レークスさん
目を覚ますと、1時間くらいたっていた。
コーヒーが飲みたくなり1階へ下りると、早川さんと羽田さんが甘い香りでいっぱいのキッチンでお茶を飲んでいた。
「お邪魔します」
「ああ小野田さん。先ほどはお疲れ様でした」
「何か飲みます? 出しますよ」
「あ、じゃあコーヒーで」
「了解!」
テーブルの上にホットコーヒーが用意される。
辺りにいい香りが漂って、なんだか癒される気分だ。
「レークスさんは、結局1階じゃなくて2階の部屋になったんですか?」
「ええ。1階は2人部屋という事もあるんですが、あれはまだそこまで信頼されてないんじゃないかって気もしますねえ」
「そうなんですか?」
「仲間は自分以外全員1階に固めて、自分はこちらの中へ。敵対しないとこちらにアピールしつつ、様子を探れるように、という感じがしますね。そして何かあれば仲間だけでも逃せるように」
「そのときは自分が盾になってでも、ですかね」
「おそらくそうでしょうね」
早川さんは羽田さんの言葉に相槌を打つ。
わたしはゆっくりひと口目のコーヒーを飲んだ。熱と香りで体が少しずつ目を覚ます。
「すごい人ですね」
わたしが言うと、2人はうなずいた。
「ほんとそうですね」
「ええ。ああいう方が仲間になってくれると心強いんですが」
「はい」
「ですが得てしてそういう人物ほど、なかなか心を開いてくれないものです。特に、すでに心から大切にしている仲間がいる場合は」
早川さんの言葉に、わたしはマグカップの中の黒々としたコーヒーを黙って見つめる。
「レークスさんは今、2階に1人なんでしょうか」
だとしたら、それは淋しすぎる。
「いえ。崎田さんが、落ち着いたらリビングに来てくれないか誘うつもりだって言ってましたから、もしかしたらそちらにいるかもしれませんね」
「使えそうな武器を確認してもらうんだそうです」
「お2人はここで何を?」
羽田さんならリビングで武器祭りに参加していそうなものなのに。
「僕はおやつにケーキを準備してます」
「私は出来上がったらコーヒーとお茶を一緒に持って行く係です」
「コーヒーとお茶、ですか?」
「コーヒーは豆を挽いて、お茶は冷蔵庫でフルーツティーを冷やしているところです」
嬉しそうな満面の笑みで羽田さんが言う。
本当に料理がすきなんだなあ、と感心した。
「じゃあわたしもお手伝いします。出来上がりまでここにいますね」
「助かります」
もうひと口、コーヒーを飲みながら、わたしはレークスさんに心からの仲間になってほしいとそう思った。
結論として、レークスさんはすでにがっつりわたし達の仲間になっていた。
わたしと早川さん、羽田さんがリビングにおやつと飲み物を運んで行った時には。
「この刃紋の美しさ、違和感なく手に馴染む柄、やはり『日本刀』が1番だな」
「それは力任せに叩きつけたりする武器じゃなく、引いて切るものなんだ。使えない俺が言うのもなんだけどな」
「じゃあ刀は日本刀で決まりだな、念の為でかい武器も持っといたほうが良くないか?」
「そうすると重くなっちゃうから、あたしは銃の方がいいと思うなあ」
「わたしも銃に賛成です」
レークスさんは武器マニアだったらしい。
のどかさんが出して片付けてあった武器をひと目見て『落ちた』そうだ。
恋する少年のような、武器に夢中のレークスさんの姿を見て、なんとなくわたしは安心したような気が抜けたような……なんとも言えない気分になった。




