボスハント――ラビーナへの従属、或いは蘇生させてからの洗脳。私よりラビーナがフル回転なのだが、今のところ……トラブルは起きていない。そう報告すると、


「で、邪魔したり裏切りそうな奴はいるのか」


 と、余り身の入っていないトーンで尋ねられた。こいつ他人事だと思って、とムカついたがいつもの事なのでさて、と考える。

 今回集まったメンバーは四つのグループに分けられる。

 神崎、ラカン、ロナ、サキは六英雄絡みの隠れた有名人。

 ゼイロ、たっくん、ヤマ、ドコちゃん、横山さんの元旅団。

 クリード、時長の新進気鋭のやり込み勢プラス相沢。

 最後はエネさんに我々二人だ。


 これらを思い浮かべ考えた。確かに考えてはみたが、意味がないことに気付き途中でやめた。分からないのだ。近藤が訊いているのは明らかに怪しい奴はいるのか、ということでそんなの私には分からない。そして彼らには警告してある。万が一の場合、こいつを敵に回すぞ、と。


「今のところいないかな。ムカつくって意味で言えば相沢がムカつきます」


 結局私も余り身のない返事をすることになり、


「そんなことは聞いてない」


 と返されてしまった。

 続いては戦力の話になった。


「手の内隠しててもまあ使えるんだよな? もし人増やすってなったらトラブる確率は上がるが、どうだ」


 これもやっぱり分からない。いや、彼らが強いのは間違いないが、ラスボスの強さは幅があり過ぎる。とにかくトラブルは起きていないのだが……、


「ロナさん、じゃなくてロナはちょっと変わってる」


 気になる事、実際にあった出来事を話すとなればそれぐらいだ。


「それは人柄の話か?」

「ううん、それは有名だし見たままだから」

「うん……じゃあジョブがおかしいとかそっちか」

「あ、いやそうでもなくて、あの人今の流れを理解してない」


 近藤の頭の上に、はてなマークが浮かんでいる。


「あーうん、なんつーか、あの人ラビーナのこと知らないんだよ」

「ふーん、まあそういう人もいるだろう」

「いや、基本的に私がやらかしたこと知らないし、ラビーナがやらかしたことも知らない」

「へえ……そりゃ、時代の最後方だな」

「うん」


 お陰でなぜだか私が説明する羽目になった。

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