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第九十二話「ヘリって長持ち」

「なんだありゃあ!?」


ドイチェは本日何回目かもわからない言葉を口にする。

見上げる空には玉子に尻尾を生やした様な、トンボの様な、なんかよく分からない物が耳障りな爆音とやけに壮大な音楽を鳴らしながら飛んでいる。

瓦礫を抱えるゴーレムも驚きのあまり固まって居る。


「あ、アル、エット? ドイ、チェ……早く、移動を! こ、ここは危ない!」


すると、ドイチェが覆い被さる形になっているサニーから声があがる。


「アルエット? と、とにかく、わかった!」


ドイチェは慌ててサニーを抱えて走り出した。


「お、おい!?」

「こっちのが早ぇ!」


「おーい! こっちだ!!」


二人は少し幅の広い裏通りを進む、すると一件の建物の影からポーキーが手を振っていた。

そこが目的地の空き地なのだろう。


「飛び込めぇ!」


サニーの叫びに、ドイチェは彼女を抱えたまま角に飛び込んだ。

すると上空から見ていたアルエットが筒のような物をゴーレムに向かって撃ち出した。

ぼけっと見ていたゴーレムは慌てて回避行動を取る。

しかし、手遅れだった。

飛行するヘリ、アルエットⅡから発射されたノールSS.11対戦車ミサイル二発が見事にゴーレムに直撃する。

600mmのスチール合金すら貫通出来る弾頭はいとも容易くゴーレムをただの破片の山に変えた。


「ゲホッ! う”ぇっほっ!! ゲホッ!」


ゴーレムを吹き飛ばした爆風は建物の影に隠れた小隊に大量の砂埃を掛けるに充分だった様だ。


「な、なんにゃ!? あのトンボの化け物!」

「確か、ヘリ……アルエットだったか」


モロッシアの言葉にポーキーが答える。


「でもヘリは乗り手が居ないんじゃ?」


ジョンが不思議そうにポーキーに話しかけた。

ヘリは通常の飛行機より風の影響を受ける為に乗りこなすのは難しい。

更に、お世辞にも性能がイイとは言い難い、旧式のミサイルを直撃させる程の人物が思い浮かばなかった。


「いるんだよ、一人だけ。特別訓練帰りのとんでもないのが。でも、何でアルエットⅡなんだ? シャイアンとペイブロウⅢも一機ずつあったろうに」


彼らは知らないが、ヘリを操縦するキルゴス中佐はミーシャに攻撃ヘリ『シャイアン』での出撃を希望していた。

しかし、ミーシャからの返答は『救出作戦に攻撃ヘリで行ってどうするつもりだ? ナナル王国を石器時代まで戻すつもりか!』とのお叱りの言葉だった。

ちなみに大型輸送ヘリ『ペイブロウⅢ』はキルゴス中佐の『なんかやだ!』の一言で却下された、『攻撃』では無く『輸送』なのが気に入らなかったらしい。

コレにキレたミーシャがアルエットを押し付けた訳だが。

そんな事で小隊員が手当てや周囲の安全確保をしているとゆっくりとヘリが空き地に着地する。

するとパイロットだろう魔族の男性がローター音に負けないよう声を張り上げて話しかけて来た。


「大丈夫か!? 迎えに来た! お客さんは四人までだ!!」

「感謝する! ジャンヌ嬢を早く!」


「あと二発でミサイルがカンバンだ! 後ろに九九式軽機関銃と弾を腐る程積んできた! 誰かガンナーになれ!」

「ガンナー連れて来て無いのかよ!?」

「不思議な事に乗りたがるヤツが居なかったんだ!」


「ポーキー伍長! ガンナーになれ!」

「隊長は!?」

「私は軽傷だ! 作戦に支障はない! お前の腕ならガンナーを任せられる! 行け!」

「了解! パイロットの旦那! 辺りにまだ敵が隠れてる! 気を付けてくれ!」

「わかった!! 見つけたら月まで吹き飛ばしてやるよ!」


「では私達は目標地点まで移動する!」

「わかった! 発煙筒だ! 使え! 次はペイブロウで来てやる! 重傷者が居れば船まで連れて帰るからな!」

「感謝する!」


そう言うとアルエットはジャンヌ、ナターシャ、ポーキーを乗せて飛び立つ。


「……ん? 見つけたぞ! ゴーレム使いだ! 護衛まで連れてやがる!」


それを発見したのはキルゴスだった。

一本隣の道を逃げて行く反乱兵達。


「帰りのついでだ! いらない方に行かないように鉛弾をプレゼントしてやれ!」

「了解! くれぐれも熱くなりすぎるなよ! 怪我人を積んでるんだ!」

「わかってる!」


アルエットは反乱兵を追い立てるように機銃を撃ち込みつつ背後から近づいた。


「ハハッ!! 良いぞ、ベイベー!! 逃げるヤツはナナコンだ! 逃げないヤツは良く訓練されたナナコンだ! ホント、戦場は地獄だぜ!! フゥハハハーハァー!」

「何だよ、ナナコンって」


キルゴスしか使っていないが、ナナコンとはナナル・コンサイン(ナナル解放戦線)の略である、けっして某番長の妹がどうとかではない。


「危ねえぇ!」

「うぉおっ!?」

「きゃあ!?」


すると、ヘリの横を火球が通り過ぎた。

地上の敵兵の反撃らしい。

それをすんでのところで回避する。


「落ち着け! 落ち着け! ただの下級魔法だ! 信号弾みたいなもんさ! ポーキー、大丈夫か?」

「あ、あぁ」

「見てろ! 目にもの見せてやる!」


アルエットは空中で旋回し、民家の屋根から魔法で狙っている敵兵に標的を移した。


「ラスト二本の大サービスだ!」


キルゴスは民家の屋根に向かってミサイルを叩き込んだ。

尾を引いて民家に突っ込んだミサイルはその破壊力を持ってその裏の民家ごと敵兵を吹き飛ばした。


「良い腕だな! 帰ったらビール奢るよ!」

「忘れんなよ!?」


こうして好きなだけ暴れ回ったキルゴスは帰投して行った。

サーフィンがしてぇ! とかいう良くわからない叫びを残して。

色々悩んだ結果、アルエットⅡになりました。

イロコイとかまだまだ現役だし。

ペイブロウⅢもウィキだと退役扱いだけどペイブロウは有名だし。

シャイアンに乗せたら、王都が更地になりそうだし。

ホント、戦争は地獄だぜ!

フゥハハハーハァー!!


ちなみに、終始「ワルキューレの騎行」はかかりっぱなしでした。

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