表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/29

人魚姫への招待状 2



 * * *



 青い鳥が、大空に溶け込むように羽ばたいている。それは、海の中で青い魚が、海に溶け込むように泳ぐ姿と似ている。


 その鳥は、近くまで飛んできて、私の肩で羽を休めた。


「ラック……」

『招待状だ』

「なんの招待状?」

『舞踏会への招待状』


 もし、人間に生まれていたなら、喜び勇んで行ったかもしれない。それとも、意地悪な姉の配役にでもなっていて、断固逃げようとしていただろうか。


「お断りは」

『できるさ。だって、レイラはこの国の民ではない。自由な人魚だ。だが、クラウスは違う』

「……クラウス様と私に届いた招待状なの?」

『そうだな……。行くのか? 僕は、おすすめしないけど』


 王命に逆らったクラウス様が、あんなに苦しんでいたのに、断るなんてできるはずもない。

 理由はわからないけれど、クラウス様は何かに縛られている。


「…………ラックは、ルクス殿下側ではないの? どうして相談に乗ってくれるの」

『僕は、健気な人魚姫の味方だ』

「…………うそっぽい」

『失礼な』


 つい、本音が口に出てしまった。

 でも、いつもルクス殿下の使いとして現れるラック。クラウス様と出会ったあの日、私の姿を見たのは、ラックと犬耳騎士様のストラト卿と、クラウス様だけだった。


 そして、ラックは、私にクラウス様を見つけた褒美をくれると言った。


『僕が、王家に逆らえないのは事実だ。クラウスと同じで。でも、レイラは、僕に名前をくれたから』

「……ラック?」

『その名前を呼べるのが、レイラだけなのだとしても、僕にとってはかけがえのない宝物だ』


 フワリとした羽毛の感触。

 私の肩に乗ったラックが、高い体温の体を私の頬にすり寄せる。


『だから』


 その瞬間、冷たい氷が、ラックを襲った。

 魔術が発動されたであろう場所にいるのは、クラウス様だった。


「ソレから離れて、レイラ」

「どうして? ラックは、何も悪いこと」


 その瞬間、クラウス様が、目を見開いた。

 

「名前…………」

「え? 名前がどうしたんですか」


 意味がわからず、呆然とする私の耳元で、バサバサという羽ばたき。そして、私の手の中に残された、繊細な意匠と、王家の紋章が描かれた招待状。


『僕の力が必要になったら、いつでも声をかけて』


 次の瞬間、青空に飛び立つという予想を覆して、魔法のようにラックは消えた。青い羽を一枚落として。

 

最後まで、お付き合いいただきありがとうございます。下の☆を押しての評価やブクマいただけるとうれしいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作「溺婚約破棄されて幽閉された毒王子に嫁ぐことになりました。」 今回は、重い話が書きたくなって始めたので、前半重いです。 主人公の聖女は、世間知らずでお人好し。 最終的にはハッピーエンドになる予定です。 ぜひ、↓のリンクから一読いただけると、うれしいです。 「溺婚約破棄されて幽閉された毒王子に嫁ぐことになりました。」
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ